クラウドワークスの決算と働き方としてのクラウドソーシングの可能性:在宅で月収20万は元々簡単ではない

クラウドソーシング大手のクラウドワークス社が公開した決算情報(2016年9月期 第1四半期)から、ユーザー数79.5万人のうち月20万円以上稼げる人が“111人(全体の0.014%)”しかいないことが話題になっていた。

クラウドソーシングは『働き方革命』だとか『未来の自由な働き方』だとか言われていたが、実際は従来からある単価の安い低賃金の内職・在宅ワークとほとんど変わらず、大げさなコンセプトを掲げた割には『月20万円(フルタイム・正社員の最低水準)』を稼ぐこともできないじゃないか(自立可能な収入にはならないじゃないか)というわけである。

クラウドワークスで「月収20万円以上」わずか111人の衝撃 やはり働き方は「正社員が一番」なのか

クラウドソーシング(crowdsourcing)というのは、不特定多数の人材やそのリソースをクラウド(雲)に例えて、それら不特定多数の人の能力・資金・発想・作品などの寄与貢献を有償・無償で募ることができるウェブ上の仕組みであり、『企業』がクラウドソーシングの仕組みを通して『個人』に必要に応じて仕事を発注することができる。

企業(仕事をしてほしい側)にとってはアウトソーシング(外注)と同じく『継続雇用』が必要ないという人件費削減のメリットがある。クラウドソーシングだと派遣社員・アルバイトよりも更に『細切れの仕事の単位・細分化された仕事内容(部分に分割されたプロジェクト)』で仕事を発注できるので、企業にとって『必要な時だけ人材を活用できる』ということになる。

もちろん、仕事を受注する個人(仕事をしたい側)にとっても従来の『雇われる働き方(正社員・派遣社員)』とは違う『働き方の自由度の大きさ』というメリットがある。クラウドソーシングというのは基本的にパソコン(案件の難易度によってはスマホ)を使って作業する『在宅ワーク』だから、企業のオフィスに出勤する手間が省け、頼まれた仕事さえこなせば『勤務時間・勤務場所・人間関係の束縛』がほとんどないというメリットはあるわけである。

働き方革命と称された理想のクラウドソーシングのあり方は、確かに高い単価で仕事が受注できて、無理のない作業時間で与えられた仕事をこなせば、月20万円程度の報酬は楽に得られるというものだろうが、毎日出勤する義務がなくて『平均的な正社員よりも短い拘束時間』でも正社員並みの給料が稼げるとしたら、それは『元々平均的な正社員以上のスキル・業界内評価を持った人材』だったというだけの話である。

『在宅ワーク』は企業に正社員としてがっちり雇われて働く働き方よりも参入障壁(特に気持ちの面でのハードル)が低く、他の家事育児・用事などもしながら好きな時(空き時間)だけでも働けるという意味で『仕事をするための時間的・労力的・対人関係的なコスト』も低い。

そのため、『在宅ワークで稼ぎたいという人やニーズ』は昔から非常に多くて、『在宅ワークをするために高額教材を買わせたり高額講習を受けさせたりする詐欺事件(事前準備のコストだけかけさせて実際の仕事がほとんどこない)』なども過去には起こったほどである。ウェブ時代(IT普及)以前の単純作業的な内職(在宅ワーク)というのは、それほど『労力の割にまともに稼げない仕事(同じ時間作業するなら外に出て働いたほうがマシ)』のイメージが強かった。

クラウドワークスの月収20万円を越えたユーザーの職種は、『ITエンジニア』が38.3%、『ウェブ制作』が27.7%、『デザイナー』が23.7%、『ライター』が3.6%で、やはり特別な専門性やスキルが必要ない誰でもできるライター(当然ライター間での文章力・表現力・構成力の技量や人気・書くスピードの差で収入は変わるが)で稼ぐのは難しい。

専門知識やIT関連資格、実務経験などで一定以上の参入障壁ができるエンジニアやプログラマー、ウェブ制作では、受注する仕事の単価が高くなりやすいが、向き不向きもある職種なので、未経験者がゼロから始めて『モノになる(企業から求められる)だけのスキル』を身につけられるかどうかの個人差も大きいだろう。

基本的にはどこかのIT企業に過去に勤めた経験があり、一定以上のスキル・適性・実績のある人材がクラウドソーシングを介して仕事を受注しているだけで、月に20万円以上稼げる人の大半は、企業で採用面接を受けても採用される程度の実力は持っている(実力は持っているが働き方の自由度を確保したいのでクラウドソーシングを敢えて使っている)と想定される。

また、本当に企業が積極的に仕事を依頼したいだけのスキルがあって納期を遵守できる人材がいるのであれば、クラウドワークス社に手数料を取られるシステムを経由せずに、(契約違反にはなるが一定以上の期間を開けるなどして)直接その人材に仕事を継続的に依頼するような形に変化したり、業界内での仕事の能力の評価が固まって『個人宛ての仕事のオファー』が多く入ってきやすい状態になるのではないかと思う。

クラウドワークスをはじめとするクラウドソーシング・サービスの問題があるとすれば、派遣会社と同じく『仕事の需給のマッチング』を仲介して手数料を取るという『一種のピンハネの構造』はあるが、よほど同じ人材ばかりに継続的に仕事を発注するのでもなければ(そんなに同じ人ばかりに仕事を依頼し続けたいなら契約期間を定めた雇用契約を結ぶだろう)、『その場その場で必要な仕事の発注者・受注者を探すという仕事』にも一定以上のコストがかかるので、その仲介を仕事にして手数料を取るビジネスモデル自体が悪(仕事の需給の調整そのものが不要)とまでは言い切れないだろう。

クラウドソーシングには、スマホで出来る『データ入力・簡単なライティング』などの仕事があるようなところもあるが、そういった参入障壁がほぼゼロで誰でもできる仕事というのは、とりあえずお小遣い稼ぎの感じでやってみたい未経験者の応募も多くなり、競争率も高くなることから『安い単価でも引き受ける人材』が増えて収入も低下しがちである。

クラウドワークス社の広報は、月収20万円以上のユーザーが少ないとの指摘に対して、『ユーザーの中には、クラウドソーシングだけで生計を立てたいという方ばかりではなく、副業目的や育児や介護などが理由で、自宅で空いている時間だけ働きたい方、定年退職後のシニアや学生など、収入よりもやりがいやスキルアップを目的とされる方など、様々な目的を持った方がいます。週数時間だけ働き月数万円程度稼げるだけで十分と考える方や、クラウドワークスが複数ある収入源の一つである方も多いため、20万円以上稼ぐことを目指すのはもともと一部の層のみであるとは言えると思います』 と応えているが、この回答は概ね『在宅ワークの動機・能力・報酬の現実』を反映したものだろう。

月収20万円以上を安定的に稼げる一部の人材というのは元々未経験の素人ではない(はじめから一定以上のスキル・実績を持つ)プロフェッショナルの人材に近い人で、その収入を稼ぐためにハードワークの正社員と同じとまでは言わなくても、毎日6~8時間以上などそれなりの作業時間をかけて(片手間で簡単にできるような仕事時間・労力ではなく)仕事をこなしているのではないかと思う。

稼げるユーザーを増やすために、過去の実績などを基準にして、業務の質が高いユーザーを運営側で認定し、有名企業の依頼案件や高単価の案件、継続発注が予定されている案件を優先的に紹介する『プロクラウドワーカー制度』を発足させたという。

クラウドソーシングは好きな時間に在宅でも働ける『働き方革命』とはいっても、従来の仕事と報酬の需給関係(評価基準)を完全に壊すものではなく、クラウドソーシング市場における『各人の能力の高低・仕事(作品)の質・競争率に見合った報酬』に収斂していくように思う。仕事を発注したい側よりも、仕事を受注したい側の数が圧倒的に多ければ、それだけ仕事の単価は下がりやすい。『特別なスキル・訓練・専門性がなくてもその場で誰でもすぐにできるような仕事』であれば、その仕事に応募してくる人(自分でも何とかできそうと思う未経験者)の数も増えるので、これもまた単価が下がりやすくなってしまう。

ちょっとした空き時間にライティングをするようなお小遣い稼ぎの働き方としての魅力もあるが、本気でがっつり在宅ワークで稼ぎたいという人の場合には、『きちんと求められるクオリティーの仕事を迅速にこなせる人材(誰でもできるわけではない一定以上の専門性・難易度・参入障壁の高さがあるような仕事)』でないと、正社員に近い(あるいは正社員を越える)収入は得られるものではない。

反対に、『平均的な同業種の正社員』と同等以上のスキル・実績・学習意欲などがある人であれば、クラウドソーシングを介した仕事の継続的受注によって、それなりに生計を立てられるだけの収入にまで上げることが可能になっていくのではないだろうか。


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