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みんなの「小説・ミステリー」ブログ

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村上春樹『騎士団長殺し 第1部 顕れるイデア編』の感想:3
村上春樹『騎士団長殺し 第1部 顕れるイデア編』の感想:3 免色渉の肖像画を描きあげていくプロセスで、私と免色は次第に個人的にも親しみを感じ合うようになり、それぞれの人生・感性・考え方についての知的なコミュニケーションを繰り返していくのだが、その会話の言葉一つ一つもなかなか示唆的で含蓄がある。 ...続きを見る

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2017/04/13 20:42
村上春樹『騎士団長殺し 第1部 顕れるイデア編』の感想:2
村上春樹『騎士団長殺し 第1部 顕れるイデア編』の感想:2 約6年のユズとの結婚生活が終わろうとしていた私は、精神的に非常に不安定な部分があり、端的には『この先どのように生きていけば良いのか・何を目指して生きていけば良いのか』という方向感覚を喪失していて、そのつらさを意識化しないために世俗から離れた山奥の家に暮らして、宛てのない『車の一人旅・自由な芸術創作・刹那の性的関係』にのめり込んだ所があるようにも思えた。 ...続きを見る

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2017/04/13 20:40
村上春樹『騎士団長殺し 第1部 顕れるイデア編』の感想:1
村上春樹『騎士団長殺し 第1部 顕れるイデア編』の感想:1 現代人の孤独と自由、特にセンシティブな中年男性の孤独を感じさせる作品だ。未読なのだが村上春樹の作品に『女のいない男たち』があるが、この『騎士団長殺し』もまた『女のいない男たちの物語』として読める。基本的に男性の目線から見た『社会にスムーズに適応できないこだわりのある人生の型』であり、『結婚・夫婦の枠組みに収まれない男の孤独・奔放な性・潜在するミソジニー』でもある。 ...続きを見る

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2017/04/13 20:38
宮部みゆき『ソロモンの偽証 第T部 事件,上下』の感想
宮部みゆき『ソロモンの偽証 第T部 事件,上下』の感想 宮部みゆきの『ソロモンの偽証』のハードカバーが出版された時に気になっていたが、あまりに分厚くて読むのに相当な時間がかかりそうだったので読まずにいた。文庫版が全6巻で完結したので、一冊一冊マイペースで読み進めていきたいと思っている。 ...続きを見る

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2014/12/12 09:05
貴志祐介『雀蜂(スズメバチ)』の感想
貴志祐介『雀蜂(スズメバチ)』の感想 貴志祐介のミステリーでは、『新世界より』や『天使の囀り』といった重厚な物語の構成(プロット)があって、意外な視点から各テーマの探求・解釈をしてくれるような作品が好きだが、本書『雀蜂(スズメバチ)』は短編の感覚で気軽に読むことができるライトなホラーサスペンスに仕上げられている。 ...続きを見る

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2014/12/12 05:06
村上春樹『1Q84 BOOK3<10月‐12月>』の書評2:現代の神話的構成と救済のラブロマンス
村上春樹『1Q84 BOOK3<10月‐12月>』の書評2:現代の神話的構成と救済のラブロマンス 村上春樹の小説全般にその傾向があるのだが、青豆も天吾も『標準的な成育歴・家庭生活(親子関係)・職業活動・社会適応』からは遠いイメージのある登場人物で、実在する人物というよりは象徴的なイコンのようにも感じられる。 ...続きを見る

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2014/03/08 09:38
村上春樹『1Q84 BOOK3<10月‐12月>』の書評1:一人の孤独な少年と一人の孤独な少女の再会
村上春樹『1Q84 BOOK3<10月‐12月>』の書評1:一人の孤独な少年と一人の孤独な少女の再会 村上春樹の『1Q84』のハードカバー全3巻のうち、“BOOK2<7‐9月>”までは一気呵成に読み終えていたのだが、その後に間が空いてしまい、最後の“BOOK3<10月‐12月>”をようやく何年かぶりかで読み終えた。 ...続きを見る

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2014/03/08 09:36
湊かなえ『少女』の書評:相手の本心が分からなくなった由紀と敦子の友情や因果応報を巡る物語
湊かなえ『少女』の書評:相手の本心が分からなくなった由紀と敦子の友情や因果応報を巡る物語 湊かなえというと映画化もされた『告白』のイメージが強いが、学校生活における複雑な人間関係(友人関係)や生徒・教師の思惑(憶測)が交錯する心理を題材にしたテンポの良い物語を作るのが上手い作家である。本作『少女』では、幼馴染の友人である女子高生の由紀と敦子の友情のぐらつきと再建を描いているのだが、学校という閉じた世界で生活する高校生にありがちな『友達関係への依存・不安(相手のことを何でも知っているように見えて実際にはよく知らないのではという不安)』の落ち着かない心情をさまざまなエピソードを通してリア... ...続きを見る

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2013/07/03 05:48
東野圭吾『幻夜』の書評2:“雅也(亮司)の献身”と“美冬(雪穂)の冷淡”の構造
東野圭吾『幻夜』の書評2:“雅也(亮司)の献身”と“美冬(雪穂)の冷淡”の構造 『幻夜』でも『白夜行』と同じように、美冬の清楚さと妖艶さを兼ね備えた美貌に魅了された男たちは、次々と悪どく利用されて不幸に追いやられていき、美冬の謎に満ちた過去を深入りして探ろうとする者は冷酷に命を奪われていく。美冬一人では完璧に実行することが不可能な犯罪と計略の実務を担当しているのは、言うまでもなく、美冬と完全につながっていてこの犯罪が『自分と美冬の将来』のためになると思い込んでいる雅也である。 ...続きを見る

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2013/06/21 14:18
東野圭吾『幻夜』の書評1:秘密(犯罪)を共有する新海美冬と水原雅也の物語
東野圭吾『幻夜』の書評1:秘密(犯罪)を共有する新海美冬と水原雅也の物語 東野圭吾のベストセラーでドラマ化・映画化もされた『白夜行』の続編という位置づけに当たるのが『幻夜』であるが、まったく別の悪女の物語としても読める。唐沢雪穂(西本雪穂)と桐原亮司の組み合わせが、新海美冬(しんかいみふゆ)と水原雅也(みずはらまさや)に変わっているが、『白夜行』のエピローグ後の雪穂が美冬として再設定されており、『トラウマ(殺人の犯罪)の記憶の共有』によって美冬と雅也の男女の仲が深く結び付けられている(ように見せかける)というプロットも共通している。 ...続きを見る

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2013/06/21 14:11
新田次郎『アラスカ物語』の書評3:“アラスカのモーゼ”と呼ばれたフランク安田の生涯
新田次郎『アラスカ物語』の書評3:“アラスカのモーゼ”と呼ばれたフランク安田の生涯 アラスカの旧支配者だったロシア人とゴールドラッシュでアラスカに進出してきた荒くれの白人による“鯨・海獣・カリブー”の行き過ぎた資源濫獲によって、エスキモーの食糧になっていた獲物が激減してしまい、エスキモーたちは長年続けてきた『伝統的な狩猟採集の生活様式』を維持していく事が困難になっていく。自然の再生産能力を超えた海洋資源の乱獲は、現代でも『クロマグロ・ホンマグロの乱獲+マグロ資源維持のための漁獲量制限』などが問題になったりするように、文明社会における『嗜好的な食品・毛皮・皮革の大量消費』は資源利... ...続きを見る

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2013/02/02 22:07
新田次郎『アラスカ物語』の書評2:日本人とエスキモーの異文化コミュニケーション
新田次郎『アラスカ物語』の書評2:日本人とエスキモーの異文化コミュニケーション 冒頭の『第一章 北極光』では、オーロラの妖艶な美しさと不気味さ、冷気で水蒸気が氷の粒となるダイヤモンドダストの清冽な輝き、静かで寒い星明かりの夜、全てを剥ぎ取って凍りつかせるような暴風雪などが精緻に描かれており、凍りついた北極海から厳寒のアラスカへと歩いていく過酷な冒険小説の臨場感を高めている。 ...続きを見る

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2013/02/02 22:04
新田次郎『アラスカ物語』の書評1:人生の閉塞感からアラスカに向かった日本人
新田次郎『アラスカ物語』の書評1:人生の閉塞感からアラスカに向かった日本人 明治時代の日本に、北アメリカ大陸の酷寒のアラスカへ、孤独な外国航路の見習い船員として乗り込んだ少年がいた。地域の名望家だった一族の零落と医師の進路の喪失、心を寄せていた女性・千代との別離によって、日本に己の居場所を見いだせなくなった安田恭輔は、三菱汽船のアラスカ航路の船員として弱冠19歳で名乗りを上げる。 ...続きを見る

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2013/02/02 22:02
貴志祐介『ダークゾーン』の書評
貴志祐介『ダークゾーン』の書評 奨励会に所属してプロの棋士を目指している塚田裕史三段は、中学生の頃から天才的な将棋の才覚を発揮していたが、プロ棋士の関門である『三段リーグ』を勝ち抜けないままに20歳を越えてしまい焦っている。塚田三段はプロ棋士となる『四段昇格』を目指して、同世代でほぼ互角の力量を持つライバルの奥本三段と激しく競い合っている。 ...続きを見る

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2012/10/23 14:38
新田次郎『栄光の岩壁 上下』の書評4:マッターホルン北壁に登頂した岳彦の強さと弱さ
新田次郎『栄光の岩壁 上下』の書評4:マッターホルン北壁に登頂した岳彦の強さと弱さ 岳彦と大五郎より少し前に登り始めたパーティーは、晴天の気象に恵まれたお陰でアイガー北壁を制覇することができたが、ほんの僅か登り始める日が遅くなっただけで、登攀が不可能な気象になってしまうのである。そして、岳彦らの横を急いで通り抜けていったスペインの遠征隊は、悪天候になっても退却せずに無理をして(日本へのライバル意識を出して)強行軍で突き進んだため、頂上付近で吹雪に埋もれて帰らぬ人になってしまった。 ...続きを見る

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2012/06/22 03:09
新田次郎『栄光の岩壁 上下』の書評3:アイガー北壁を目指す岩壁登攀と仕事・結婚との両立
新田次郎『栄光の岩壁 上下』の書評3:アイガー北壁を目指す岩壁登攀と仕事・結婚との両立 “河本峯吉・辰村昭平・谷村弥市”と相次いで親しい人たちを山で亡くしてしまった岳彦は、自分と一緒に山に登った者は次々に死んでしまうと感じ、自分自身を不運な疫病神のように蔑んだりもする。だが、高校時代に冬の八ヶ岳で峯吉と一緒に死んでいてもおかしくなかった自分がこうやって生かされていること、もう二度と歩けないはずの足が再び歩けるようになったばかりでなく山にさえ登れるようになったことに対して、自分なりの人生の意味を、難易度の高い『未登攀の岩壁登攀』を通して確認したいという強靭な意志を持ち続けていた。 ... ...続きを見る

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2012/06/22 03:08
新田次郎『栄光の岩壁 上下』の書評2:“山を歩く登山”から“岩を登攀する登山”への転換
新田次郎『栄光の岩壁 上下』の書評2:“山を歩く登山”から“岩を登攀する登山”への転換 同級生の誰よりも優れた体力があり、長距離を歩いても疲れないだけのスタミナを持っていた岳彦だったが、足を失ってからは『山道を歩くこと』が途轍もない苦痛となり、歩くことに対する苦手意識にも囚われるようになった。 ...続きを見る

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2012/06/16 22:51
新田次郎『栄光の岩壁 上下』の書評1:敗戦による社会・人心の変化と冬の八ヶ岳での遭難
新田次郎『栄光の岩壁 上下』の書評1:敗戦による社会・人心の変化と冬の八ヶ岳での遭難 新田次郎の書いた小説『孤高の人』は、不世出の登山家・加藤文太郎を題材にしたヒューマンな山岳小説だったが、『孤高の人』では長距離をひたすら歩き続ける縦走登山と日本の冬山での過酷なビバーク(厳冬期の野営を可能にする生命力)に力点が置かれていた。この『栄光の岩壁』という作品は、『孤高の人』『銀嶺の人』と並ぶ新田次郎の長編三部作の一つとされているようだが、それぞれの作品には『加藤文太郎(孤高の人)』『今井通子(銀嶺の人)』『芳野満彦(栄光の岩壁)』という実在する当時の一線級の登山家(登攀家)のモデルがい... ...続きを見る

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2012/06/15 02:09
新田次郎『孤高の人 上・下』の書評4:“不死身の加藤”の槍ヶ岳・北鎌尾根での最期
 新田次郎『孤高の人 上・下』の書評4:“不死身の加藤”の槍ヶ岳・北鎌尾根での最期 小説『孤高の人』では、園子と花子という二人の女性を巡る加藤文太郎の恋愛も描かれ、そこに加藤のことを尊敬して慕って弟子のように加藤の登山を真似ていく宮村健(みやむらたけし)が加わってくる。洗練された知的なお嬢様のような雰囲気を持つ園子に、加藤は『別世界の理想的女性』としてのイデアを見て憧れて惚れる。 ...続きを見る

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2012/03/04 01:41
新田次郎『孤高の人 上・下』の書評3:“冬山の自然の厳しさ”と“世俗の人間関係の難しさ”
新田次郎『孤高の人 上・下』の書評3:“冬山の自然の厳しさ”と“世俗の人間関係の難しさ” 小説内の加藤文太郎の登山は一流の域に達してはいくが、徹頭徹尾、誰にも学ばず誰とも一緒に登らない登山であり、その単独行は『山では自分以外の何ものをも頼ることはできない。自分独りであればどんな状況でも死ぬことはない』というストイックなまでの他者の存在を拒絶する信念であった。遂には外山三郎も藤沢久造も加藤を正規の登山界に組み入れることを諦め、彼の自発的なトレーニングと忍耐力に根ざした冬山登山の経緯を見守るようになり、加藤文太郎は次々と当時の登山界の常識を覆すような冬山のビバークをやり遂げ、金字塔的な記... ...続きを見る

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2012/03/04 01:38
新田次郎『孤高の人 上・下』の書評2:社会人登山家の嚆矢となった加藤の友人関係と孤独感
新田次郎『孤高の人 上・下』の書評2:社会人登山家の嚆矢となった加藤の友人関係と孤独感 漁師町の兵庫県美方郡浜坂町で産まれた加藤文太郎は、元々は海・泳ぎに親しみを持っていたが、18歳から独自に山登りを実践しはじめ、20歳の段階で和田岬の寮を朝早くでて、横尾山、高取山、菊水山、再度山、摩耶山、六甲山、石の宝殿、大平山、岩原山、岩倉山、宝塚までの片道50キロを縦走し、その日の夜までに17時間で和田岬に帰ってくるという『六甲全山縦走』を成し遂げて登山家の素質の片鱗を覗かせた。 ...続きを見る

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2012/03/04 01:35
新田次郎『孤高の人 上・下』の書評1:驚異的な脚力と精神力で登山に臨む“単独行の加藤文太郎”
新田次郎『孤高の人 上・下』の書評1:驚異的な脚力と精神力で登山に臨む“単独行の加藤文太郎” 登山小説(山岳小説)を多く書いている新田次郎の作品では、『槍ヶ岳開山』の書評を書いたが、『孤高の人』もまた加藤文太郎(かとうぶんたろう,1905-1936)という実在の登山家をモデルにして書かれた小説である。 ...続きを見る

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2012/03/04 01:33
貴志祐介『悪の教典 上・下』の書評
貴志祐介『悪の教典 上・下』の書評 生徒や同僚の教師から信頼されて好かれている爽やかな英語教師が、他人の苦痛や恐怖に共感できず合理的な損得計算だけをする『サイコパス(精神病質)』だったらという前提で書かれたサイコサスペンスのホラー小説。小説全体の雰囲気や流れからすると、同じ学校内での殺戮を題材にした高見広春の『バトルロワイヤル』にもどこか似ているが、貴志祐介の今までの作品と比べると同じ恐怖感やサイコパス(ソシオパス)を描くにしても、物語の重厚感や理解不能な人間の恐ろしさというものの記述がやや軽過ぎるように感じる。 ...続きを見る

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2011/12/04 23:50
桐野夏生『ポリティコン 上・下』の書評2:唯腕村の村内闘争と高浪東一の権力と愛・性への欲望
桐野夏生『ポリティコン 上・下』の書評2:唯腕村の村内闘争と高浪東一の権力と愛・性への欲望 旧世代の村民のサボタージュとボイコットの結果、唯腕村の『世代交替』が急速に進み始めるのだが、それは東一にとってはうるさい老人たちを退かせる渡りに舟の変化でもあり、父親の素一の後を襲って理事長の座に就いた東一は、唯腕村を『自分の王国(自分に都合の良い村)』に変革するために、北田・スオンら・メディアの力を借りて村内改革を進めていくことになる。 ...続きを見る

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2011/12/04 17:27
桐野夏生『ポリティコン 上・下』の書評1:理想的で閉鎖的な農業共同体としての唯腕村の歴史と現状
桐野夏生『ポリティコン 上・下』の書評1:理想的で閉鎖的な農業共同体としての唯腕村の歴史と現状 慌しくストレスの多い資本主義・企業経済の世界から脱け出して生きていきたいという欲望の現れとして、『自給自足的・非貨幣的なコミュニティの形成』がある。心から信頼して助け合える同志と呼べるような仲間と一緒に汗水を流して懸命に働けば、『お金・企業・市場に束縛されない人生』の道が切り開けるのではないか、『仲間・共同体のための労働』ができるのであれば物質的に貧しくても、そこにヒューマニスティックな労働の喜びが実感できるのではないか、そういった農本主義の理想郷建設の思想の下に『唯腕村(いわんむら)』は人工的... ...続きを見る

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2011/12/04 17:24
村上春樹『1Q84 BOOK1<4月―6月>』の書評3:さきがけの宗教団体化と天吾の親子関係の記憶
村上春樹『1Q84 BOOK1<4月―6月>』の書評3:さきがけの宗教団体化と天吾の親子関係の記憶 自然と共に生きる有機農業を精力的に行う『さきがけ』の評判は高まり、深田保を慕って農業生活を送りたいという人々や家族が次第に増加して農業コミューンは大きくなっていったが、初めに深田保の共産主義的な政治思想に感化されて参加していたメンバー(学生)は『非革命的・非政治的になったさきがけ』に不満を覚えるようになる。 ...続きを見る

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2011/10/13 07:07
村上春樹『1Q84 BOOK1<4月―6月>』の書評2:男女のジェンダーと農業コミューンの変質
村上春樹『1Q84 BOOK1<4月―6月>』の書評2:男女のジェンダーと農業コミューンの変質 DVや性犯罪の被害に遭った女性たちをシェルターで匿い、タマルという屈強なボディガードも雇っている麻布の老婦人(女主人)は、自らが信じる『正義の遂行』と『女性の保護』のためには如何なる手段をも選ばない(罪の意識を持たず迷いも抱かずに暗殺をも指示する)冷徹な女性である一方、普段は温室で植物・蝶を愛でながら穏やかに紅茶のカップを傾けるような貴婦人でもある。“暗殺の指示者”である老婦人も“暗殺の実行者”である青豆も、共に自分にとって大切なかけがえのない女性を暴力を振るう男性から奪われたというトラウマを共... ...続きを見る

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2011/10/13 07:01
村上春樹『1Q84 BOOK1<4月―6月>』の書評1:青豆の暗殺業と罪に対する罰、屈曲した性愛
村上春樹『1Q84 BOOK1<4月―6月>』の書評1:青豆の暗殺業と罪に対する罰、屈曲した性愛 『青豆』という不思議な姓を持つ暗殺者の女性と『天吾』という自我の宿命を感じさせる名前を持つ作家志望の塾講師の男性との物語が交互に繰り返されていくが、BOOK1の段階では青豆と天吾の直接の接触や会話はない。だが二人が出会う予兆めいた言葉として、不特定多数の中年男性とストレス発散のための放縦な性交を重ねる青豆は、『少なくとも私には好きな人がいる。一人でもいいから、心から誰かを愛することができれば、人生には救いがある。たとえその人と一緒になることが出来なくても』と語り、運命の邂逅を見逃さないようにいつ... ...続きを見る

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2011/10/13 06:59
島田荘司『写楽 閉じた国の幻』の書評3:“平賀源内=写楽説”の頓挫と鎖国体制の盲点を突く推論
島田荘司『写楽 閉じた国の幻』の書評3:“平賀源内=写楽説”の頓挫と鎖国体制の盲点を突く推論 本作『写楽 閉じた国の幻』では、幾つかの有力な別人説を塾講師の佐藤貞三が片桐教授の援助を受けながら検証していくところがメインになっているが、今まで取りざたされた別人説は正に何十人にものぼるという多種多様な状況であり、『決定的な物証・証拠』が無いために、どの仮説が正しいのかを確実に言うことはできないようだ。今まで江戸美術史で取り上げられたことのある『別人説』には、主だったものだけでも以下のようなものがあるという。 ...続きを見る

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2011/10/09 06:02
島田荘司『写楽 閉じた国の幻』の書評2:浮世絵・錦絵の歴史と東洲斎写楽の謎
島田荘司『写楽 閉じた国の幻』の書評2:浮世絵・錦絵の歴史と東洲斎写楽の謎 開人を襲った悲惨な事故は、実際に2004年に六本木ヒルズ森タワーで起こった『回転ドア死亡事故』に題材を取っていることは明らかであるが、作中では追加でコイン投入できないパーキングメーターの不親切な設計と合わせて、センサー作動で急停止しても事故回避ができない回転ドアの構造上の問題を、『回転ドア事故被害者の会』での会話で論じていたりする。 ...続きを見る

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2011/10/04 01:00
島田荘司『写楽 閉じた国の幻』の書評1:佐藤貞三の家庭生活の破綻・挫折感と回転ドア事故
島田荘司『写楽 閉じた国の幻』の書評1:佐藤貞三の家庭生活の破綻・挫折感と回転ドア事故 世界的に著名な浮世絵師の葛飾北斎(1760-1849)の研究をしていた東大卒の佐藤貞三(さとうていぞう)は、川崎市の準ミスでお嬢様の千恵子と28歳でお見合い結婚をして、総合商社M物産の役員の義父(小坂)の支援を受けながら大学教授のポストを目指していた。叩き上げで権力と財力を掴み取ってきた義父は尊大で威圧的であり、自分の娘の結婚相手として私大講師の佐藤を十分な相手とは見ていない。東大卒の学歴と将来性だけに期待しており、私大の講師をしている佐藤を支援して大学教授にさせることで、漸く自分の家と釣り合い... ...続きを見る

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2011/10/04 00:58
万城目学『プリンセス・トヨトミ』の書評:“大阪城地下・大阪の大衆文化”に隠蔽された謎
万城目学『プリンセス・トヨトミ』の書評:“大阪城地下・大阪の大衆文化”に隠蔽された謎 会計検査院第六局に所属する副長の松平、部下の鳥居と旭ゲーンズブールの3人が、大阪府庁や公益法人・特殊行政法人の会計検査を実施するために大阪を訪れる。アイスクリーム好きだが検査の厳格さで知られる上司の松平、怪しい経理書類を独特の嗅覚で見極める特技を持つ鳥居、内閣法制局出身のエリートで容姿端麗なハーフの美女の旭ゲーンズブールといった個性豊かな3人が、大阪で会計検査を行ううちに、社団法人OJOの使途不明な補助金5億円へと辿り付く。 ...続きを見る

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2011/04/13 23:33
天童荒太『静人日記』の書評:『匿名の死』を悼む坂築静人の奇妙な生き方と現実の他者との距離感
 天童荒太『静人日記』の書評:『匿名の死』を悼む坂築静人の奇妙な生き方と現実の他者との距離感 人間と動物の差異として『死を悼む』ということがある。人間は血縁のある家族の死を悼むだけではなく、自分と付き合いがあった親しい友人の死を悼み、何かの縁があった知人の死を悼む。飼っていた愛らしいペット(動物)の死を、悲しみに暮れながら悼む人も少なくないだろう。しかし、人は年月の経過と共に『死を忘れる』ものでもある。あれほど悲しみや痛みに打ちひしがれていた人も、『他者の死』を一時も忘れずに生き続けることはできない、『自分自身の人生』へと戻っていかなければならないからだ。 ...続きを見る

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2010/05/14 10:09
伊坂幸太郎『終末のフール』の書評:地球・人類の滅亡が決定されても残る人生(日常)の意味とは?
伊坂幸太郎『終末のフール』の書評:地球・人類の滅亡が決定されても残る人生(日常)の意味とは? 宇宙科学の天体運動の予測により、8年後に地球に小惑星が衝突することが分かったという前提でSFチックな物語が展開する。地球滅亡のカウントダウンを告げるニュースがテレビ・新聞を占拠すると、多くの人々は日常生活や仕事を、今まで通りに規則正しく行うことの意味を見失い、世界中が大パニックになる。 ...続きを見る

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2010/04/24 01:43
篠田節子『逃避行』の書評:家族との縁が切れた主婦と愛犬ポポの悲しくも温かい逃避行
篠田節子『逃避行』の書評:家族との縁が切れた主婦と愛犬ポポの悲しくも温かい逃避行 人間よりも犬のほうが好きという『無類の犬好きな人』は多くいるが、ペットブームや単身世帯の増加の影響もあって、愛犬や愛猫との生活に癒しを感じてのめり込む人は今後も増えるのかもしれない。人間と犬との共同生活の歴史は、数百万年前の旧石器時代にまで遡れるほどに古いといわれるが、多くの人は物言わず自分をひたすら慕ってくれる犬が好きだし、『愛犬と暮らした記憶』は『人間と暮らした記憶』以上の良い思い出になることも少なくないようだ。 ...続きを見る

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2010/04/08 01:50
平野啓一郎『ドーン』の書評:“分人主義・顔認証検索・宇宙開発”から予測される近未来
平野啓一郎『ドーン』の書評:“分人主義・顔認証検索・宇宙開発”から予測される近未来 宇宙船ドーン(Dawn)による世界初の有人火星探査の成功、人々のイデオロギー(基本的価値観)の分断を鮮明化するアメリカ大統領選挙、自己アイデンティティが複数化する『分人主義(ディビジュアリズム)』の拡大、地球からは見えないドーン船内の人間関係のドラマ、アメリカの貧困層の兵士化と戦争ビジネス……ハリウッド映画でキャスティングされても違和感のないような壮大なスケールで、2030年代の近未来を舞台にした小説『ドーン』は書かれている。 ...続きを見る

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2010/02/05 08:53
恩田陸『不連続の世界』の書評:現代の怪奇と各地の旅情が漂うトラベルミステリー
恩田陸『不連続の世界』の書評:現代の怪奇と各地の旅情が漂うトラベルミステリー 音楽プロデューサーの塚崎多聞(つかざきたもん)が次々と経験する『少し怖くて不思議な話』を題材とした恩田陸のミステリー短編集。どこか茫洋として憂き世離れした雰囲気のある音楽プロデューサーの塚崎多聞、完璧な経歴と家柄を持つ美人な旧通産省官僚の美加、イギリスの名家の生まれで美加に思いを寄せる証券マンのロバートといった登場人物は共通しているが、収載された作品はそれぞれ独立した物語として読むことができる。 ...続きを見る

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2010/02/05 06:25
歌野晶午『絶望ノート』の書評:いじめを記録したノートから“複数の視点”を通して展開する物語
歌野晶午『絶望ノート』の書評:いじめを記録したノートから“複数の視点”を通して展開する物語 大刀川照音(たちかわ・しょおん)が、具体的ないじめの状況を書き記した『日記(絶望ノート)』を巡って様々な事件が起こるという物語。いじめをする是永雄一郎、庵道鷹之、倉内拓也と、いじめを受ける大刀照音とのやり取りが毎日の日記に記されていく。 ...続きを見る

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2010/01/08 17:41
東野圭吾『使命と魂のリミット』の書評:職業倫理と過去の執着からの離脱を描く医療ミステリー
東野圭吾『使命と魂のリミット』の書評:職業倫理と過去の執着からの離脱を描く医療ミステリー ベストセラー作家である東野圭吾の医療系ミステリー小説ですが、東野氏が小説の題材とするテーマや社会問題は非常に幅広くて、どれも一定以上の物語のクオリティを持っています。『使命と魂のリミット』は、大学病院で心臓外科医を目指す研修医の氷室夕紀が、『過去の医師・母親にまつわる個人的な不信』を乗り越えていくという筋立てですが、夕紀を取り巻く『親子・師弟の人間関係の設定』がよく練り込まれています。 ...続きを見る

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2010/01/08 13:48
島田荘司『龍臥亭幻想 上下』の書評:森孝魔王の正義の復讐と村落社会の迷信・差別の悲しみ
島田荘司『龍臥亭幻想 上下』の書評:森孝魔王の正義の復讐と村落社会の迷信・差別の悲しみ 明治維新によって幕藩体制と身分制度が解体され、備中藩の旧藩主・関森孝(せきもりたか)はかつての所領と家臣の多くを失い、関家の遺産を元に暮らすことになった。廃藩置県と四民平等によってかつての威勢と富裕を失ったとはいえ、関森孝は江戸時代であれば備中藩を治める殿様であり、明治の御世に入っても派手な暮らしを繰り返して次第に関家の財産は細っていった。 ...続きを見る

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2009/10/07 20:47
海堂尊『ジェネラル・ルージュの凱旋』の書評
海堂尊『ジェネラル・ルージュの凱旋』の書評 『ジェネラル・ルージュの凱旋』は、医療ミステリー小説としてベストセラーや映像作品になった『チーム・バチスタの栄光』と『ナイチンゲールの沈黙』の続編(3作目)に当たる。医療系小説にありがちな難易度の高い手術や発症率の低い難病を取り扱ったような内容ではなく、『病院内の派閥闘争・医療倫理や病院財務の問題・Ai(死亡時画像診断)・業者との癒着』などをテーマにしながら、色々な患者や医師のエピソードを描いた作品である。 ...続きを見る

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2009/09/23 12:50
桐野夏生『メタボラ』の書評:“居場所”と“記憶”を失って漂流する若者の暗くて明るい物語
桐野夏生『メタボラ』の書評:“居場所”と“記憶”を失って漂流する若者の暗くて明るい物語 過去の記憶をすべて失って南国・沖縄の原生林をさまよっていた「僕」は、天真爛漫で田舎臭さが抜けない宮古島出身の美青年・伊良部昭光(いらぶあきみつ)と偶然出会う。何が何だか分からないまま、混乱した気持ちで沖縄奥地のジャングルを抜け出した「僕」は、昭光と一緒に名護に向かう国道沿いのコンビニに駆け込み、自分の顔を初めて確認する。鏡に映っていた「僕」の顔は、今まで見たことの無いちょっと冴えない四角張った若い男性の顔だった。 ...続きを見る

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2009/09/05 23:51
小川洋子『貴婦人Aの蘇生』の書評
小川洋子『貴婦人Aの蘇生』の書評 私の母方の伯父は、地質学を研究して海底油田の調査をする仕事をしていたが、その仕事を辞めてからは職を転々としたり、色々と怪しげな事業に手を出しては失敗を繰り返していた。気が向くままフワフワと仕事を渡り歩き、地に足がつかない『自由人』としてのライフスタイルを謳歌していた伯父は、真面目さと堅実さを絵に描いたような常識人である私の父母とは反りが合わなかった。私の父親は大学の法学部の教授で、大学での講義と法律の本を読むだけで人生を終えてしまったような堅物であり、専業主婦の母親は規律正しい家庭生活を整えるこ... ...続きを見る

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2009/08/17 19:24
伊坂幸太郎『魔王』の書評:ファシズム(群集心理)の不安と安藤兄弟の超能力を巡る物語
伊坂幸太郎『魔王』の書評:ファシズム(群集心理)の不安と安藤兄弟の超能力を巡る物語 自分が頭の中で念じている内容を『他人の口』から喋らせることができるという超能力(腹話術)を持つ会社員の安藤が、閉塞した日本に忍び寄るファシズム(全体主義)を警戒して阻止しようとする。経済が悪化して景気低迷が続く日本では、失業率が史上最悪となり、国民の心は希望の無い諦観に緩やかに包まれていた。国内の政治・経済に活路を見出せない国民の感情的な鬱積は、アメリカ・中国・朝鮮半島などへの対外的な不満や怒りへと向け変えられ、政府の弱腰で妥協的な外交は厳しくバッシングされている。 ...続きを見る

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2009/07/16 16:04
佐藤賢一『カルチェ・ラタン』の書評:青年ドニ・クルパンの“自立”に向かう友情と性的成熟の物語
佐藤賢一『カルチェ・ラタン』の書評:青年ドニ・クルパンの“自立”に向かう友情と性的成熟の物語 パリ有数の資産家クルパン水運の次男であり、純情過ぎるが故に女性が苦手なドニ・クルパンとパリ大学神学部が輩出した女好きの俊英マギステル・ミシェルの友情を中心にして、16世紀パリの『キリスト教改革(神学論争)』と『男女の性愛の葛藤』を小説化した作品である。 ...続きを見る

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2009/06/13 07:10
村上龍『半島を出よ 上下』の書評
村上龍『半島を出よ 上下』の書評 村上龍の大部の長編小説だが、北朝鮮の特殊部隊である『高麗遠征軍(こうらいえんせいぐん)』が近未来(2011年)の日本に解決困難なテロリズムを仕掛けてくるという政治サスペンスである。北朝鮮のミサイル実験や核開発問題などを考慮するとタイムリーな物語設定であるが、北朝鮮の兵士ひとりひとりの人物像と心の揺れの詳細な描写により、単純な勧善懲悪の筋書きにはなっていない。必ずしも極東の軍事情勢のみを主題に置いているわけではなく、村上龍の『人物描写を掘り下げる労力』は日本人の登場人物よりも北朝鮮軍人の登場人物に... ...続きを見る

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2009/05/20 06:35
京極夏彦『邪魅の雫』の書評:“毒の雫”を持つことによる危険な誘惑と男女の別離に絡みつく情念
京極夏彦『邪魅の雫』の書評:“毒の雫”を持つことによる危険な誘惑と男女の別離に絡みつく情念 陰陽師の拝み屋で古書店を営む中禅寺秋彦(ちゅうぜんじあきひこ)が、“言葉の呪力”で『憑き物落とし』をする京極夏彦の京極堂シリーズを何年ぶりかに読んだ。想像妊娠をトリックに用いた『姑獲鳥の夏(うぶめのなつ)』や戦時中の科学研究が絡んだ奇怪な事件を題材にした『魍魎の匣(もうりょうのはこ)』から京極堂シリーズを読み続けているが、最近は新作が出たからといってすぐに読むというわけでもなくなっている。 ...続きを見る

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2009/03/07 16:35
島田荘司『帝都衛星軌道・ジャングルの虫たち』の書評:妻の突然の失踪を巡る謎と夫の絶望からの回復
島田荘司『帝都衛星軌道・ジャングルの虫たち』の書評:妻の突然の失踪を巡る謎と夫の絶望からの回復 それまで女性に全く縁が無かった信用金庫に勤める銀行マン紺野貞三(こんのていぞう)が、行き着けの定食屋『ひょっとこ』で見初めた美砂子(みさこ)にダメ元で声を掛けてデートに誘い、あっさりとOKを貰う。風采が上がらない真面目だけが取り得の紺野貞三だったが、堅い安定した仕事をしているだけに、お見合いの話は両親や上司から何度も舞い込んでいた。しかし、過去に女性と付き合ったことが無かった貞三は、自分の好みからかけ離れたお見合い写真を見て断り続け、結婚する前に一度で良いから少し見栄えのする美人と付き合ってみた... ...続きを見る

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2009/02/25 09:03
伊坂幸太郎『砂漠』の書評:『砂漠(現実社会)』へと乗り出していく大学生たちのモラトリアムの思い出
伊坂幸太郎『砂漠』の書評:『砂漠(現実社会)』へと乗り出していく大学生たちのモラトリアムの思い出 5人の大学生のモラトリアムの期間と友情・恋愛のプロセスをテーマにした小説ですが、いかにもありそうな人間関係の展開と各場面のエピソードが、上手く学生生活や恋愛関係のリアリティを浮き立たせています。伊坂幸太郎という作家は、日常的な人間の行動や発言を『小説の表現』に自然に乗せることがかなり上手いと感じますが、『砂漠』では主人公の北村の『冷めている鳥瞰型の態度』が、友達や異性との出会いを通して徐々に本人が意識することも無く崩れていく過程を軽快な筆致で描いています。 ...続きを見る

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2009/02/07 10:53
平野啓一郎『決壊 上下』の書評:人間の“生きる意味”の錯綜と格差社会に蓄積する無力感の恐怖
平野啓一郎『決壊 上下』の書評:人間の“生きる意味”の錯綜と格差社会に蓄積する無力感の恐怖 格差社会や無差別殺傷事件、将来不安、少年犯罪、ネットでの犯行予告、うつ病の増大の根底にマグマのように蓄積している『ルサンチマン(弱者の怨恨・憎悪)』を文学作品として昇華させた作品であるが、元々どちらかというと暗いトーンの作品が多い平野啓一郎の著作の中でもその陰鬱さと虚無感が際立っている。一応、物語の後半で良介と『悪魔』が対峙する場面では『庶民的幸福の救済と勝利』が準備されているのだが、それでも良介と佳枝・良太の平凡な家庭生活の幸福が突然足元から叩き壊されていくプロセスには胸が痛くなるし、『破滅的... ...続きを見る

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2009/01/21 07:45
貴志祐介『新世界より 上・下』の書評:倫理的な人々が構築する“完全な世界”と“人間の原罪”
戦争も争いも犯罪も環境破壊もない『完全無欠な世界』はどのようにすれば建設できるのだろうか?あなたがそういった完全な平和と秩序に覆われた理想の世界や倫理的な人間のみによって構築される社会を夢想したことがあるならば、貴志祐介の『新世界より』はかなりおすすめの小説であり一度は読むべき価値があると思う。ロールプレイングゲーム(RPG)のような冒険物語の構成によって綴られていて、一見するとSF・ファンタジー小説のライトノベルのような読み応えなのだが、ストーリーが先に進むにつれてその印象は良い意味でかなり変... ...続きを見る

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2009/01/20 17:57
島田荘司『UFO大通り/傘を折る女』の書評:“二つの中篇小説”を“一つのトリック(謎解き)”でつなぐ
島田荘司の御手洗潔シリーズの作品ですが、表題の『UFO大通り』ではガソリンスタンドの元店員の変死と宇宙人とUFOを家の近所で見たという老女小平ラクさんの証言が計算された物語のプロットの中で上手く結び付けられていきます。奇妙な状況で亡くなっていたガソリンスタンドの元店員・小寺隆の死亡の謎は合理的に納得できるものになっていますが、小寺の婚約者・柴田明美が銀色に輝く顔になって死亡した状況の説明はやや牽強付会のような感じも受けます。 ...続きを見る

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2008/12/29 13:06
有川浩『図書館内乱』の書評
図書館と図書館司書、メディア規制を題材にとったちょっと変わった色合いの小説ですが、『図書館戦争』という前作を読まずにこの『図書館内乱』を読んだので登場人物のキャラクターと人間関係に少し手間取りました。ウェブで検索してみると『図書館戦争』シリーズとして『図書館危機』『図書館革命』などがありますが、恋愛小説的なストーリー展開やトレンディな場面が織り込まれていることもあり、少女漫画や映像作品としても展開されているようです。 ...続きを見る

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2008/12/29 08:22
伊坂幸太郎『重力ピエロ』の書評:性愛・家族・内面の倫理を巡って紡がれる『罪と罰』の物語
伊坂幸太郎のミステリー小説を初めて読んでみましたが、軽快で読みやすいウィットの効いた文章と個性的な登場人物の取り交わす哲学的な会話が印象に残る作品で、『性』と『生』の悲愴感溢れる相関を照射しながら進むストーリーは人を引き込むものがあります。現代小説で人気の高いベストセラー作家には、東野圭吾や宮部みゆき、桐野夏生、重松清など色々な作風の小説家がいますが、伊坂幸太郎もそれらの作家と並ぶような『創作世界への誘引力』を持っており、物語の先を知りたいと思う読者の視線と時間を心地よく奪っていきます。小さな謎... ...続きを見る

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2008/12/09 14:03
平野啓一郎『あなたが、いなかった、あなた』の書評
数ヶ月前に村上春樹の短編集『東京奇譚集』を読んだまま書評を書きそびれていたが、村上の短編集を興味深いストーリーと人物で関係性のエロスをメタファー化した作品と評するならば、平野啓一郎の『あなたが、いなかった、あなた』は小説を叙述する多様なテクニックを駆使しながら平野の日常風景や人間観を巧みに切り取った作品のように感じた。現代小説には小説の物語性や人物の描写といったコンテンツとは別に、『レイアウト・フォント・図版の修飾』による文章の視覚効果に配慮した作品があるが、本作の中では『女の部屋』『母と子』『... ...続きを見る

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2008/11/15 04:38
レフ・トルストイ『イワン・イリイチの死/クロイツェル・ソナタ』の書評
『イワン・イリイチの死』は、『戦争と平和』や『アンナ・カレーニナ』で知られるレフ・トルストイ(1828-1910)の後期の代表作の一つである。過去に『戦争と平和』を読んだ時には、作品自体の長さと写実的な描写の回りくどさに辟易した記憶があり、一般に冗長で読みにくいといわれるドストエフスキーと比較してもトルストイの作品には若干の苦手意識を持っていた。実際、トルストイの作品を読んだのは10年以上ぶりだったのだが、本作『イワン・イリイチの死』は中篇であること、こなれた文体の新訳であることもあり現代小説の... ...続きを見る

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2008/11/07 13:20
森博嗣『キラレ×キラレ Cutthroat』の書評
いつの間にか『φは壊れたね』から始まり『ηなのに夢のよう』に続く森博嗣の“Gシリーズ”が一段落していたようで、『イナイ×イナイ』から始まる“Xシリーズ”というのが単行本化されていました。Gシリーズの“G”は「Greek(ギリシアの)」を意味していましたが、Xシリーズの“X”はタイトルに必ず含まれる「×」を指しているようです。登場人物や時間経過など『物語世界の背景』は西之園萌絵と犀川創平が主役を務めるS&Mシリーズと若干の連続性が見られますが、ミステリー小説としての複雑性や思想的な密度はGシリーズ... ...続きを見る

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2008/10/28 00:27
村上春樹『走ることについて語るときに僕の語ること』の書評:“走ること”と“書くこと”を継続する原動力
村上春樹が『書く人』であることに加えて『走る人』であることを初めて知った。本書は、村上春樹が『走ること』について語りながら、自分の私生活と執筆にまつわる事柄を率直に振り返っている日記形式の随筆である。自叙伝的に村上が自分の人生と執筆のあらましをラフな言葉で語っていくのであるが、村上の私生活と作家活動の根底にはフィジカルに走り続けるという単純な反復活動があった。私は村上春樹の小説はすべてとは言わないがその大半に目を通してきているものの、村上春樹自身がどういった人物であるかどのような日常生活を送って... ...続きを見る

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2008/09/21 17:43
重松清『疾走』の書評
重松清の小説の多くは『家族の愛情』や『人間関係の喪失』をテーマにしているが、この『疾走』という作品では『家族的なものの徹底的な剥奪』がテーマとなっており、今までの小説とはやや異質である。『疾走』では、社会構造の暗部にダイレクトに晒された少年少女の苦悩と絶望が生々しく描かれているが、未熟な少年の人生を保護してくれる『家族的なもの』をすべて剥奪されたシュウジに、容赦のない性と暴力の欲望の疾風が絶えることなく吹き付けてくる。大人でも耐えられず逃げ出したくなるいじめ・屈辱的な性と暴力・寄る辺のない孤独…... ...続きを見る

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2008/08/19 10:15
森博嗣『ダウン・ツ・ヘヴン』の書評
『ダウン・ツ・ヘヴン』はスカイ・クロラシリーズの『ナ・バ・テア』に続く作品だが、時間軸はスカイ・クロラよりも過去に戻っている。草薙水素(クサナギ・スイト)はまだ管理職になっておらず、現役のパイロットとして生死を賭けた空中戦に参加している。エース・パイロットの草薙水素とクールな少年パイロットの函南(カンナミ)ユーヒチとの出会いの場面も描かれていて、シリーズ全体の人間関係のつながりが見えやすくなってくる。 ...続きを見る

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2008/07/18 16:39

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