“プライベートな人間関係”の親密度を推量する基準としての『応答可能性・援助可能性・価値基準の親和性』

過去に一般的な人間関係の特徴を『贈与-応答の原理』の視点から考えてみましたが、心理的な悩みの多くは『人間関係・コミュニケーションの問題』と関係しています。私たちがプライベートな人間関係(家族・恋人・友達)の親密度を推測する場合には以下のような基準があります。ここではプライベートな人間関係全般を取り扱うために、異性関係における性的な親密度は省略していますが、一般的に仲の良い信頼感のある家族(夫婦)、親密な上手くいっている恋人、親友と呼べるような友人であれば、以下の4つの基準のうち最低でも一つの項目には該当するはずです。

1.応答可能性……『自分の言葉・感情・考え・情報の発信』に対して、相手が一定時間内に応答してくれる頻度のことです。応答可能性は、『相手が自分とコミュニケーションを取りたいという欲求』や『他の行動選択肢と比べた場合の優先順位』を示唆する指標であり、広義には相手が自分のことをどれくらい優先的に認知しているかに関係します。

2.援助可能性……『自分の困窮・苦悩・問題・トラブル』に対して、相手が心理的・物理的(経済的)な援助行動をとってくれる頻度・内容のことです。援助可能性は、家族関係において特に重要なものであり、『自分の感情的・経済的リソース』を直接的に相手に配分する行為と言えます。援助可能性は通常は双方向的に作用しますので、お互いの信頼感や依存度の指標でもあります。

3.記憶・話題の共有性……過去の思い出や重要な体験、所属集団を共有しており、『お互いの記憶』の中で共有しあえる部分が多いということです。相手と過去の記憶がある程度重複することで『共有できる話題』が増えるという特徴があり、会わない期間が長くても実際に会えば自然に会話や共感を深められるということがあります。

4.価値観・世界観・趣味娯楽の親和性……是非善悪の判断基準や性格の好き嫌いなどに類似性・共通性があり、お互いの価値観を素直に承認し合いやすいことを意味します。価値観が完全に同一の他者というのは存在しませんが、『大まかな価値観(善悪分別)の志向性』が正反対だったり、『理想的と考える世界観・生活態度』に大きな食い違いがあったりするとプライベートで深い付き合いをすることが難しくなる傾向があります。言語的コミュニケーションとは別に一緒に活動することを楽しめる『趣味娯楽の親和性』があれば、人間関係を維持しやすい部分があります。


最も親密度が高く日常生活の中で接する機会が多いような相手であれば、上記の1~4の全ての項目に該当する割合が高くなると考えられますが、最も親密度が低く腐れ縁のような形で無理やりに付き合っているような相手であれば、上記の1~4の項目に該当する割合が低くなるでしょう。ここにおける対人関係の指標は接触頻度への依存度が高い『親密度(intimacy, familiar)』に軸足を置いていますので、普段は滅多に会わない(連絡しない)けれどお互いの人格・人生を深く認め合っているというような『人間関係における精神的・情緒的つながりの深度』については測定しきれない部分があります。このエントリーでは、身近なところにいたり連絡先を知っていたりして、連絡を取ろうと思えば取れるような人間関係を前提にして書いていきます。

家族・恋人・友達を含む人間関係全般に共通する親密度のベクトルとして、『頻度(接触・連絡)・援助(心理・物理)・満足(心理・物理)・価値観(生活・善悪)』という8つのベクトルを想定することができ、それらは二者関係においては概ね双方向的(相補的)なベクトルとして働きます。厳密には、非対称的な人間関係においては双方向性が若干崩れることがありますが、長期的に見ればどちらか一方だけに精神的・物理的負担が大きい関係は上手く維持することが難しいと言えます。

人間関係では一回もコミュニケーションをしない相手と親密な関係になることはまず想定できませんので、必ずどちらかが相手に何らかの働きかけ(連絡・発話・誘い)をすることになりますが、分かりやすい電話(メール)の連絡頻度で言えば『相手の応答可能性(電話に出る・メールを返信する)』が無くなれば人間関係は自然消滅せざるを得ません。また、特別な事故やトラブルに巻き込まれていないと想定すれば、親しい友人であっても何ヶ月、何年間も応答可能性が無いということは、ある程度人間関係を終わらせたいという意図(終わったら終わったでそれを受け容れる意図)が暗黙のうちに織り込まれているとも解釈できます。同居する家族の場合に、何ヶ月、何年間も応答可能性がないということは事件・事故以外では通常は考えられませんが、家出・失踪・不倫(蒸発)などの状況によっては家族であっても応答可能性が無くなるというケースは少なからずあるでしょう。

一般的な人間関係において『援助可能性』というのは『応答可能性』よりも強い親密度と負担感をイメージさせますが、大多数の対人関係(信頼関係)の基盤を支えるものは自分のメッセージに相手が何らかの反応を返してくれる『応答可能性』だということが出来ます。仲の良いカップルや親友で何回も連絡を取ろうとしているのに長期にわたって何の応答(反応)もないという状況が考えにくいように、応答可能性は『相手の存在を認知する』という極めて基本的でありながらも良好な対人関係に必須の要素を兼ね備えています。

また、プライベートな人間関係に限らず、企業・官庁・ビジネスマンなどにとっても『応答可能性(相手のメッセージに適切に応える行動)』『組織の信用・社会的評価』を形成する重要な要素であり、企業や官庁・担当者に問い合わせしようとしても全くつながらないという状態では顧客・国民の信任(評価)を得ることは難しいでしょう。質の高いカスタマーサポートやクレーム対応を実現するためには、まず『顧客からの問い合わせ』にできるだけ迅速かつ丁寧に応じるという応答可能性が大切であり、週に4日しか対応しないとか午後の限られた時間しか電話に出ないといった応答可能性が極端に小さいカスタマーサポートは顧客からの評価が低くなりやすくなります。

応答可能性には、単純な『頻度(回数)』だけではなくて『質(親切さ・丁寧さ・共感性)』の要素があり、応答可能性の質はそのまま『心理的な援助可能性』に相関していきます。全く知らない初対面の相手に対しては、応答可能性は『相手の好感度と興味関心』を反映しますが、その典型的な事例は、コンパやナンパ、懇親会(新入会)など初対面の男女関係でのやりとりに見ることができます。対人魅力や状況の緊急性、自己の必要性、対応の義務などによって応答可能性は上下しますが、対人魅力や社会経済的なインセンティブ(外的報酬)は『他者の呼びかけに対する応答』だけではなくて『自分からの積極的な呼びかけ』にも大きな影響を与えます。

対人緊張によって上手く自分の好意や関心をアピールできないというケースも考えなければなりませんが、一般的に人間は自分の気に入っている相手に対しては応答可能性が良くなり、愛想が良くなったり親切さの度合いが増したりします。仕事や勉強が忙しかったりしてなかなか外部(他者)からの呼びかけに応答できないという場合もありますが、応答可能性は双方の『相手の必要度・関心度・気持ちの余裕』を反映しやすい特徴を持ちます。『対人関係における応答可能性』と『対象喪失(親密な他者との別離)の悲哀反応』について、カウンセリング的な人間関係や作用機序の特殊性を元にしてまた記事を書いてみたいと思います。






■関連URI
“安全安心の欲求”-“所属の欲求”-“承認欲求”の相互的なつながりと他者に承認されない孤独感の認知

“制縛型の自己不確実者”と“敏感型の自己不確実者”の持つ不安感情と強迫症状の特徴

恋愛関係で重視される双方向的な感情の均衡と『来る者拒まず・去る者追わず』のコミュニケーション形態

好きな相手との関係を終わらせないために『相手から欲望される』ということ:双方向の“贈与”の反復

■書籍紹介

図解雑学 人間関係の心理学 (図解雑学シリーズ)
ナツメ社
斉藤 勇

ユーザレビュー:
致命的欠陥あり 非常 ...
コミュニケーションの ...
心理学の入門として人 ...
amazon.co.jpで買う
Amazonアソシエイト by ウェブリブログ


ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!

ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。

→ログインへ

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

気持玉数 : 3

なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー)
ガッツ(がんばれ!)

この記事へのトラックバック