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zoom RSS ウェブ時代における知的生産技術の進歩とツールとしてのブログの利用価値

<<   作成日時 : 2008/05/12 14:57   >>

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梅田望夫さんのブログで『グーグルに淘汰されない知的生産術』という記事が公開されていたので、『ウェブ時代の情報整理&知的生活』について少し考えてみたいと思います。インターネットを介在してあらゆる情報にアクセスできる『ウェブの普及』は、ウェブサイト(WWWに公開されたコンテンツ)にアクセス可能な『情報端末の進歩』によって私たちの知的生活の基本条件を大きく変化させました。

インターネットが登場して間もない時期には、パソコンを利用して従量制のダイヤルアップでウェブ(WWW)に接続していましたが、テレホーダイを利用して夜間の2〜3時間だけ趣味的にウェブサイトを閲覧していた時代には、ウェブによる知的生活の変化というのは殆ど無かったと思います。『ウェブの効果的活用』によって個人の知的生活の基本条件が変化するには、少なくとも『常時接続のブロードバンド・コンテンツの分量の増大・個人が情報発信(情報管理)できるツール・コンテンツの迅速な検索可能性』の4点が必要になります。しかし、Yahoo!のディレクトリ検索で『(Yahoo!スタッフが選んだ)少数のサイト』をぼちぼちと閲覧していたダイヤルアップの時代から10年も待たずして、『ウェブの潜在力』がグローバルな知的環境を劇的に変化させる条件が急速に揃ってしまいました。

現在では、ブロードバンド(高速回線)の光ファイバーとADSLでウェブにアクセスするのが当たり前になっており、『24時間の常時接続環境』によってウェブが自然に生活の一部として溶け込むようになりました。常時接続のブロードバンド環境の一般化により、いつでもウェブを介在した『情報のインプット&アウトプット』が実行できるようになったわけです。情報端末の種類もデスクトップから持ち運び可能なノートパソコン(最近ではウルトラモバイルPC)への移行が進み、ここ数年で日本の全世代に携帯電話(ケータイ)を使ったユビキタスなモバイル環境が普及しつつあります。知的生産の基盤となる情報の検索と必要な情報のインプットに関して言えば、モバイル環境によって『今いる場所』を問わずにどこからでもウェブにアクセスできるようになりました。

ウェブが知的生活の基本条件を変化させるための『コンテンツの分量の増大・個人が情報発信(情報管理)できるツール・コンテンツの迅速な検索可能性』の要因も、Googleの検索エンジンとブログ・SNSの登場によってあっという間に整備されました。一部には『ブログの時代は既に終わった・ブログが面白くなくなった』というようなネガティブな評価もありますが、ブログ(CMS)というのは『コンテンツを簡単に公開するためのシステム』に過ぎず、ブログというアウトプット(個の知性の出力)のためのツールが終わったとか終わらないとかいうのはナンセンスな議論ではないかと思います。

ブログの各コンテンツが面白いか面白くないか、役に立つか役に立たないかという個別の判断は重要だと思いますが、数千万以上のブログ全体を一くくりにして価値が無いと切り捨てても、『書きたいという人の供給・読みたいという人の需要・需給一致による知の共有と満足感』がある限りはブログは終わらないでしょう。ブログ全体で読む価値の低い『石(ノイズ)』の比率が大きいといっても、読む価値のある『玉(シグナル)』が作成され続けている限りは、検索エンジンやRSSリーダ、SBM(ソーシャル・ブックマーク)によって自分が時間を投資しても読みたいと思えるブログを探し出すことができます。

ブログの読み手は情報の取捨選択をしながら読むわけですが、『どのブログを読むか・どの個別コンテンツを読むか・どれくらいのスピード(丁寧さ)で読むか・どのブログを読むのをやめるか』によって自分の時間資源の消費を微調整していくことができます。毎日同じ分量のブログ記事やウェブのコンテンツを読む必要性などは全くなく、自分の現実の仕事の進捗やスケジュールの都合に合わせて『その日に読むコンテンツの分量と読解の丁寧さ』を調整すればいいわけです。知的生活を実現するためのインプット面では『読みたい書籍(本)の分量・読みたいウェブコンテンツの分量・話したい相手と話す時間・直接的経験をするための時間』のバランスが重要になってきますが、読むスピードと知識(体験)を吸収する速度には個人差がありますので、『各インプットに費やせる時間』を大まかに区切っておくと良いのではないかと思います。

梅田さんのブログの以下の記述を読むと、ブログというツールの利用価値には少なくとも大きな二つのベクトルがあることが分かります。



書き出す先は、非公開設定にしているグループウェア上のブログです(長い引用をした場合、著作権の問題も発生するので、公開していません)。こうしてウェブ上のプライベートな空間に、精選・凝縮した情報を集めることで、脳の外部記憶装置の役目を持たせています。ウェブ上にあるので、その後の検索や閲覧、管理も容易ですし、研究や仕事の仲間との共有も簡単です。



ツールとしてのブログは公開を前提とする『情報発信(個人メディア)のベクトル』と私的利用(プライベートな活用)を前提とする『情報管理(情報整理)のベクトル』とがあり、自分以外の他の人が読まない非公開のブログでも『自分が精選した情報・知識』をブログというCMSにまとめて蓄積しておけばブログの利用価値は極めて高いものとなるのです。公開を前提とする『情報発信(個人メディア)のベクトル』では自分の意見や情報を不特定多数に向けて発信して、できるだけ多くの人に読んでもらうことが目的となります。『情報発信のベクトル』だけでは誰にも読まれないブログというのは利用価値が殆どなくなってしまいますが、それはブログに書かれた情報・記録を自分が再利用しようという計画が無かったためです。

私的利用を前提とする『情報管理(情報整理)のベクトル』では上記引用した梅田さんの利用法のように、自分が必要とする『情報のエッセンス・読書体験の記録』などを蓄積(ストック)することで脳の外部記憶装置の役目をブログに担わせることができます。自分の日々の読書・研究・対話の経験をすべて脳器官に遺漏なく記憶させることは基本的に不可能ですが、自分が再利用する可能性が高い『読書・研究・対話のエッセンスとデータ』をブログにアウトプットして蓄積しておけば、後々になって自分の有用な知の蓄積を解凍して再利用することができます。私的利用を前提とする『情報管理(情報整理)のベクトル』はブログ以外のツールでも実現可能ですが、ウェブにアップロードすることによって『知のストックの共有可能性』という付加価値が生まれます。自分のオリジナル・コンテンツを含めない書籍・雑誌からの引用と資料のストックが主体のブログの場合には、梅田さんのように非公開のメンバーを限定したグループウェアなどで『知のストックの共有可能性』を高めることができます。

私は『情報管理・情報整理のベクトル』でも大きな力を発揮するブログという情報発信ツールが完全に無くなることは今後も無いと思いますが、『一回ごとの更新(公開)のためのコスト』を考えるとHTML(XHTML)+CSSでウェブサイトを構築するやり方がブログに代わって復権することも考えにくいでしょう。Googleの検索エンジンは現在ではウェブでもローカル(Google デスクトップ)でも利用可能ですから、『自分の好きな場所(ウェブ・デスクトップ)』にある程度まとまった形で自分の必要な情報をストックしておけば、いつでもキーワード検索で即座に『外部記憶の再生(解凍)』ができるわけです。ウェブ時代が知的生産行為にもたらした最大の恩恵の一つが、『過去の知識や記憶の在り処』を検索エンジンのクエリ(要求)で指示することができるようになったことであり、自分の脳のスペックを『創造的思考(知と知の組み合わせ)・論理的記述(過去の知見のストックに基づく文章考案)』に集中させやすくなったことだと思います。次の記事では、ウェブを活用した知的生活の条件と知的生産の意味についてもう少し考えてみます。






■関連URI
梅田望夫『ウェブ時代 5つの定理』の書評2:若者を応援する大人の流儀とインターネット

ウェブ上のコンテンツを閲覧(活用)される喜びとブログの情報価値のストック化

“ブログの継続的な更新”と“ブログの長期的な存続”を支えるもの

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私塾のすすめ ─ここから創造が生まれる (ちくま新書 (723))
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