“人の可能性・話す意欲・リソース”を引き出す解決志向カウンセリングのコミュニケーションスキル

ブリーフ・セラピー(短期療法)や解決志向型カウンセリングでは、クライアントの『内的リソース(心理的資源・能力)』『問題解決行動の動機づけ』を新たな可能性として引き出そうとする。

効果的な言語的コミュニケーションを通して、『新たな可能性・自覚していない内的リソース』を引き出すという発想は、カール・ロジャーズのクライエント中心療法にある共感的理解に基づく『実現傾向の促進』とも重なっている部分がある。

解決志向や解決構築のカウンセリングアプローチは、人間には本来的に『成長・健康・発展・幸福』へと向かうポジティブな自己実現傾向があるという“ロジャーズ的な実現傾向”を前提としており、『内面にある能力・考え方・経験』を上手く引き出してあげることで問題が解決に向かうと考える。

問題の解決法を教えてあげたり有効なアドバイスをしたりという『指示的カウンセリング』の要素よりも、問題の解決法を気づかせたりセルフヘルプ(自己援助)できる心的体制を構築させたりという『非指示的カウンセリング』としての要素を多く持っていて、内的リソースの開発と活用(実践)に重点がある。

クライアントが本当は持っているのに、それに気づけていないだけの『ポジティブな認知』『有用な心的リソース』を会話を通して引き出すことで、実際に悩みや問題に対応するための自己肯定感(自信)が高まりやすくなる。

自己肯定感や自分への自信が回復してくれば、それまで不安感(恐怖感)や緊張感、劣等感によってなかなかチャレンジすることのできなかった『課題・活動・目標』にも取り組むことができるようになり、心的リソースの潜在的可能性が『実践的な試行行動』につながってくる。

精神分析をはじめとする『原因探求型のカウンセリング』では、過去のつらい記憶や悲しい体験、トラウマティックな出来事に話題がフォーカスされて、『過去の受け容れがたい記憶・感情の受容的な整理』が進められていくことになるが、原因を探求した後に実際的な問題の解決(苦悩の克服)をするには、『悲観的な認知・不適応な行動』も徐々に変容させていかなければならないだろう。

認知行動療法の構造化面接というのは『決められた形式・手順・ワークシート』に従うというシステマティックな部分もあるが、ブリーフセラピーでは『目的行動のモチベーション・インセンティブ』を高める質問方法や視点を工夫することで技法のマニュアル化がやや和らいでいる。

解決志向型カウンセリングで用いられる幾つかの簡単なコミュニケーションスキルや考え方(発想の転換)は、『相手のやる気を引き出す・話す意欲を高める(多くの情報を得る)・問題点を絞り込む・目標を明確化する・自己理解を深める』などの有効性があり、日常的な人間関係や会話場面に応用することもできる。


○相手のやる気を引き出す

1.本人のできないことや苦手な分野ではなくて、本人のできることや得意な分野を見つけ出して話題の焦点を合わせる。

2.過去の成功や達成、喜び、面白さなど『ポジティブな事例』にまつわる質問を行っていく。今までに『何も良いことはない』と答える場合でも、『リフレーミング(物事を見る枠組み・視点の転換)』によって、肯定的な物事や自分の見方を提示していく。

3.『相手の大まかな性格タイプ(外向性・内向性・協調性・開放性・情緒性など性格傾向)』を理解した上で、相手がやる気を出しやすいインセンティブを示したり、行動しやすい環境を調整してみる。

4.相手の過去から現在に至る行動や発言、履歴に対して、『適切な承認・肯定・賞賛』を与える。“上位の目線”から相手を客観的に評価するような褒め方よりも、“対等な目線”で相手に対する率直な感想や主観的な考えを伝えるような褒め方のほうが伝わりやすい。


○話す意欲を高める

1.相手の話題や意見に対する興味関心を示して、『もっとその話を続けてほしい・それからどうなったのか知りたい・あなたの意見を聞きたい』という好意的な反応を返すようにする。

2.相手の話を途中で遮らないようにして、相手の価値観や判断基準に対して共感的な理解を示すようにする。議論や討論(ディベート)のように、相手の主張・持論を論理的に反駁するような姿勢を持たないようにする。

3.『相手が話したそうにしていること』を推測して、その話をしやすくなるような質問を工夫する。

4.『相手が提示する話題・意見・感想』は最初は大雑把で直感的なチャンク(塊)であることが多いので、少しずつ『詳細な話・具体的な意見』を聞けるように質問を重ねていく。


○問題点を絞り込む・目標を明確化する

1.『相手が希望する状態』と『相手の現在の状態』を聞いて、何に一番困っているのか、何が一番問題のネックになっているのかを絞り込む。

2.『相手が希望する状態』を実現するためには、どうすれば良いのかという『大きな目標』を設定させて、その大きな目標を更に実現しやすい『小さな目標』に分けていく。

3.『抽象的・理念的な目標』を自分が心地よく感じる言葉にすることでモチベーションが高まる。そのままだと理想の目標を掲げるだけになるので、『具体的・実際的な行動レベル』に落とし込んで、『今できそうな身近な課題』を幾つか設定してみる。

4.一定期間が経過したら『目標と実際のズレ』をチェックしてみて、『小さな目標の達成度』を5段階評価などで数値化してみる。


○自己理解を深める

1.『自分の言葉・態度・表情・行動』が日常のコミュニケーションにおいて、相手にどのような影響を与えているのかを反省的に見てみる。『好意的・協力的な反応』が返ってきやすいパターンと『敵対的・非協力的な反応』が返ってきやすいパターンを比較してみる。

2.『自分に対する質問項目』を、“仕事・家庭・趣味・恋愛・結婚・価値観・性格特性・好きなこと・嫌いなこと・自信の持てること・自信が持てないこと”など多方面について作成し、自分で答えてみる。

3.『好きな他人の行動パターン・嫌いな他人の行動パターン・自分自身の行動パターン』を比較してみて、自分独自の考え方や行動基準、価値観、態度の持ち方の特徴に気づくようにする。どういった性格特徴や行動・態度のパターンを持つ人を苦手だと感じるのか、あるいは相性が良くて好きだと感じるのか。

4.人間関係やコミュニケーションで『不快なストレス・不満なフラストレーション』を感じた時には、“どんな要素・状況・他人の言動”が自分を不愉快にしたり傷つけやすいのかを考えてみる。そういった不快感や屈辱感、ストレスを和らげるためには、どのような『適応的な認知(物事の捉え方)』を持てば良いだろうか、どういった『対処行動の選択』をすれば良いだろうかと自問してみる。










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■書籍紹介

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