34歳女性の婚活サイトを悪用した結婚詐欺についての考察2:結婚詐欺の心理とバランス理論

人間はカタログを見ていて『どの異性が理想のタイプか?』と直観で選ぶ時の判断基準と『自分の配偶者(恋人)としてどの相手が望ましいか?』を現実的に選ぶ時の判断基準が必ずしも一致しないことがあり、現実的な異性選択では『自分の魅力・能力・属性・社会的評価との釣り合い』を無意識的に考えている。男性でも女性でも基本的な傾向として、『自分と同程度の魅力・能力・キャリア』を持っているように認知される相手との交際(結婚)に、最も自然な親近感や安心感を感じやすいという理論を『バランス理論』という。

『自分と同程度の魅力・能力・キャリア』というのは、総合的なバランス感覚となって現れるので、自分の容姿には余り自信がなくても経済力や職業の信用力などに自信があれば、美人・美男と交際することに釣り合いを感じることができたり、その逆に経済的・教育的な能力がなくても衆に抜きん出た容姿があれば、職業エリートとの結婚に釣り合いを感じたりすることはもちろんある。自分よりも地位や所得のある女性を敬遠する男性がいたり、女性以上に綺麗な印象を与える美男子と実際に付き合うことに気後れを感じる女性がいたりすることは、実際的な魅力・利点からは矛盾する反応のようにも思えるが、自尊心・相手への信頼感・利害均衡の絡むバランス理論からは理解することが可能である。

しかし、あらゆる側面において自分と相手との魅力や評価に落差があってバランスが崩れていると感じる時には、人間はその相手と交際したり結婚したりすることに相当な抵抗感や気後れを感じやすい。そのため、『美人(美男子)であればあるほど万人に直接的に求愛される』というのは実際的には正しくないと言えるし、美人が不用意に接近してきて自分と付き合いたいとか結婚したいとかいってくれば、大半の男性は何か裏があるのではないかと身構えるだろう。

異性関係や社会生活における自己評価が低くなると、明らかに自分と釣り合いそうに無い『高嶺の花・住む世界が違うように感じる相手』を敬遠(警戒)する傾向が強まるので、容姿に自信のある人が自己の魅力を生かして大金を稼ごうと思えば、バランス理論が作用しやすい『結婚詐欺』ではなくて、『売春・愛人契約』など性的魅力に特化した方向で稼ぐ選択をすることになりやすい。婚活サイトでも婚活パーティでも、『この相手となら結婚生活が上手くいきそう・自分とこの人は何となく性格が合いそうだ』というフィーリングの良さを感じることがあると推測されるが、この直観的なフィーリングが合うか合わないかという感覚もバランス理論との相関があるだろう。

『結婚詐欺』は相手にバランス理論に基づく安心感・信頼感を与えて、家庭的な雰囲気による結婚適性をアピールできるかどうかによって成否が分かれる犯罪であるが、『売春・愛人契約』と比較すれば相手の真剣な気持ちや人生そのものを弄ぶという意味で『ハイリスク-ハイリターン』という特徴を持っている。平均以上に人目を引いて男性の性的欲求を煽れる美人は、男性の欲求を利用して利益(金銭)を得ようと考えたとしても、ハイリスクな結婚詐欺よりも合法的な風俗産業や双方同意の売春を選択すると思われる。34歳の女性容疑者が、殺人にまで手を染めていたとしたら、その理由の一つとして、恋愛詐欺(疑似恋愛)ではなく結婚詐欺というハイリスクな犯罪にのめり込んだことも関係しているだろう。

双方同意の上でお金と性的魅力を直接的に交換する『売春・愛人契約』も道徳的には批判されるものではあるが、当事者間の怨恨や対立というのは想定しにくく『一時的な疑似恋愛・愛人としての立場』で納得できることが殆どなので、結婚詐欺のように逃げ場のない犯罪とは質が大きく異なる。愛人契約の場合には、婚姻の貞操義務に反しているので、配偶者がその事実を容認しなければ慰謝料・離婚を巡る裁判沙汰になるリスクも当然あるが。結婚詐欺の最大のリスクは『相手の誠実な思い・真剣な人生の決断』を逆手に取って弄んだ挙句、金銭まで詐取していくので、相手の強い恨みや法的制裁の意志を掻き立てるということである。

相手に数百万円~数千万円を一方的に騙し取られて、『結婚するという約束』も反故にされた男性(女性)が黙ってそのまま相手を見過ごすことは考えにくく、警察に届け出られて詐欺罪で逮捕されるリスクは相当にある。34歳の女性がどうして結婚詐欺だけではなく殺人にまで手を染めたかという理由には、『人格構造・倫理感覚の歪み』をまず第一に挙げなければならないが、それと合わせて『逃げ場のなくなる結婚詐欺の性質』も考慮しておかなければならないと思う。

しかも何人も続けて結婚詐欺の罠に掛けようとしたのであれば、被害者が生存したままでは『警察に被害を訴え出られて指名手配されるリスク』は相当に高く、『現時点での一時的な性愛』ではなく『未来を誓う結婚』をダシにして騙している以上、お金を返さずに騙した被害者との関係を清算することは極めて難しい。だから、倫理観や良心の欠如している人物であっても、合理的判断ができるのであれば、通常は『結婚詐欺』などという逃げ場のなくなる愚劣な犯罪に深くのめり込むことはないはずである。

美人のほうが結婚詐欺に成功しやすいのではないかという先入観の過ちは、『バランス理論による猜疑心』『結婚詐欺のリスク(相手の執着や怨恨の深さ)』『恋愛・性愛を生かしたローリスクの稼ぎ方の存在』から確証することができる。また、34歳の女性は『結婚詐欺が毎日の仕事のようになっていた』と供述しているというが、相手の真剣な気持ちを理不尽に蹂躙するという結婚詐欺の悪質さ(罪状に関わる被害者の遺恨の深さ)を考えれば、仕事のようにできるようなものではなくいずれは自滅せざるを得ない種類の犯罪なのである。

この女性は初めに証拠隠滅のための殺害をした時に、警察がその犯罪事実を見逃してしまったことで、『同様の手法を用いれば犯行そのものが露見しないのではないか』というご都合主義の確信を深めてしまったのかもしれないが、『インターネットを用いたコミュニケーション・ブログ・買い物の痕跡』からリアルの自分の行動履歴が浮き彫りにされるというリスクには関心が払えなかったようである。今回の事件では、亡くなった41歳の男性が自分のブログに『婚前旅行に関連する日記』を書き残していたことも犯罪が明らかになるきっかけとなっているが、女性が結婚詐欺をしながら書き続けていたという『セレブ生活(散財生活)の日記』というのもかなり異様な印象を与えるものである。










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