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zoom RSS ブラック企業問題の増加と日本型経営・家族主義の衰退1:長時間労働の主観的苦痛の増大

<<   作成日時 : 2016/12/24 01:42   >>

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今年は『ブラック企業問題』がニュースの話題で取り上げられることが多かった。大手広告代理店の電通で東大卒の女性新入社員が過労・パワハラで自殺をして家宅捜索が行われたり、大手運輸の佐川急便でもパワハラ・いじめで退職を許さず自殺者がでたり交通違反の身代わり出頭を行わせていたりした。チェーン展開するしゃぶしゃぶ温野菜のフランチャイズ店舗で、大学生のバイトに脅迫や暴力・長時間労働の強制・給与未払いを行う深刻な『ブラックバイト問題』が発生したりもした。

ブラック企業大賞では、宿坊の料理長だった男性を349日間も休みなしで連続出勤させた宗教法人の仁和寺(にんなじ)までノミネートされている状況である。ブラック企業とは何なのかの定義は一義的なものではないが、その典型的な特徴は大きく『労働基準法・刑法をはじめとする法律を遵守しない』『従業員の心身の健康を害したり人権・人格を否定するような働かせ方や命令・束縛をする』としてまとめることができるだろう。

ブラック企業に多い問題として挙げられるのは『長時間労働(残業時間を申請可能な上限を決めるなど残業代の支払いが不十分)・パワハラ・セクハラ』であるが、昭和の時代には今以上にブラック企業の働かせ方や対応の仕方の特徴を抱えた企業があっても社会的に問題視されることがほとんどなかった。

日本では労働基準法に違反した長時間労働や短めの残業時間の申告(不十分な残業代の支払い)、若手女性社員への異性としてのちょっとした関心を示す声かけ(若さ・外見・魅力への言及)が当たり前のように行われてきて、『会社(勤務先)第一の生活・価値観』を持って生きることに疑問も抱かない時代も長かった。そのため、『雇っている会社員・公務員(従業員)の人権と人格の尊重』が優先すべき会社・社会の課題として意識されるまでにかなり長い時間がかかったとも言える。

昭和の時代に許されていた暗黙の了解や法律違反を甘く見るような慣習が、近年になって否定されるというのは、飲酒運転の厳罰化や男性の立ち小便の激減、教師の体罰や親の虐待的なしつけ方の否定、未成年の飲酒・喫煙への批判の強まりなど結構多いが、『ブラック企業の社会問題化』というのも2000年代に入ってからの変化だろう。

昭和期にも長時間労働や危険労働、上司からの罵倒・体罰(激しいパワハラ)、女性社員を異性として見ているような発言(冗談)をするセクハラ、過労・パワハラ・いじめによる自殺などは今以上に多く溢れていた。だが、かつては勤めている会社・役所は『定年まで住む家(終身雇用による定年までの経済保障)』のように認識されていたため、自分の会社・役所の社風や体質を強く否定したり不満をぶつける人は少なかったのである。

逆にハードワークの正社員・公務員であれば、勤め先を『擬似的な家』、上司・同僚を『擬似的な家族に近い存在』と思い込むくらいでないと、長年勤め上げることが難しい時代でもあり(今でもそういった会社は少なからずあるかもしれないが)、『家族主義経営』が日本型経営の特徴ともされていた。

『定時で終わって早く帰りたい(会社に夜遅くまで長居したくない)』というのは、つい最近まで日本の会社では口に出せないタブーに近いものであり、上司が帰らない限りは会社に残っていない(自分だけ早く帰りすぎる)と印象や査定が悪くなるといった思いも強いものがあった。

こういった意味合いで家族主義経営というと、特に今の若い人たちはげんなりするかもしれないが、逆説的に本当に従業員を家族同等の存在として大切に取り扱う運命共同体的な会社であれば、みんながみんなとはいかないにしても、従業員のかなりの割合が『会社のために多少の自己犠牲を払ってでも頑張ろう・長く会社にいることがそれほど苦痛ではない』と思えるようになることはある。

最近では『やりがい搾取』と言われてしまうかもしれないが、かつての『終身雇用・年功賃金(社員を簡単には見捨てずにできるだけ最後まで雇用と待遇を守っていく仕組み)』がセットであれば、家族主義経営の中で『会社への強い帰属感・忠誠心』が芽生えることはそれほど珍しいことでもなかったはずである。

『会社のために多少の自己犠牲を払ってでも頑張ろう・長く会社にいることがそれほど苦痛ではない』というと、そんな気持ちにはとてもなれないという人も多いかもしれないが、『学生時代のまともなバイト(一緒に働いているバイト同士の仲が良くて助け合いの空気がある職場)』であればかなりの割合の人が、ずっとバイト先の会社にいても苦痛ではなく、むしろ早めに終わっても休憩室に残ってバイト仲間とおしゃべりしたり(人が終わるまで待ってあげていたり)、夜遅くなっても帰りがけに一緒にお店・誰かの部屋に寄ってから帰った(何時間もおしゃべりした)という経験がある人は多いのではないかと思う。

上手くいっている家族主義経営というのはそういった『その場所にいることが自然で苦痛や違和感がない心理(積極的かつ自発的なその場へのコミット)』に近いが、学生のバイトの場合は『責任の軽さ(多くは定形の仕事をこなせば良くノルマなどもない)・時給制(働いた分だけ給料がきちんと貰える)・勤務年数の限定性(数年だけで終わりがある)・上下関係の緩さ(同世代のバイト同士では気軽にやりとりできるし遊び友達にもなれる)』があるので、仕事内容も難しくなり上下関係は厳しくなり責任も重くなるハードワークの正社員ではそう簡単にはいかないが。


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