iPS細胞作製の山中伸弥教授のノーベル生理医学賞受賞と森口尚史氏のiPS臨床応用の誤報・虚偽発表:2

ハーバード大学とその傘下病院がiPS細胞の臨床応用事例の存在を否定したため、森口尚史氏の主張する『世界初のiPS細胞を用いた再生医療の成功事例』は虚偽であるという判断が下されたが、本人は6件のうち5件は虚偽(今後予定されていた手術)だったが1件は本当に実施されたというスタンスを取っている。

森口尚史氏は1993年に東京医科歯科大を卒業して看護師の資格を取得したが、医師免許は持っていないため移植手術の執刀をすることはできず、職業上の専門分野も医学的な実験・臨床よりも医療統計学や知的財産法のほうに重点があったという。現時点の職業上の肩書きは、東京大の研究代表者によって雇用されている美容・形成外科分野の特任研究員だというが、ハーバード大の医師が執刀する世界初のiPSの臨床研究に直接的に立ち会うような立場や機会はなかったという見方が有力になっている。

森口氏がなぜ少し調べられればすぐに露見するような嘘をついたのかの理由は定かではないが、今回のiPSの臨床研究成果(心筋細胞の作製・移植)の報道についてはマスメディアのほうが探し当てて報じたのではなく、森口氏自らが読売新聞をはじめとする国内主要メディアに『世界初のiPS細胞を用いた心筋細胞の移植』を売り込んでいたという。

世界や社会、学会に認められたかったという森口氏の名声欲や自己顕示欲の現れといってしまえばそれまでであるが、山中伸弥教授のノーベル賞受賞で世界中から大きな注目と関心が集まっている中、そのiPS細胞を用いた臨床応用を世界で初めて成功させたというような壮大な嘘をついてバレないはずがない(iPS細胞由来の移植手術の裏付けがないことがすぐに明らかになる)と思うのだが、一瞬であっても研究者としての最大の栄誉を得たいと思う誘惑に抗しきれなかったのだろうか。

またこういった科学的・医学的な研究分野において大きな意味を持つだけでなく、世界的にも大きなインパクトや話題性を持つ研究内容(iPS細胞を用いた臨床応用=心筋細胞移植の手術実績)について、『関係者・関係機関からの裏取り(根拠の確認)』を全くせずに本人の言葉だけを信じてすぐに報道してしまった新聞社(マスメディア)にも、『誤報』をしてしまったという責任の一端があるように思う。

ハーバード大から得た移植手術の暫定許可証を日本の自宅に置いてあり、手術に関する執刀医や患者の情報は守秘義務の観点から公開できないという苦しい弁明に追われている森口氏だが、『研究者としてはやっていくことができない』という事実上の引退宣言をしている。周辺住民の話などから、自分の身分や実績について実際よりも良く見せようとする虚言癖があったとも言われているが、ノーベル賞受賞の候補者になってストックホルムに行ったという話を聞いたという人もおり、以前からノーベル賞に関しては一方ならぬ思い入れや憧れを持っていたようである。

科学者が名誉や評価、資金を求めて虚偽の研究成果の発表や論文のデータの改竄(他の研究者の論文の盗用)をするという事件は時折起こる。iPS細胞と同じ機能を持つES細胞(万能細胞)の研究でも、2005年に韓国ソウル大学の黄禹錫教授『胚性幹細胞(ES細胞)に関する研究論文・実験データ』を意図的に捏造して成果を誇張するという事件が発生していた。

自然の客観的な事実や実証的な理論・法則を解明して、技術的・倫理的に応用していくべき自然科学の分野で、こういった生々しい人間の欲望や虚栄心、自己顕示に基づく『事実に関する虚偽・データの改竄・成果の捏造・研究の盗用』などが発生してくるのは悲しい現実であるが、それはそれだけ先端的な自然科学や医学研究が持っている社会的経済的評価が高く競争が激しいことの裏返しでもあるのだろう。

受精卵由来のES細胞よりも、自分自身の体細胞に由来するiPS細胞のほうが免疫応答の拒絶反応が起こりにくいというメリットがあり、『iPS細胞を用いた再生医療(器官の分化作製)』には患者の幸せにつながる難病治療や臓器再生、社会全体を豊かにする経済効果(再生医療市場の活性化)の上で非常に大きな可能性が秘められている。難病・遺伝子疾患の原因解明や治療法発見のために、その患者の体細胞からiPS細胞を作って備蓄する(必要に応じて備蓄したiPS細胞を増殖させるiPS細胞ストックの構想)というプロジェクトも進められているが、山中伸弥教授のiPS細胞作製から始まった生命科学・再生医療の革命的進歩のプロセスを期待しながら見守りたい。

人間の持つ科学知識や医療技術がどこまで『生命の操作・生殖の補助』に踏み込んでいって良いのかという生命倫理学上の問題や懸念が残る部分はあるが、iPS細胞の作製に基づく『再生医療・新薬製造・病理解明への応用』は人間社会に対して希望の光をもたらすものであり、『倫理的な基準・規定(これ以上は踏み込むべきでないとする生命操作・生殖医療関連のライン)』を適宜論議しながら進めていくべきではないかと思う。この記事は、『iPS細胞を作製した山中伸弥氏のノーベル生理医学賞受賞と森口尚史氏のiPS臨床応用の誤報・虚偽発表:1』の続きの内容になっています。






■書籍紹介

生命の未来を変えた男 山中伸弥・ips細胞革命
文藝春秋
NHKスペシャル取材班

amazon.co.jpで買う
Amazonアソシエイト by 生命の未来を変えた男 山中伸弥・ips細胞革命 の詳しい情報を見る / ウェブリブログ商品ポータル






NHKスペシャル “生命"の未来を変えた男 山中伸弥・iPS細胞革命 【特別版】 [DVD]
NHKエンタープライズ

ユーザレビュー:

amazon.co.jpで買う
Amazonアソシエイト by NHKスペシャル “生命

この記事へのトラックバック