違法ダウンロードの刑事罰化についてどう考えるか?2:インターネットの普及と著作権ビジネス

この著作権法改正をどう評価するかは、著作物によって対価・収入を得られる権利者であるか、著作物のビジネスと無関係な一般人であるかによってもスタンスが変わってくるだろうが、インターネット上に公開されている違法コンテンツの量は膨大でありユーザー数も多いため、『知らずに犯罪を犯すリスクの高さ・警察の恣意的な捜査拡大や別件での摘発』などの問題は生じてくる。法律や著作物・著作権についての知識が乏しく、その公開されているコンテンツをダウンロードして良いか否かの十分な判断能力がない未成年者が、いつの間にか犯罪者(前科者)になってしまうというリスクは、未成年者の指導教育の観点からも好ましいものではない。

潜在的に“膨大な対象者=違反者”のいる違法ダウンロードに刑罰を科すよりも、本来は『アップロードされた違法コンテンツ』をプロバイダー(サイト管理者)に命じて削除する権限を強化したり、アップロードした人物のトレーサビリティ(追跡能力)を高めて確実に検挙することに力点を置くのが本筋ではないかと思う。著作権侵害のコンテンツをダウンロードすることが『実店舗での窃盗(万引き)』と同じだとする論理は、ネット上のコンテンツに『物質性・有限性・使用を独占できる仕組み』がない事によって半ば破綻しているが、“インターネット(ウェブ)という技術革新”“著作権ビジネス(知的財産権)”との相性の悪さをどうブレークスルーするかが問われ続けている。

音楽業界はインターネットの違法ダウンロードによって、年間6,000億円以上もの経済損失があるという計算をして、それを『違法ダウンロードの刑罰化』が必要な根拠としているが、これは『違法ダウンロードの回数=CD・DVDの販売枚数(違法ダウンロードしなければその音楽をすべて定価の有償で購入していたはず)』という有り得ない推測に基づいており、被害を実際以上に見積もった“机上の空論”の部分もある。

既に違法コンテンツがアップロードされていて、ワンクリックで無料で簡単にダウンロードできるからその音楽・PV・映像などをダウンロードしているだけであって(有料でも絶対に欲しいというほどのニーズの強度はない可能性が高いのであって)、クレジットカードの登録をする手間をかけて『定価の有償』で購入してまで欲しいという人はそれほど多くないと推測するほうが合理的だからである。違法ダウンロードによる経済損失の実際の規模は、6,000億円よりも小さい規模である可能性のほうが高いが、その経済損失が引き起こされる根本的な原因は『既に違法コンテンツがアップロードされているから』であり、ダウンロードというのはそのアップロードの随伴的・副次的な行動という意味合いのほうが強い。

誰もが簡単にデジタルデータをアップロードして広範に頒布できるという『インターネットの技術革新(イノベーション)』『従来的な著作権ビジネス』を通用しにくくして陳腐化してしまったという側面も強いが、それは『自動車(内燃機関を持つ車)の技術革新』『馬・ロバ・馬車での移動』を陳腐化して駆逐してしまった歴史のアレゴリー(類似)でもある。

しかし、インターネットの技術革新は自動車の技術革新と比べると、必ずしも『雇用の増加・企業の利益・経済的収益の拡大』といった資本主義社会との相性が良くないという違いがあり、『無料でのコンテンツの生産・複製・消費(フリー化・シェア化)』を促進しやすいので、著作物を独占的に利用するビジネスモデルで成り立つ旧来産業・権利者との摩擦が起こりやすく、政治的にさまざまな法的規制が検討されやすい部分はある。

『音楽・文書・映像』などのコンテンツ(創作物)を作成して管理し、それを利益(収入)に変えてゆくという『著作権ビジネス(複製権・公衆送信権の独占によるコンテンツ販売の仕事)』そのものが無くなることはないし、一部では現在でも爆発的に売れている音楽(アーティスト)・文書(小説)・映像(映画)のコンテンツがあるように、『コンテンツの魅力(独創性)・売り方(マーケティング)・希少価値(リアルタイム性)』によっては、現代のネット社会でも有料で売れるものは少なからずあるだろう。

だが全般的に見れば、インターネットでは違法コンテンツではなくても、『商品化されていない無料(アマチュア作成)の読みたいコンテンツ・見たいコンテンツ・聴きたいコンテンツ』が著作権者(制作者)の意志によって無数に公開されており、ネット普及以前の時代と比較すると『有料でも買いたいというコンテンツの量』は減っており、有償コンテンツの競争環境は無料コンテンツも巻き込んで激化の一途を辿っている。

この記事の内容は、『違法ダウンロードの刑事罰化についてどう考えるか?1:違法なアップロードとダウンロードの法的責任』の続きになっています。






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