本庶佑・京大特別教授のノーベル生理・医学賞受賞とがん免疫療法・オプジーボについて

京都大特別教授の本庶佑(ほんじょたすく)氏(76)にノーベル生理・医学賞が授与されることが決まりました。授賞理由は「免疫抑制の阻害によるがん治療法の発見」で、がんの増殖を抑える免疫細胞の働きを阻害するタンパク質PD-1を発見して、新たながん免疫療法の開発・発展に貢献した。本庶氏の免疫・タンパク質の基礎科学研究は、従来のがんを外科手術で除去したり化学療法・放射線療法で叩いたりする以外の「自己免疫活用の治療法」の道を切り開いたという意味で画期的なものだと思う。

本庶氏の研究成果を活用して、小野薬品とアメリカの製薬大手ブリストル・マイヤーズスクイブががん免疫治療薬の「オプジーボ(一般名ニボルマブ)」を共同開発して、60ヶ国で承認されている。まだ現時点では、保険適用が十分ではなくジェネリックも開発されていないオプジーボの薬価・治療費が高いという患者にとっての金銭負担の問題がある。

また皮膚がんから肺がん・胃がんなどへと適用が拡大したオプジーボの治療効果にムラがあり、オプジーボをがん患者に投与しても効く人と効かない人が大きく分かれるという免疫治療薬自体の完成度・汎用性の問題もある。ただ自分自身の免疫を活性化させることでがん(悪性新生物)を叩いて縮小させたり消去したりするというがん免疫療法は、効果が発現すればもっとも望ましい安全な治療法の一つになってくる。

本庶佑特別教授と一緒にノーベル賞を受賞したテキサス大学のジェームズ・アリソン教授(70)も、がんを攻撃する免疫細胞の働きを阻害している「CTLA-4」というタンパク質を発見した功績が認められている。本来であれば、自己身体にとって有害ながんは免疫細胞によって叩いて自己治癒することが望ましいが、がんは「自己」と「異物(他者)」を識別する免疫の働きをすり抜けやすく、がんも自己の一部と見なされることで免疫応答反応による攻撃が無効化されてしまう。

本庶特別教授とアリソン教授のノーベル生理・医学賞受賞の研究成果は、がんを異物と見なして攻撃することができない免疫細胞の限界(特異的タンパク質への反応)を補正しようとする方向性があり、この研究が更に進歩発展すれば現在のがん治療法よりも効果が高くて安全ながん免疫療法の確立につながる可能性も出てくる。

がんは現代人の死因のトップに位置づけられる病気で新興国でもがん患者が増大を続けている。毎年、世界で数百万人以上の生命ががんで失われていて、がんの治療法の改善・進歩を望む声は非常に強いため、このがんに対する免疫療法・免疫治療薬に注力している製薬会社・研究機関は多い。2025年にはがん免疫療法の市場規模は約5兆円にまで拡大するという。慢性的に不足しているといわれる日本の基礎科学分野の研究予算の増額、本庶氏などに続く後進の精力的な研究者の育成(若手研究者が研究で食べていける環境整備)にも力を入れていく必要があるだろう。


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