愛着スタイルと人間関係の行動パターンの相関1:自分・他者に対する基本的信頼感の形成

人に認められたいとか愛されたいとかいう『承認欲求(愛情欲求)』は概ね普遍的な欲求で、誰もが多かれ少なかれ持っているものだが、そういった承認欲求を元にして他者と実際にどのように関わっていくかの行動パターンは人それぞれである。他者と実際に関わっていく場合の基本的な行動パターンを規定する要因の一つとして、乳幼児期の『愛着形成のパターン』がある。

“愛着(attachment)”というのは特定の他者に対するこだわりのある情緒的な結びつきのことであり、乳幼児期の発達段階にある人間は生きていくため、健康な心身の状態を維持するために、母親・父親を中心とする特定の他者への愛着をおよそ必然的に形成する。お腹が空いてミルク(母乳)が飲みたい時に泣かない赤ちゃんはいないし、おしっこやうんちをして不快感を感じればおむつを変えてもらうためにぐずつき、寂しかったり退屈だったりするとスキンシップや遊び相手を求めて泣くことになる。

大多数の親は自分の子供が可愛いから、そういった赤ちゃんからの呼びかけにできるだけ適切に迅速に応じてあげることになる。赤ちゃんが泣いたりぐずついたりすれば、お腹が空いている様子であればミルクを上げたり、おむつの状態を確認して汚れていれば交換してあげたり、退屈そうであれば大げさにあやして遊んであげたり、スキンシップを求めていれば抱っこして景色を見せて上げたりするわけである。

親子間で形成される愛着は、全ての人間関係の『原型的な行動パターン』を規定しやすく、自分の価値や他人の好意的な反応をどれくらい信頼できるかという乳児期の発達課題の『基本的信頼感』とも関わっている。『子供時代に求めれば適切に応じてくれて愛情や保護を与えてくれる』という良好な親子関係や母親(父親)との愛着によって、自分の価値を信じやすくなり他者との関係で傷つけられることを恐れにくくなる。

乳幼児期の愛着スタイルは大きく以下の3タイプに分けられると考えられていて、近年は『回避型・アンビバレンツ型の愛着障害』が広義の発達障害やパーソナリティー障害の要因の一つになる可能性が指摘されている。

安定型の愛着……親の適切な愛情・関心・保護に恵まれていたケースで、他者との愛着形成が安定していて極端な執着・回避になりにくい。他者に対する極端な不安・緊張・憎悪がなく、必要に応じて他者との関わりを積極的に持つことができ、親しくなった相手に愛情を求めることもできる。

回避型の愛着……親の愛情・関心・保護が大幅に欠如していたりネグレクト(育児放棄)にあったりしたケースで、冷めた態度や猜疑心の強さがでて他者との愛着を回避しやすくなる。他者に対する極端な不安・緊張・憎悪があり、基本的に他人を信じることができないので(他者に全く期待していないので)、他者との関わりを避けて初めから愛情を求めることもしない。初めから他者との関係や他者からの愛情・関心を求めないので、非社交的・不適応的にはなりやすいがアンビバレンツ型の愛着と比べて主観的な悩み・葛藤は少ない。

アンビバレンツ(抵抗・両価型)の愛着……親の愛情に恵まれた時期と恵まれなかった時期が混じっているケースで、他者との愛着形成が不安定になる。急にそっけなくなって冷めた態度になったり、逆に過剰な愛情を求めて執着したりする。他者に対する期待と不安が半ばしており、本当は他者に愛されたり受け入れられたりしたいのに、『拒絶され傷つけられる不安』から他者と関わることができないという葛藤の苦しみが強い。

こういった愛着形成と人間関係の行動パターンとの相関は『乳幼児期(発達早期)の愛着』だけに限定されるものではなく、『思春期・青年期以前の愛着関係の混乱・失望・喪失』によっても、親子関係以外の人間関係における積極性・消極性や信頼感・不信感(自分に対する自信)は大きく変わってくる。

例えば、小学生くらいの時期に親が離婚・再婚をして自分に対する興味関心をあまり示さなくなったとか、年の離れた弟・妹ばかりに愛情や関心を注いで自分が家庭で疎外されているように感じたとか、再婚した義親から実子と差別的待遇を受けたり虐待・ネグレクトを受けたとかいうことも、十分に愛着障害からの人間関係の行動パターンの変化(消極的になったり回避的になったり自他を信じられなくなったりの変化)につながることがあるのである。


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