仕事や勉強に対するモチベーション向上のポイントと経済的・心理的インセンティブ:仕事のやる気と人間関係

仕事で高いパフォーマンス(成果)を達成したり勉強で効率的な学習(知識習得)を続けていくためには、目標や課題(タスク)に対する『一定以上のモチベーション』を維持する必要があります。モチベーション(motivation)とは自分から進んでやりたいと意図する内発的動機づけのことであり、自発的で積極的なモチベーションが高く保たれることで仕事や勉強の効率性とパフォーマンスを上げることができます。反対に、どんな事柄をするにしても無理やりに嫌々ながらしようとすれば、仕事(作業)の『質』が低下したり十分な『量』をやり遂げることが出来なくなります。

人間のモチベーションは、一般的に『自分の好きなこと・得意なこと』に対して高まりやすく、『自分の嫌いなこと・苦手なこと』に対して低まりやすいという傾向があります。しかし、好きで得意なことでも突然やる気が出なくなったり、嫌いで苦手なことでも何かをきっかけにして挑戦意欲が湧き上がったりすることもあり、単純に個人的な好き嫌いや得手不得手によってモチベーションの高さが決定されるわけではありません。自分が現在取り組んでいる仕事や勉強をどのように認知して評価しているのかによって、モチベーションの強さは大きく左右されますが、どんなに退屈でつらい作業でも『今やっている事柄に対する自分なりの意味づけ』が実感できていれば一定のモチベーションを維持することができます。

『仕事・勉強・作業』というのは基本的には楽しいことや刺激的なことばかりではなく、やりたくないようなことや苦手で面白くないことも多くあるわけですが、日々繰り返すルーティンワーク(単純作業)も含めて高いモチベーションを確保するためには、『長期的・短期的な目的意識』『人生における方向感覚(行動の意味づけを得られる志向性)』を持つようにすると良いでしょう。そういった目的意識や方向感覚について考えなくても、自然に仕事や勉強に没頭して集中的に取り組めることもあるのですが、モチベーションや積極的な活動力が低下していると感じる時には、どんな内容や欲求でも良いので『自分なりの目的意識・目標水準・方向性(意味づけ)』を改めて設定し直して見ると気分を一新して日々の仕事に取り組みやすくなります。

目的意識を確認するときにはある程度『長期的スパン(数ヶ月以上~数年単位)』で考えてみて、『今の仕事や学習を何のためにやっているのか?仕事・勉強のやりがいや面白さをどういった部分で実感したいのか?』を明確化してみてください。どうしても仕事や勉強の内容そのものを好きになれないとかやるべき価値を見出せないということもあるかもしれませんが、その時には即物的に生活(給料アップ・就職転職)のために頑張っていきたいとか、心情的にプライベートや家庭生活(人間関係)を楽しむために努力していくといった目的意識でも良いと思います。目標水準を設定する場合には『短期~中期的スパン(数週間~数ヶ月単位)』で定量的に考えていきますが、『今の自分の能力・実績・収入プラスα』の数値を設定してみて、『努力したり工夫したりすれば実現可能な目標水準』を目安にするとやる気や達成感につながりやすくなります。

一般的には、成功体験を重ねるほどモチベーションは上がり、失敗経験を繰り返すほどモチベーションは下がるとされますが、自分の能力や実績と比較して『達成が簡単過ぎる目標水準』では単調作業に陥って退屈感や無意味感を感じやすくなります。その意味では、“失敗は成功の元(母)・試行錯誤すれば解決できる”というような体験を適度に積み重ねることも必要であり、『克服可能な問題状況・適切な難易度の課題(目標)』が与えられることによって、人間のモチベーションやチャレンジ精神は高まってきます。自分の現状よりもやや高いレベルの目標水準を掲げて、適度な緊張感と努力・工夫が必要となる課題(タスク)や交渉に取り組むことで人間が本来的に持つ成長欲求や好奇心が刺激されやすくなります。

目的意識や目標水準を設定することで、内発的動機づけとしてのモチベーションを高めるためには以下の4つのポイントが重要です。

1.自分がやりがいや好奇心を持って取り組める分野・課題を見出すこと。

2.自分にとって少しハイレベルな目標を達成して、達成感(充実感)を経験すること。

3.自分がしている仕事・勉強に自分なりの意味づけ(個人的・社会的・将来的な意味づけ)をすること。

4.企業・職場での人間関係における肯定的な要素(信頼・評価・思いやり)を見つめなおしてみること。


J.ワトソンやB.F.スキナーに代表される行動主義心理学では、オペラント条件づけ(道具的条件づけ)によって人間の行動の発現頻度が変化すると考えます。『報酬(insentive)』としての作用を持つ正の強化子を与えられればその行動を起こしやすくなり、『罰則(punishment)』としての作用を持つ負の強化子を与えられればその行動を起こしにくくなるという飴と鞭の論理ですが、モチベーションを高める『報酬』には『物理的(経済的)インセンティブ』『心理的(対人的)インセンティブ』とがあります。

『給与(昇給・減給・成果給)』『休暇(多い・少ない)』は物理的(経済的)インセンティブとして働き、『職場の人間関係(相談や思いやり)』『上司の評価・同僚の承認』は心理的(対人的)インセンティブとして働きます。心理的(対人的)インセンティブは内発的モチベーションを生み出す主な要因ですが、自分の仕事内容が好きだったり強い興味関心を持っている分野だったりすれば、自然に心理的報酬を得られてモチベーションが上がります。職場の人間関係が良好でストレスなく働きやすい環境が維持されており、上司-部下の情報伝達とコミュニケーション(意思疎通を介した相互理解)がスムーズに行われていれば、対人的インセンティブを得ることで相手・会社の期待に応えようとするモチベーションが高まります。

『給与・ポスト・休暇・福利厚生』といった物理的・経済的インセンティブを自分の努力や裁量で増やすことは困難なケースも多く、職場によっては固定給・年功序列賃金で貰える給料が決まっていることも多いですが、心理的・対人的インセンティブのほうは自分の認知(物事の考え方・解釈)や職場の人間関係やコミュニケーションの改善によってある程度コントロールすることが可能になります。そして、多くのサラリーマンや職業人は、飛躍的に経済的インセンティブ(収入・所得)を増やすことに“やる気・仕事の意味”を感じるというよりも、働きやすい職場の人間関係(気持ちよいコミュニケーション)や自分が他者に必要とされている感覚によって“やる気・仕事の意味”を感じることが多いようです。

大多数の仕事は成果のみに応じて給与が算定される完全歩合制ではなく、仕事の成果を単純に数量化することができない仕事も多いので、一生懸命に頑張って仕事をしたとしても20万円の給料が40万円になるような成果給は望むことは通常できません。そのため、過半の職場において、相対的な給与額のインセンティブよりも心理的・対人的モチベーションの重要性が高まっていると考えられます。経済的インセンティブにこだわるのであれば、平均所得の高い職業キャリアや生涯賃金の高い大企業を選択する時点で想定報酬額にこだわっていなければならないことが多いですし、実力主義の成果給を導入している会社にしても、安定した所得が得られず自分の成果が思うようにでなければ、極端にモチベーションが低下してやる気がなくなるというデメリットがあります。

物理的・経済的インセンティブは『短期的なプロジェクト・競争環境』などにおいて一時的にモチベーションをぐっと盛り上げる時に役立つことが多く、心理的・対人的インセンティブは『長期的な職業活動・協力状況』において安定的にモチベーションを一定以上に保つという働きをすることが多いのです。会社で上司(先輩)の部下(後輩)に対する主な仕事としては『仕事内容の指示と教育・仕事状況の勤怠管理と指導・能力や成果の評価』がありますが、部下の心理的・対人的インセンティブになっているものが何なのかを振り返ってみることで、部下のモチベーションを高めるための教育指導やコミュニケーションのやり方が分かってきます。

効果的な教育指導をするにあたって望ましい上司-部下の関係は、上司(先輩)と部下(後輩)との間に相互的な信頼関係が成立していて、上司・部下の双方が自分の意見や考えを相手に率直に述べられる雰囲気があることです。その為には、ミスをした場合に相手の人格や価値観を感情的に否定するのではなく、『達成すべき目標・今やるべき課題(タスク)・失敗やミスの内容・必要となる知識技術』にポイントを絞って改善すべき問題点や間違いを分かりやすく指摘すること、そして、問題(ミス)を指摘した後の継続的なフォローと改善された点の再評価が必要です。今の仕事状況において何ができていて何ができていないのかを明確化して、部下にこうして欲しいというポイントを具体的に指摘することが大切であり、ただ怒ったり否定するばかりで『改善すべき具体的な問題点・習得すべき有効なスキルや知識』に言及しなければ、相手からの信頼を失ったり職場の人間関係を悪くする苦手意識(嫌悪感)を持たれたりするだけの結果になってしまいます。

上司が部下に実績や人間性で尊敬されていて、目指すべき『ロールモデル(自分がなってみたい職業人の長所や魅力を備えたモデル)』としての役割を果たしているということが理想的ですが、ロールモデルになれないとしても、部下の能力や協調性を引き出す指示を出し相手のモチベーション向上のポイントを踏まえたコミュニケーションを行うことで、職場全体の人間関係を改善してパフォーマンスを高めるという上司としての仕事を果たすことにつながると考えられます。仕事に対するモチベーションの向上要因と低下要因は人それぞれ違いますが、基本的には上記した『物理的・経済的インセンティブ』『心理的・対人的インセンティブ』の二つの報酬類型によってやる気や仕事のやりがいが規定されてきます。

1.適職・適性の認知……自分のやっている仕事や業務が好きか、好きでなくても働いている間に好きになれそうな感じがあるか。自分の能力や性格と仕事内容がフィットしているか、あるいは、仕事・職務に自分の能力・興味・性格を合わせていこうとする意志を持てるか。

2.職場の人間関係……職場の良好な人間関係(コミュニケーション環境)があり、対人的なストレスや不快感を感じることが少ないかどうか。モラルハラスメントやセクシャルハラスメントのような問題がなく、相互的な信頼関係が成り立っているか。相手の立場や感情に配慮した適切なコミュニケーションがあり、メンバーが協調性や責任意識を持って仕事に取り組んでいるか。

3.他者からの期待・評価・感謝……会社や上司から『自分の仕事・能力』に対する適度なレベルの期待があり、その期待に応えた時には公正な評価を受けることができるか。昇進昇級や人事考課における会社(上司)の評価が妥当なものであるか。顧客や同僚の感謝(喜び)の気持ちを感じてやる気を高めることができるか。

4.業務の目標達成……モチベーションを高めるための仕事に対する目的意識や目標水準の設定ができているかどうか。設定した目標水準の内容や数値を実際に達成できているか否か。

5.スペシャリストとしての能力・知識・役割……特定分野のスペシャリスト(専門家)として働きたいとする意向があり、その意向を現在の職場で満たせているかどうか。スペシャリストになるための知識・技術・能力・実務経験を習得できているか、専門分野の理解度を深めてプロジェクトの主導権を得られているか。

6.プライベート志向……ワークライフバランスの時間配分と一日の労働時間をどのように考えているのか、仕事とプライベートの望ましい比率が今の仕事で実現できているかどうか。プライベートの時間や家族・友人と過ごす時間を、仕事の時間に対してどれくらい優先的に考えているか。

心理的・対人的インセンティブとしての役割を果たす要素には上記の6つがあるので、自分や部下のモチベーションに大きな影響を与えていると予測される項目を分析してみて、『やる気を引き出すような働き方・職場環境・雇用条件・コミュニケーション』をそれぞれの立場の中で工夫してみて下さい。仕事の意味の実感や自分の能力(人間性)の成長、ワークライフバランスが、それらの心理的インセンティブと効果的に結びついた時に仕事に対するモチベーションは最も高くなってきます。






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