重松清『ビタミンF』の書評:家庭生活に疲弊し倦怠した人のビタミン剤としての短編集

2001年の直木賞を受賞した重松清の『ビタミンF』という小説を読んで心地よい読後感を得ると同時に、結婚や育児という選択と共に失われていく時と取り戻せない関係の切なさのようなものを感じた。 しかし、『ビタミンF』に収載された重松清の作品群はその結末において、『中年の危機』は必ず乗り越えられるという希望を示す。 『この人生以外の…
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『心の世界の魅力的な物語性』と『心の世界の客観的な解明』:心理学の科学性の社会的認知

前回の記事に書いた心理学的アプローチの効果測定に関する技術的な問題とは別に、臨床心理学のEBM化と逆行する『心(魂)の領域を特別視する人間心理』も、実証科学を目指す心理学の流れに対する防波堤となっている面があります。 心の領域を特別視する場合に人は、科学的な精神現象の解明に対して一般的に無関心になりやすくなり、化学物質で精神状態を…
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ホリエモンの『時価総額世界一の夢』の挫折とライブドア事件への雑感:2

いずれにしてもホリエモンの夢である『世界一の時価総額を持つ企業を作り上げる夢』は、この逮捕によってとりあえず終焉してしまったと見ていいのだろう。もしかしたら、違うビジネスで再起を図ってくるかもしれないが、ライブドアグループの社長として華々しい舞台に復帰することはもうないだろう。 あるいは、ライブドアの崩壊とホリエモンの挫折は、グレ…
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ホリエモンの『時価総額世界一の夢』の挫折とライブドア事件への雑感:1

1月16日に、六本木ヒルズにあるライブドア本社と堀江貴文社長の自宅に東京地検特捜部の強制捜査が入ったわけだが、僅か一週間後の23日に、堀江氏をはじめとするライブドアの4人の取締役が地検に逮捕された。 連日テレビや新聞で、ライブドアの証券取引法違反の疑惑とライブドアショックと呼ばれる株式市場の下落が報じられて気になってはいたが、なかなか…
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科学的実証主義を前提とするEvidence-Basedな臨床心理学と統計学的な根拠に関する話

認知行動療法は、認知的介入と行動的介入を折衷したプラグマティック(実利的)な技法であり、evidence-based(客観的根拠に基づく)な心理療法であると言われます。 エビデンスに基づく心理療法(カウンセリング)というのは、EBM(Evidence Based Medicine:根拠に基づく医療)という科学的医学モデルを心理学的アプ…
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『人格障害の分類と定義』が持つ臨床的意義と倫理的問題:多角的で相対的な人格評価の重要性

前回の記事では、クラスターB(強い衝動性や自己愛を持ち、対人関係の困難や反社会的行為を伴いやすい群)に分類される境界性人格障害の症状と自傷癖の問題を概述しました。 クラスターBの人格障害以外にも、共通了解が困難な奇異な振る舞いや妄想的な言動を繰り返して対人関係から撤退するクラスターAの人格障害、強い社会不安や強迫行為を示し、環境へ…
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『自己否定的な衝動性の行動化である自傷行為』とそれが持つ心理学的意味

前回の記事の続きで、境界性人格障害(BPD)などで起きやすい自傷行為についてもう少し深く掘り下げ、自傷行為が暗黙裡に突きつけてくる『心理学的な意味』について分析してみたいと思います。 しつこく相手を追い掛け回すと反対に相手が距離を取って離れていくという現象は、日常的によく見られるものです。皮肉なことに、人間というものは『何があって…
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境界性人格障害(BPD)という自他の関係性の障害:トラウマによる自己否定的な認知と自傷行為の嗜癖性

境界性人格障害の全ての事例が、過去の幼少期における外傷体験や喪失体験に原因を持っているわけではありませんが、『対人関係にまつわる情緒不安定性(感情易変性)』と『衝動性の制御困難』という症状が神経症水準を明らかに超えている場合には、心的外傷(トラウマ)や生物学的な内因が考えられます。 人格障害全般に薬物療法はあまり奏効しませんので、…
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三島由紀夫『春の雪』『奔馬』の書評

前回の記事で、三島由紀夫の『豊饒の海』の各作品を架橋する超越的な古代インドの宗教理念である輪廻転生について説明しました。 『春の雪』と『奔馬』の登場人物である松枝清顕と飯沼勲が輪廻転生の円環によってつながっているという本多繁邦の直感の中で、悲劇的な物語は淡々と流れていきます。 幼児期に公家の家に預けられ、京都の貴族的な文化風…
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三島由紀夫の『豊饒の海』の通奏低音として機能する輪廻転生について

左翼系学生運動が過激さを増す1970年、三島由紀夫(本名:平岡公威)は、陸上自衛隊の市ヶ谷駐屯地で自衛隊に愛国心に基づく決起を促した。しかし、その自立的な民族防衛と天皇中心の国体復帰を志向する先鋭なナショナリズムの目的は挫折し、彼の理想的な死の形式である割腹自殺によって三島は自決した。 三島由紀夫が晩年にその文学的才能の心血と自ら…
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自立心と依存心の葛藤によって表出する思春期~青年期の『家庭内暴力・怒りの感情』の問題

前回、『個別的な多様性を見せるトラウマの影響』という記事を書き、トラウマとなる外傷体験の個別的な心身への悪影響と、性的逸脱など自傷的な意味合いを持つ行動の心因について考えて見ました。 反社会的な粗暴行為や逸脱集団での非行、家庭内暴力については、トラウマやアダルト・チルドレンと完全に無関係とは言えませんが、どちらかといえば発達心理学…
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大江健三郎『個人的な体験』の書評

1994年にノーベル文学賞を受賞した大江健三郎だが、彼の小説家としての評価には、平和主義と護憲を根幹に置く政治的主張と合わせて毀誉褒貶がある。 文筆を生業とする小説家ではあるが、文筆を左派的なイデオロギーと結びつける思想家としての側面も持っているのが大江健三郎である。 戦後民主主義者を自称し、例外無き平和主義を主張し、国家による…
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確定記述の束に還元し切れない「余剰」を内包する固有名:言語による世界(存在)の写像

伝統的な哲学では、ルネ・デカルトが事物の本質を『延長』と『精神』の2つの属性で表現したように、事物の存在は属性なくして成立せず、『存在(固有名詞)を成り立たせる全ての属性の集合』が存在(固有名詞)であるとされる。 しかし、『固有名詞(存在)の特徴・性質・属性』を一つ一つ余すところなく列挙したとして、それが固有名詞(存在)そのものに…
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『社会的認知のある属性による人物評価』と『個別的な人間関係による人物評価』

前回書いた記事『客観的分析を志向したキャッテルの特性因子論』ですが、私は冒頭で人格を『特性(属性)の束』として解釈する理論的立場について触れました。 キャッテルの特性因子論に関する記事を書く前に『Zopeジャンキー日記』 の『私は属性を信じない 私が信じるのは固有名詞だ』という記事を読んでいたのですが、『性格心理学における特性の束』と…
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客観的分析を志向したキャッテルの特性因子論:量的な性格理解の有効性とその限界

心理学では、人格(personality)を『特性(属性)の束』として解釈する特性因子論のような立場があるが、その一方で人格を複数の有限の因子に還元し切ってしまうことの危険性を示唆するソフィスティケイトな存在の固有性を重視する立場もある。 特性因子論による因子分析そのものは特別な人格理解の手法というわけではなく、個人の人格の特性を…
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謹賀新年:年賀状の送り主に見る知人関係の今昔と2006年のブログ更新に関するメモ

あけましておめでとうございます。 十数年ほど前の正月の三が日と現在の正月とは全く趣きが異なってきたなと感じますが、理由の一つが手書きによる年賀状が少なくなったことのように思います。 ある程度年配の方は今でも手書きで一枚一枚丁寧に書き上げて年賀状を旧知の方々へ送るのでしょうけど、パソコンを使える世代になってくると複合プリンタ機と年…
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