アダルトチルドレンの悪循環と認知療法:親(相手)を変えようとするより自分の認知を変えてみる

他人の考え方や行動を変えようとするよりも、自分自身を変えるほうがより簡単で効果的だという正論の主張は昔からあるが、アダルトチルドレンの特徴として『親の価値観や言動を必死に変えようとする』『親に自分の価値観や生き方を何とか理解させて認めさせようとする』ということがある。

親からの愛情や支持、保護を適切に受けることができなかったアダルトチルドレンの人は、年齢的に成長しても交流分析のエゴグラムでいう『適応的な子ども(Adapted Child)の自我状態』が優勢になっている心理構造を抜け出すことができない。

自分に愛情や肯定感(高い評価)を与えてくれなかった親を必死に変えようとするのだが、『変化しない親』に対して『変化しない子どもの自我状態』で向き合ってしまうので、事態が余計に膠着して『今の時間』が止まったようになってしまう(=新たな経験や関係を楽しめなくなる)のである。その結果、『自分の価値や存在をもっと認めて欲しい・親の間違っている言動を改めて変わってほしい・親と激しく口論してでも自分の主張を認めさせたい』といった子どもが親に対して取る行動パターンを何度も繰り返してしまう。

親子の間で傷つけ合ったり、承認競争(自己主張のぶつかり合い)をしたりといった『悪循環の構造』が続くことになるが、この悪循環は『もしかしたら過去をやり直せるかもしれない(今にまで続く過去の影響を親の変化によって無くせるかもしれない)』という微かな希望に支えられている。

『親の子に対するコントロール欲求』に対して『子の親に対するコントロール欲求』が拮抗してぶつかり合いを終わりなく続ける時には、『自分は自分の人生を主体的に生きることができないアダルトチルドレンである』という悲観的な自己認識が強まってしまう。

親に振り回される子どもの役割行動にはまり込んでしまうことで、『従属性・依存性』と『反抗性・承認欲求(許認可を求める欲求)』のアンビバレンツ(両価的)な性格行動パターンが顕著となり、『親に許認可を受けなければならない人生の生き方(親の許認可がないと罪悪感・不安感や自己否定を感じてしまう依存的な生き方)』を繰り返しがちになる。

親子関係を介在して沸き起こる激しい感情や病的なストレス反応(心身症状)を自己制御するためには、『認知療法(cognitive therapy)』の理論や技法を応用することが有効である。なぜなら、上記してきたような『親の許認可を受けないこと・親の決めた一方的なルール(常識)に従わないこと』によって生じてくる不安感・罪悪感・恐怖感・自己否定感といったものの原因となる背景には、『非適応的・非論理的な認知=自分で自分を束縛して苦しめるような親子関係の捉え方や考え方』が必ず存在するからである。

親の言うこと(アドバイス)を聞かなかったり、親の期待に反することをしたり、親の気分・考えを害するようなことをした場合に、反射的に『罪悪感・後ろめたさ(申し訳なさ)』を感じてしまって、自分自身が正しいと思っている行為や真剣に取り組みたいと思っている活動をできないという問題がアダルトチルドレンでは起こりやすい。

認知療法(cognitive therapy)の認知理論では、客観的な出来事によって苦痛な感情・気分が直接的に引き起こされるのではなく、『客観的な出来事の受け止め方(解釈の仕方)』によってどのような感情・気分が起こってくるのかは変わるという風に考える。この客観的な出来事に対する受け止め方(解釈の仕方)のことを、認知療法では『認知(cognition)』と呼んでいるのであり、この認知を現実的かつ機能的に変容させていくことによって気分・感情が改善しやすくなり、自分の望む主体的・自律的な活動を実現しやすくなるのである。

『物事・行動に対する認知の傾向』は、幼少期からの経験の蓄積や他者による反応からの学習の影響を受けているので、誰もがすぐに自由にどんな内容にでも変更させられるというものではないが、『認知と感情(気分)の不適切な結びつき』を自覚することによって、少しずつ自分を肯定して未来の可能性を信じられるような認知に転換させていくことはできる。

アダルトチルドレンの人が育った機能不全家族では、親が『自分のストレスや不幸感の原因』を子どものせいにする責任転嫁の刷り込みが行われやすいが、『認知と感情(気分)の不適切な結びつき』はそういった自分のせいではない親(家族)の問題を自分の責任として背負い込んでしまうことによって強化されてしまう。

そういった『認知と感情(気分)の不適切な結びつき』があると、精神状態が不安定になってしまいやすい(病理的な精神状態に追い込まれやすい)のだが、自分で自分を責めずに『現実的な認知(今・ここから何を優先してやっていくべきかの考え方)』を持つように心がけ、親と自分の立場を区別して『自分自身の人生の課題』にまず集中して向き合うということが大切になる。






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