野田首相の衆院解散の決断と民主党政権の総括2:不透明なエネルギー政策に基づく原発再稼働

2009年の政権交代時の民主党マニフェストを見直してみると、以下の『5つの約束』を骨子にして、『月額2万6千円の子ども手当支給・高校教育無償化・高速道路無料化・最低保証年金・最低賃金1000円への引き上げ・CO2削減の低炭素社会化・自主財源による地域主権の強化』を行うというものだった。

1.無駄遣い削減……国の総予算207兆円の全面組み替え。税金の無駄遣いと天下りを根絶して、議員の世襲と企業・団体献金を禁止する。衆院定数の80削減。

2.子育て・教育……中学卒業まで1人当たり年31万2000円(月額2万6000円)の子ども手当を支給。高校の実質無償化。大学の奨学金を大幅拡充。

3.年金・医療……『年金通帳』での年金管理。年金制度の一元化と月額7万円の最低保障年金創設。後期高齢者医療制度の廃止。医師不足解消のため、医師の数を1.5倍に増員。

4.地域主権……国からの税源移譲で自主財源を増やし、地域主権を確立する。農業の戸別所得補償制度。高速道路無料化。郵政事業の見直し。

5.雇用・経済……中小企業の法人税率の11%への引下げ。月額10万円の手当付き職業訓練制度。成長産業の発見と支援。

しかし、事業仕分けや行政改革、公務員制度改革、特別会計の埋蔵金で捻出する予定だった“15.3兆円”は捻出することができず、『子ども手当・高速道路無料化・年金制度改革』などの目玉政策は立ち消えとなり、官から民へのスローガンを掲げた『政治主導・国家戦略局』も中央官庁のパフォーマンスをただ低下させるだけの『形式的な官僚排除・人事改革』に終わってしまった観がある。

チェルノブイリ原発事故の汚染の程度・範囲にも相当するというシビアアクシデントの放射能漏れを起こした『福島第一原発事故』も、危険な警戒区域からの住民の避難・転居は進んだものの、本格的な汚染地域の除染、土地・住居・職場を失い精神的にも疲弊した被害者の賠償、東電の原発事故責任の履行(損害賠償や廃炉の負担)はこれからという段階である。

福島第一原発事故の発生によって『原子力発電の安全神話・原発ルネッサンスの風潮』は崩壊してしまい、他の発電方式よりも安価とされていた『原発の電気のコスト』も安全対策の強化やストレステストの実施、耐用年数(約40年間の稼働での廃炉の要件)の厳格化、万が一の原発事故の処理・補償の仮定でかなり割高なものになってしまった。

民主党は菅政権の頃に、静岡県の浜岡原発を停止させてストレステスト(耐性テスト)を再稼働の条件としたが、野田政権も段階的な原発廃止(原発ゼロ化)を喧伝して2030年代には原発を無くす予定だとしている。しかし、“減原発”から“脱原発”へのプロセスは、『地域の電力需給と経済への影響・燃料コスト高騰と電気料金値上げ・原発の立地自治体の雇用と経済』などを考えると不透明な部分が多く、本当に日本のエネルギー政策として2030年代までに原発ゼロ化を実現できるのかははっきりしない。

最近のマスメディアや世論の論調も、『短期間での原発の廃止』に賛成する意見は減っており、当面は安全対策を強化した上で『原発再稼働』を容認し、『経済・家計への負担』を和らげるべきだとする意見が増えている。特に、地域の雇用や消費、経済活動とダイレクトに関わっている原発が立地している自治体では、3選された新潟県柏崎市の会田洋市長も『東京電力の柏崎刈羽原発の再稼働』を当面は容認する態度を示しているように、殆どの立地自治体ではやはり原発が即時に廃止されてしまうのは地域の経済・生活を維持できなくなって困るというのが本音である。

原発はいったん事故が発生して放射性物質が流出・飛散すると、非常に大きな損失と不安を生み出すだけでなく、放射能汚染によって長期間にわたって原発周辺の土地が使用不能・居住不能になってしまうというリスクがある。しかし、日本国民の過半は原子力規制庁の新規な安全基準(再稼働容認の要件)を信頼しているというよりも、東日本大震災並みの大災害が短いスパンでは繰り返されない(安全対策強化で何とか持ちこたえられる)という見通しに立っているのだろう。

だが、原子力発電所のクリティカルな問題は、万が一の大災害による原発事故の再発リスクもあるが、それだけではなく『核燃料サイクル構想(高速増殖炉の実用化)の破綻』『使用済み核燃料(放射性廃棄物)の蓄積+核のゴミの最終処分法の未決定』にあるように思う。核燃料のウラン235は化石燃料よりも安価ではあるが、その推定埋蔵量にも数十年の限界があり、永続的に利用できる資源ではなく、大量に発生して原発サイト内に蓄積している使用済み核燃料の山を、将来的にどこの自治体が引き受けて処分するのか、本当に何百年も安全に核廃棄物を管理できる場所・方法があるのかも定かではない。

この記事は、『野田首相の衆院解散の決断と民主党政権の総括1:マニフェスト選挙の無意味化』の続きの内容になっています。






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