“ノマド”と“会社員”は対立するものか?2:カンパニーキャリアとノマドの選択肢

カンパニーキャリアでの専門分野とその分野における知名度・実績・人脈があるほうが、それらがない人よりもノマド(フリーランス)として仕事が得やすく、より自由なワークスタイルを確立しやすい面はある。『会社員=依存的で搾取される社畜』という揶揄的・自虐的・思い込み的なフレームワークだけを強調するのではなく、『会社組織でしかできない経験を汎用的スキル・独立的スキルに利用していこうとする会社員(その会社の外でも生きていけるスキルを身につける者)』になることが目指されるべきなのだろうと思う。

実際、会社は会社員を一方的に搾取しているわけではなく(終身ではないにしても)保護もしているわけで、『安定した毎月の給与・チームワークへの適応・資格取得支援などの学習機会・専門的な職能習得・業界内のノウハウ(組織運営)』を積極的に活用して、“次の仕事につながるカンパニーキャリア”を積むことができれば、会社員のほうが逆に会社を上手く利用できることもある。

こういった機会を最大限に活用している会社員は、会社に運命を握られた従属的な社畜どころか、会社員にもノマド(独立系)にも自由に転向可能な有為な人材という話になる。いざとなればいつでも企業労働にもう一度適応(帰還)できるという点で、カンパニーキャリアがない生粋のノマドよりもサバイバティブな生き方をしていると言えるかもしれない。

長年会社員として働いているのに、その会社を解雇されたら他の仕事は何もできない(汎用的スキル・資格・経験・ノウハウが全く積み重ねられていない)、どこにも雇ってもらえる見込みが立たないというような働き方は確かにハイリスクになってくる。だが同じ会社員であっても、その会社を辞めてもすぐにまた次に雇ってくれる企業が見つかるだけのカンパニーキャリア(企業労働で培った自分なりの強み・経験・技術)を積んでいるのであれば、好きな仕事の選択や勤務時間の裁量があるかどうかを除けば、ノマドよりも不利(不自由)なワークスタイルとは言えないだろう。

時間・場所に束縛されないというノマドは、朝から晩までの長時間労働で給料はそれなりにあるが仕事が人生の全てになりやすい『ハードな正社員(総合職)』と勤務時間は短くて自由もあるがいつ仕事がなくなるか分からず収入も少ない『不安定な非正規雇用(フリーター)』との中間領域にあるワーク‐ライフ・バランスの追求によって生み出された概念かもしれない。

日本の雇用形態では従来から、一日中バリバリとハードに働く“正社員”が勤まらなければ、時間は短いが所得・社会保障・福利厚生が格段に劣る“フリーター(アルバイト・パート)”しかないという『二者択一の構造』が指摘されていたが、モバイル環境・デバイスの進歩や経済のグローバル化、ライフスタイルの多様化を受けて、そこに“ノマド”という新たな働き方の可能性が加わった。

しかし、雇われないノマドであっても、会社員のカンパニーキャリアと完全に切断された働き方・能力ばかりではない。更にノマドが展開するスモールビジネスや請負の仕事に会社(会社員)が直接的に関係してくるケースも多いことから、ノマドと会社員を価値対立的な構造として捉えるのは得策ではない。

そもそも会社員・公務員は、ノマドがやっているフリーの個人事業の顧客(お得意さん)になってくれる可能性も大きいわけで、否定・揶揄すべき相手などでは全くないし、社会に必要な仕事を日々分業している他者として尊重すべきである。ノマドな人だけに閉じた経済圏(売り手も買い手もノマド)というのは想像することも難しいが、サラリーマンの長期雇用が不安定化する中で、『ノマド(自営業者・請負業者)』としてもやっていけるような何らかの突出したスキル(仕事化できそうな得意分野)を持っていたほうが安心という部分はあるかもしれない。

ノマドと会社員は対立するものではなく、ノマドと会社員の相互の役割分担(あるいはどちらにも移行しやすい社会環境整備)や共働体制こそが望まれるべきで、世の中の仕事や生活、個人の社会適応のあり方は、個人のノマドだけでもチームプレイの会社員だけでも成り立たないだろう。ノマドは確かに能力や適性、意欲、チャンス(人間関係)に恵まれた人にとっては、ワークスタイルの『時間的・空間的・選好的な自由度』を格段に高めてくれる働き方だとは思うが、成果も報酬もすべてが自己責任に帰結する厳しい世界であり、誰もがノマド・ワークスタイルに上手く適応できるわけではないし、世の中の仕事の全てがノマド化されるわけではない。

会社員としての働き方とその報酬・保障・待遇に自分が納得できて、カンパニーキャリアを次の仕事にも引き継いでいけるのであれば、無理をしてノマド・ワークスタイルに転換する必要もないし、企業内にも汎用的スキル・専門的能力を高めていける環境は多くある。そういったノマドに対する客観的な現実認識も持ちながら、自分の今まで積み重ねてきた知識・技能・経験・資格などのキャリアをより良く活かせる働き方、自分が望ましいと思う働き方(+必要限度の生活も成り立つ働き方)を模索していくしかないのだろう。

この記事は、『“ノマド”と“会社員”は対立するものか?1:脱ハードワークの牧歌的理想を帯びたノマド』の続きになっています。






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