ロバート・チャルディーニの『説得力の6原則』とプロスペクト理論・社会的証明の原則:2

行動経済学者のダニエル・カーネマンとエイモス・トベルスキーのプロスペクト理論では、人は不確実な状況下では『利益の獲得』よりも『損失の回避』を重視した意思決定をすることが明らかにされています。それは人は利益によって得られる喜びよりも、損失によって蒙る苦痛のほうが一般に大きいからです。100万円を得られる喜びの主観的な大きさに対して、100万円を失う苦痛の主観的な大きさのほうが大きいということです。

ロバート・チャルディーニの『説得力の6原則』と説得の心理学:1


プロスペクト理論によると、『利益を得られる場面ではリスク回避を優先して確実に利益を得ようとし、損失を蒙る場面ではリスクを取ってでも損失を回避しようとすること』が明らかにされています。

これは利益を得られる場面では、『100%の確率で1000円を貰える』か『50%の確率で2000円を貰える(50%の確率で何も貰えない)』かの選択では、多くの人は前者の確実に1000円を貰えるほうを選んで『リスク回避』をするということです。反対に損失を蒙る場面では、『100%の確率で10000円を失う』か『50%の確率で損失がゼロになる(ただし50%の確率で15000円を失う)』かの選択では、多くの人は後者の50%の確率で損失がゼロになるほうを選んで『リスクを取る』ということです。

利益を得られる場面でも損失を蒙る場面でも、損得の確率はどちらも同じなのですが、利益を得られるのであれば『できるだけリスクが少なくて(金額が小さくなっても)確実な選択』をする傾向があり、損失を蒙るのであれば『少しでも損失を減らすために(確実に不可避な損失のある選択だけはしたくないので)リスクのある選択』をする傾向があるわけです。

人は『利益の喜び(得する快)』よりも『損失の苦痛(損する不快)』を強く感じやすいということから導かれる、人を望ましい方向に動かす説得力の原則は『それをすれば何が得られるかを語るだけではなく、それをしなければどれだけのモノを失うことになるか(非常に大きな損をすることになるか)を語ることも効果がある』ということです。

チャルディーニは説得力の原則として、人は多くの場合において『何を語るかによってよりも、誰がそれを語るかによって動かされるということ』を示しており、人を説得しやすい『権威』というのも『それを語る人物の影響力・信頼度の大きさ』につながっています。

個人や集団組織の目的と合致する専門家の根拠ある証言や権威者の支援などには、一般の人たちを信じさせて協力させやすい説得の効果があるからです。『権威』の説得力にはもう一つ、『自分以外の誰かが自分を推薦して褒めてくれること』があります。

一般的に、人は自分で自分の長所や魅力を宣伝して自画自賛でアピールすると、『事実ではない・美化して自惚れている・でしゃばりで鼻につく』などの悪印象を持たれがちですが、自分ではない誰かが褒めて推薦するのであれば、全く同じ内容であっても人はその内容を『素晴らしい人の特徴』として信じやすくなるのです。

この時には自分ではない第三者が『権威者』としての役割を自然に果たしてくれているのですが、この第三者の説得力を利用した商品・サービスのあまりにもベタな宣伝方法として、『健康食品・ダイエット法などでこれは利用者の個人的な感想です』という前置きをしてから、その商品・サービスを第三者(実際にはCM出演のサクラに近いにしても本当の利用者であることは多い)に褒めさせて推薦させる手法があります。

集団組織の中のメンバーを動かす場合の説得力としては、『われわれ(We)の意識』を持たせて『われわれみんなで目的を共有する雰囲気』を作ることが有効とされます。

人は通常は自分個人の利益や安全を損なう行為を敢えてすることはありませんが、われわれの意識を持つ集団のメンバー(一員)であるという自己定義がある時には、個人の利益を失ってでも集団の目的達成のために動くことは少なからずあるからです。

この個人が自分の利益を捨ててでもみんな(集団)のために頑張ろうとする『われわれ意識(集団の一体感)の説得力』を悪用してしまう例としては、個人を限界を超えて使役して十分な待遇・報酬を与えないブラック企業やブラックバイト、部活のしごき(いじめ)などを考えることができます。

集団主義・同調圧力の強い社会共同体において特に有効に作用する説得力が『社会的証明の原則』であり、同じ共同体に所属している仲間・知り合いの大多数が同じことをしている(同じ判断をしている)という事実の伝達さえあれば、多くの人は多数派に自然に合わせるような行動をしてくれるのです。

反対に、同調圧力に影響されにくい個人主義的信念の強い集団・文化ではこの『社会的証明の原則』はあまり効果がないわけで、多くの人は自分の内面や生き方(ライフスタイル)を重視して、『集団・多数派の真似』をせずに意思決定していくことになるでしょう。

もう一つの説得力の原則は、SNSのやり取りやタイムラインの閲覧を介した影響とも重なりますが、多くの人は『自分の身近な人・知り合いから出てきた情報』のほうを信じやすく、話している相手が自分に近ければ近いほど(自分にとって継続的に重要な人物であるほど)論理的で冷静な判断力が働きにくくなるということがあります。


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