少子化社会の不確定なジェンダーと核家族の子育て:2

ここで、育児や心身発達に関する全般的な説明や助言をすることなどは出来ませんが、子どもの心身の成長に関する発達心理学的なポイントと、神経心理学的・生物学的な原因から生じる問題への対処も含めて幾つか実践的な育児方法について私見を述べてみます。

子どもの精神発達に関しては、子どもの認知獲得過程を重視しながら『情動・感情・行動のコントロールによる安定した精神状態を基盤にした人格形成』『基本的な社会のルールの理解と獲得』『知能発達と学習能力の向上による環境適応』などを一応の課題に据えて書きます。



1.基本的安心感に基づく『世界・自己・他者への肯定的認知』を育む

父親と母親が、子どもへの無条件の愛情や関心を向けて、一緒に触れ合い遊んであげることで、子どもが家庭に居る時には安心感と落ち着きを感じられるようにする。
無力で未熟な乳幼児の段階では全面的な世話と保護を必要としているが、いつまでも過保護に全ての面倒や保護をする必要はない。
子どもが2~3歳くらいになり一人で行動したい素振りを見せた時には、あまりいろいろな手出しや補助をせずに、とりあえず子どもの自律性を尊重して陰で見守るほうがよい。
子どもが何度チャレンジしてもやりたいことがなかなか出来ないときには、手伝ってあげたり、優しくアドバイスしてあげるようにして、『頑張っても出来ないときは助けてくれる他者がいること』を伝えるようにする。
一人で色々なことが出来るようにバックアップしてあげると、心理的な母親との分離不安をうまく克服しやすいし、それが将来的な自立の基盤にもなる。

夫婦喧嘩や口汚い罵りあいなどを子どもの前で見せない、他人の悪口や個人的な愚痴を家庭内に多く持ち込まないようにする。
社会や世界を根底から否定するような思想や社会・世間を憎悪するような考えを子どもに過度に吹き込むことは、世界への肯定感を損なう恐れがある。

政治経済に関する客観的な情報や知識を与えることは良い学習活動になるが、一方的に、反社会的(現状否定的)な信念を子どもに押し付けるのは、子どもの世界観形成を歪曲するかもしれない。
『世界・自己・他者への否定的認知』を子どもに教育するような言動をとっていないか注意するようにする。
それらを否定的に捉えすぎることは、『この世界は基本的に間違っていて、自分の安心できる居場所はない』という孤立感や抑うつ感を強め、行き過ぎた批判家や皮肉屋になったり、抑うつ気分を感じ易いニヒリスティックなパーソナリティを形成したりする。
性善説などを説く必要はないが、この世界の魅力や面白さを伝えてあげることは大切である。
『世界・自己・他者への肯定的認知』は、絶望や憂鬱と拮抗する考えであり、『健康・幸福・努力を促進する前提となる認識』なので意外に大切なものである。



2.子どもが帰れる場所としての家庭の維持・自分の存在を実感できるアイデンティティの基礎を形成する

小学生の段階までは、子どもにとっての世界は大きく分けて学校と家庭しか存在しないのだから、家庭を安全基地(ホームベース)として整備し、学校環境にもうまく適応できるように両親は物心両面で援助してあげることが重要となる。
学校環境への不適応の問題として、不登校・登校拒否・非行・犯罪・学業不振などが代表的なものとしてあるが、それらの不適応問題に対処する場合にも、親子関係が良好であり家庭が安らぎの空間であれば、親・子・先生・クラスメイトで学校での問題を真摯に話し合う雰囲気ができやすい。更に、子どもの精神的な健康を大きく損なうことが少ない。

その他にも、種々の学習障害(LD)やADHDなどの生物学的素因の関与する問題があるが、その場合には無理に強制して登校を促すのではなく、まず、子どもの心理的問題や人間関係の葛藤をしっかりと聴いて、親や家族はいつでも子どもの味方であり、どんな支援や手助けも惜しまないことを伝えてあげるとよい。

自分の存在を受け容れて、人生を価値あるものと認識するためには、適切なアイデンティティを子どもなりに獲得できることが望ましい。
大人のアイデンティティにも社会的な自己認識は必要だが、抽象的な思考能力や論理的な世界把握が十分に発達していない子どもにとっても社会的アイデンティティは必要なものである。
家族の一員としてのアイデンティティから子どものアイデンティティは漸次的に所属集団に応じて変化していく。

成長過程に合わせて、出来るだけ多くの様々な特徴を持つ友達・隣人・集団・組織・趣味・分野に触れ合って体験することで、自分にぴったりとするグループ・集団・趣味への帰属感をアイデンティティとして持つことが出来るようになる。

『排他的な集団や仲間への帰属心』は、自分と価値観や目的の合わない者への攻撃性や排除欲求を高める事もあってあまり望ましいものではないが、『人間存在の孤独感や空虚感を補償する役割を果たす帰属感』は、社会的アイデンティティの本質である。
この世界は独我論的に閉じているのではなく、他者の存在へと開かれているという意識を持つことはとても大切なことである。
他者と一緒に、この世界を協力し合って支えあい作り上げているのだという実感は、適正な現実感覚を培うことに非常に貢献する。

つまりは、子どもに、自分があらゆるものと様々な関係性や感受性や目的によって相互的にリンクしあっているという感覚を持たせることで、『結びつき・助け合いの世界観』を持たせることができるということである。

(通常の心理的問題としては説明がつかず、常識の範囲内を超えた過度の不適応や残虐性・攻撃性の問題がある場合には、医学的な対応が求められることもある。
つまり、一般的な対話による共感的な話し合いや教育では全く効果が見られない場合には、生物学的な原因や異常が存在することがある。
医学的検査を受けて、脳神経科学的障害や生理学的異常が比較的重度である場合には、その障害の解決に向けて医療・生活技能訓練などの専門的アプローチを取ることが必要となるかもしれない。)



3.家庭内の基本的ルールを決めて、みんなでそのルールについて話し合い守ろう

家庭内で子どもの躾や親の模範的な態度につながる基本的ルールをみんなで話し合って決めてみよう。
そのルールは、その家族だけにしか通用しないようなあまりに特殊で偏ったものであってはならない。
社会常識や道徳規範から大きく逸脱しない、過度に厳しすぎたり体罰を伴ったりしない、あまりに無意味な内容でないルールを作って、子どもも納得してそのルールを守る事が正当であると思えるルールが望ましい。

『朝ごはんでも晩御飯でもいいが、家族一緒に食事をとる。』
『食べ終わった食器は、各自で洗うようにする。』
『お菓子やデザートは、決められた時間だけに食べるようにする。』
『自分の部屋は自分で責任をもって一週間に一回は掃除する。』
『眠る前に、一日の出来事や悩みについてそれぞれ話をする。』
『テレビゲームやインターネットは、一日2時間までしかしない。』
『親も子どもも暴れて意思表示せずに、きちんと怒っている理由を言葉で話すようにする。』
『お風呂洗いや朝のゴミだしはみんなで交代で行うようにする。』
『食事時間は、携帯電話で話したりメールしたりしないようにする。』

など適当に上げてみたが、自分の家庭で必要と思うルールで、みんなが話し合いの結果、それを守ることに同意すればそのルールをとりあえず守ってみる努力をしてみよう。
公平にみんなに適用されるルールを遵守すること、首尾一貫した継続性のあるルールは個人の都合に優先することなどは集団生活への適応を高め、基本的な社会性を養うことに役立つことが多い。
もちろん、あまりに無意味な内容のルールを強制したり、恐怖や怒りを誘発するような罰則を与えるようなことは子どもの発達に悪い影響を与え逆効果である。



4.学習行動を尊重し、正しい言葉の習得を手助けしよう

自分の知らない事柄を学び覚える『知識を得る楽しみ』、自分の力で問題を解決して正しい答えを導き出す『学習による達成感』、学校の勉強が現実の社会でどのような形で生かされるのか『知識の実践性』などについて親が子どもにわかりやすく教えて、学習行動を軽視せずに尊重する態度を示そう。
子どもは良く『何故、勉強しなくちゃいけないの?』という疑問を口に出すが、その質問には子どもの発達年齢や社会理解に応じて適切な答えを返すことで、子どもの学習意欲を高める工夫をしよう。

世界や人間や社会について未知の事柄を知る事の学習の楽しみや学習の成果を利用して他者とコミュニケーションする面白さを子どもに教えてあげることによって、勉強を強制されている感覚から自発的に勉強するような気持ちへと転換する試みをいつもしてみよう。
学習行動の基本は、『正しい言葉の習得』にある。特に小さな子どもは、いろいろな言葉や概念や動物について意味や特徴を聞いてくるものなので、その時にいい加減な返事をせずに国語辞典や百科事典を子どもと一緒に開いてみる習慣をつけるとよい。
子どもと一緒に言葉や概念の勉強を楽しくしながら、辞書で調べた言葉の類義語や対義語などもまとめて調べてみると、子どもは言葉の世界の有機的なつながりの不思議について想像力を働かせ易くなる。
絵入りの動物図鑑などは見ているだけでも楽しいものだが、難しい動物の生態や特徴に関する説明を子どもにわかりやすく親が伝えてあげると、自然界への興味をもちやすくなる。

学習の基本は、自分自身が抱いた疑問や不思議に答えることにある。子どもが『これは何?これはどういう意味?これは何故こんな風になってるの?』という自発的な質問や疑問を大切にしてあげて、一緒になって子どもの疑問に対する答えを考えてみよう。そして、疑問に対する答えがわかったときには、一緒になってその未知の解明に対する興奮や感動を共有するようにするとよい。



5.運動や体験を思いっきり楽しませてあげる

教科書や参考書を用いた学習活動も大切だが、室内にいるだけでは身体や精神の健康な発達が十分に行われない。
勉強のストレスや学校での拘束のストレス、友達関係の悩みなどで疲労した脳にとっても、適度な運動をすることによる心地良い神経刺激は、気分のリフレッシュと再活性化による能力向上に役立つ。
特に短気で怒りっぽく、すぐに暴力や攻撃行動で問題を解決しようとする子どもや集中力が持続せず注意散漫で気分の波の激しい子どもなどは、自分の好きなスポーツや体を使った遊びを思いっきり楽しませるとよい。

破壊的な攻撃欲求や多動的な運動欲求を、他人に迷惑をかけずに昇華する方法としても、スポーツや運動はとても効果的である。
精神的ストレスの発散という意味以外にも、子ども同士で体を動かして遊ぶことには、集団生活の基本的な仕組みや友達関係の大切さを体験を通して学ぶという非常に大切な役割があるのである。

一人で気持ちを集中してコツコツと頑張る勉強も大切なことだが、自然な共感や友情を感じられる友達関係を作り上げることも大切なことである。
お互いの感情や考えを取り交わすコミュニケーションは多種多様な人間関係の基本である。
幅広い人間関係の経験をすることによって、授業や読書といった勉強では得られない『他者と経験・知識・情報を共有する感動』を得ることができる。

人間は、基本的に社会環境で他者と様々な形態の関係を持ちながら生活していかなければならない存在だから、子ども自身が将来の社会生活をうまく営んでいく為にも対人関係の経験と技術は必要なものである。



6.学習に関して相対的な比較や評価を控えるようにする

小学生~中学生の年代の子どもたちは、友達との相対的な比較・競争に対して非常に敏感で、本人が勉強の成績を気にしていないような素振りを取っていても、親から他の友達よりも勉強能力を低く評価されたり、成績が悪いことを非難されたりすると自尊心や自己肯定感が傷つけられる。
こういった心理的な罰としての効果を持つ『負の強化』は通常、学習意欲や知的好奇心を高めずに、逆に低める働きをする。

他の子と比べて優秀であるかどうかという相対的な競争にこだわって学習をさせるのではなく、自分の子どもの努力や頑張りの成果を積極的に認めて上げることで無用な劣等感や自己嫌悪を抱かせないようにすることが大切である。
また、どんなに優秀で頭脳の回転が速い子どもでも、成績には必ず波があるということ、人間の知的能力は機械的にいつも同じ機能を発揮できるわけではないことを理解することが必要である。
いつも良い成績をとっている子どもが、偶然本人も納得できない悪い点数をとったとしても、その事についてくどくどとお説教をしたり、精神論で気合を入れる必要はない。
元々、勉強を頑張っていた子がたまたま少し悪い成績を取った場合に、その事で一番悔しさや無念さを感じているのは子ども自身なのだから、それ以上追い込むような言葉をかけるのは逆効果である。
その時に、特別な生活習慣の乱れや友人関係の変化が見られない場合には、終わったことは終わったこととして、次のテストに対する意欲を高める方向でさりげなく応援してあげるようにするとよいだろう。
また、子どもの知性や能力は、実に幅広い多様性を備えたものであり、単純に学校のテスト結果のみを指標として『頭がよい・頭が悪い』と二分法で語れるものではない。
そのことを親自身が認識して、自分の子どもの短所ばかりに目を向けずに、人格・性格・人間関係・運動能力・趣味への集中などにも注目して長所を探そうとする姿勢をもつようにしよう。

中学生までの性格形成に歪みを起こす要因の多くは、『環境への不適応感・友達に対する劣等感や嫉妬・将来への希望の喪失・仲間からの疎外感(仲間外れ)・自己否定や自己卑下といった自尊心の損傷』であると考えられるので、勉強に限らずあらゆる面で子ども達がそういった感情を抱き難いようなコミュニケーションや教育をしていくことが望ましい。

職業選択などの段階で、現実を直視する場合には、往々にして他者との相対的な比較から劣等感を抱き易いが、そういった劣等感をその相手とは違う分野や領域で補償できるような自我の強さや視野の広さを身に付けることによって対応できる。

また、世の中の仕組みが、経済的な成功や社会的な地位によって人間を評価するようになっているという『他者からの社会的評価によって自己の意味づけ』をする基本的態度を改め、恋愛・結婚・家庭・趣味・学問・教養・娯楽など『自分の人生の経験や認識を豊かにして幸福を実感することによって自己の意味づけ』を図っていく基本的態度へと変容することも場合によっては必要であろう。


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