交流分析の『エゴグラム』を用いた構造分析の理論:自我状態のアンバランスの修正法について

前回の記事では、5つの自我状態の特徴・機能を大まかに説明しました。エゴグラムの理論・技法を体系化したJ.M.デュセイは、社会適応力と情緒安定度が高くて他者とのコミュニケーションも円滑になりやすいエゴグラムとして、『ベル型』『平ら型』を上げています。

エゴグラムの折れ線グラフ(棒グラフ)は、『CP・NP・A・FC・AC』の順番で点数をつけてグラフ化します。『ベル型』というのは真ん中のA(大人)が最高値を示して全体を統合し、左右になだらかに数値が下がっていく(CPとACが小さめになる)というものです。『平ら型』というのは、そのままCP・NP・A・FC・ACの点数がほぼ等しくて、自我状態のバランスが適切に取れていて感情の不安定さが無いことを示しています。

交流分析ではエゴグラムを用いて自分や他者の人格構造(性格傾向)を分析することを『構造分析』といい、『交流パターン分析(コミュニケーション分析)』と並んで基本的な分かりやすい分析技法の一つになっています。エゴグラムを作成した後の構造分析でまず最初に確認すべきことは、以下の二点に集約されます。

1.『CP・NP・A・FC・AC』の自我状態のうち、どれが最も点数が高くて優位になっているか。
2.『CP・NP・A・FC・AC』のグラフのバランス(形)はどのようになっているか。

エゴグラムではどの自我状態が優位になっているかによって、大まかに自分の人格構造やコミュニケーションのパターンを把握することができます。エゴグラムのアンバランス(偏り)を自覚して、意識的に『行動・発言・関わり方の変化』を促進することで、問題状況が解決したり他者とのコミュニケーションが改善しやすくなります。

交流分析の作用機序(仕組み)は『構造分析・交流パターン分析・ゲーム分析・脚本分析』の分野に分類することができますが、自己理解と他者理解を客観的に深めていき、自分の性格傾向や行動パターンを変えるきっかけを掴むという意味では『構造分析の役割』は重要です。どの自我状態が一番優位に立っているのかによって、以下のようなタイプを考えることができますが、それぞれのタイプの典型的な問題点・短所について簡単に書いておきます。

1.CP(批判的な親)の優位型……頑固で融通が効かず批判的(処罰的)である、上から目線で他人を指導(叱責)しやすい、柔軟な態度でコミュニケーションができない、価値観や判断の基準が固まり過ぎている、相手の立場や心情への共感性が不足しやすいなど。

2.NP(擁護的な親)の優位型……相手を甘やかして依存させやすい、是非善悪の判断が曖昧になりやすい、厳しい態度や対決の姿勢を取ることができない、相手の自立心や主体性を阻害することがある、行き過ぎたお節介や親切の押し売りが敬遠される、他者への共感・援助で疲れきってしまうなど。

3.A(大人)の優位型……ドライな合理的判断が強くなり過ぎる、人間的な感情が抑圧されやすくなる、損得勘定を考えてからしか行動できない、人間関係の情よりも功利的な計算を優先しがち、冷淡で温かみの乏しい人と思われやすい、理性的になり過ぎて楽しみにくくなる(理屈っぽさが目立つ)など。

4.FC(自由な子ども)の優位型……けじめのある行動ができない、他人の気持ちや期待に配慮しない、自己中心的な振る舞いやわがままが目立つ、嫌なことやつらいことを我慢できない、目的達成のための計画ができない、遊びや楽しみにしか関心が向きにくい、成熟した振る舞いや関係を持ちにくいなど。

5.AC(適応的な子ども)の優位型……自分の意見を主張できない、自分の感情を自然に表現できない、何でも自分が我慢してしまう、損な役回りばかりを引き受けてしまう、ストレスが溜まって情緒不安定になりやすい、自分に自信と尊厳を感じにくくなる、他人や世間の期待(要求)に振り回されてしまう、確固とした自分を持てないなど。

エゴグラムを用いて『病前性格のリスク』を推測したりすることもできますが、一般的にCP(批判的な親)が強すぎると、道徳観や義務意識の過剰によって、燃え尽き症候群からくるうつ病(気分障害)やストレス性疾患・心因性頭痛などのリスクが高まるとされています。

大うつ病性障害の発症リスクが高い典型的なエゴグラムは、生真面目で責任感が強く現実適応力の高い性格構造を示す『W型』であり、CP(規範意識)とA(現実認識)とAC(上位者・組織への従順さ)の点数が高くなっていて、NP(優しい共感性)とFC(こだわらない自由きままさ)の点数がかなり低くなっています。

A(大人)が強すぎる場合には、アレキシシミア(失感情言語症)によって自分の感情に気づいたり言語化することが困難になり、心身症の発症リスクとなります。FC(自由な子ども)が強すぎると、他者に配慮できず自分を特別な人間と思い込んでしまう自己愛性の障害やクラスターBのパーソナリティ障害の発生リスクが高まると考えられたりもします。

AC(適応的な子ども)が強すぎる場合にも、自分の感情・要求を内面に抑圧することで、身体表現性障害やパニック障害、心身症などの発症リスクがでてきます。FCが低くてACが高いエゴグラムには『性格構造の不安定さ・自己の抑圧』があり、感情や自己評価が落ち着きにくくて人間関係(日常生活)を楽しむのが苦手という問題もあります。

エゴグラムのバランスの崩れを修正しようとする際には、『点数の高い自我状態』を低くすることはなかなか難しいのですが、『点数の低い自我状態』を意識的な言動の変化によって高くすることで修正していきます。

それぞれの自我状態を高めようとする時には、以下のような発言・行動・態度の変化を心がけてみると、少しずつ自分の他者への関わり方や自己認識の内容が変わっていくことを実感できるでしょう。

1.CP(批判的な親)を高める言動……自分の意見や価値観を相手にしっかりと伝える。責任感とけじめを持って行動する。他人(部下・子ども)の間違いや過ちを注意するようにする。妥協しない自分なりの信念・基準を作る。規則正しい生活リズムを作る。

2.NP(擁護的な親)を高める言動……相手の良いところを見つける。相手の能力や成果、性格を積極的に認める。批判するのではなくまずは褒めたりフォローするようにする。相手への共感を「私もそういう風に思う。あなたの考えに共感した」といった言葉で伝える。相手の小さな欠点や反論に細かく反応しない。

3.A(大人)を高める言動……客観的な情報や数字に注目して重視するようにする。『それはこういう意味でしょうか?』など相手の意見や説明を正確に理解できるように質問する。リラクセーションをして感情に振り回されない。長期的視点で全体を俯瞰する。自分の行動がどんな結果(損得)につながるかを予測してシミュレーションする。

4.FC(自由な子ども)を高める言動……楽しそうなことや面白そうなことに積極参加する。頭で考えすぎずに感覚・感情でダイレクトに感じる。『おぉ、凄い。綺麗。楽しいな。これが好き。あれをやりたい』といったストレートな感情表現をする。趣味や娯楽に時間を費やす。空想や想像も上手く活用して楽しむ。

5.AC(適応的な子ども)を高める言動……周囲のことを考えて行動する。社会常識に照らし合わせて判断する。良識的な発言や無難な行動をする。協調性や連帯感を持って集団行動をしてみる。自分の意見や要求を少し抑えてみる。『やりたいこと・遊び』より『やるべきこと・仕事』に意識を向ける。社会的な権威や慣習を軽視せず尊重する。










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