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米軍撤退後のイラクに残される課題は『治安維持・テロの封じ込め・民生と社会インフラの再建・民主的な政治体制と選挙の維持』など山積しているが、国内の宗派・部族の対立をとりまとめるほどにマリキ政権の求心力が高まるとは思えない現状であり、『権力の空白・地方分権による内紛激化』が懸念されるように思う。日本は小泉政権時代に米国ブッシュ政権が推進するイラク戦争に賛同した経緯があり、自衛隊のPKO活動でサマワにも行っているが、今後も継続して民生援助(社会インフラ構築)や技術提供、経済支援、物資送付などの分野で『イラク復興支援・ODA』を続けていくべき責任もあるだろう。 イラクの民主的な政治体制の安定は、原油の9割以上の輸入を中東地域に頼っている日本の国益にも適うことだが、中東ではかつて米国が一方的に北朝鮮・イラクと並ぶ『悪の枢軸』と非難したイランの影響力が拡大しており、イランは北朝鮮と同様に『核兵器の開発・保有』によってアメリカからの自由化・民主化・世俗化の干渉をはね返そうと画策している。 またソ連時代のアフガン侵攻や赤化(共産化)政策によって、中東地域に一定の影響力を及ぼそうとし続けてきたロシアも、民主主義の装いをしたウラジーミル・プーチン+メドベージェフの長期独裁政権に国民が“ノー”を突きつける大規模なデモ活動が勃発している。プーチンの与党『統一ロシア』は下院選挙で不正をした(投票前に統一ロシアと書いた投票用紙を初めから投票箱に入れていたなど)も関わらず大きく議席を減らしており、ロシアの政治情勢も『政権交代を見据えた動揺期』に入っている。 ロシアではプーチン政権と(プーチンが影で影響力を及ぼす)メドベージェフ政権の強権的な政治運営の下で、『政治腐敗・贈収賄の汚職・既得権の固定化・自由な言論への圧力』などの問題が鬱積しており、それらに対するロシア国民の不満が『下院選の不正行為の暴露』で強い抗議行動となって爆発したように見える。世界各地で政治体制の変化や独裁体制への反発が高まっている中で、米議会は新たな『対イランの経済制裁措置』を決議しているが、この制裁はイラン中央銀行と相当額の取引関係のある外国の金融機関に対して、アメリカの金融機関とドルの取引をするのを禁止するもので、イラン経済に与えるインパクトはかなり大きくなると見られている。 このイランに対する経済措置には、イラン中央銀行に代金を振り込むことになる『イラン原油の輸入抑制』も含まれているが、『各国の石油取引・石油需要に対する影響』が大きいために、米国寄りの日本・韓国などでも、どこまで踏み込んだ『イラン経済制裁への協力』をするのかは不透明な部分もある。アフマディネジャド大統領が率いるイランはイスラーム原理主義的な政治体制を敷く反米国家であるが、イランが危険視される最大の理由は北朝鮮と同じく、『核開発の開発・保有(既存の世界秩序を否定する形の核兵器戦略)』を目指しているからであり、中東のみならず世界の平和秩序にとってイラン・北朝鮮は大きな危険因子ではある。 核開発を続けて挑発的な態度を取るイランに対して、国際社会は団結して『核開発の放棄』を促す厳しい態度で臨むべきであるが、『原油価格高騰・石油市場の混乱』は多くの先進国にとっても大きな損失や経済危機を招くものであるため、アメリカのイラン制裁措置に対して先進国がどこまで一致したアクションを取れるのかを注視したいと思う。 日本は原油輸入の約1割をイランに依存しているが、福島第一原発事故を受けた脱原発・減原発の流れの中で『電力不足・電気料金値上げの懸念』が高まっており、更なる原油価格高騰は日本にとっては回避したいところではあるが、そもそも経済制裁によってイラン・北朝鮮に核開発を断念させることができるのだろうか(逆に反米の抵抗力や反発を強めて核開発に固執するのではないか)という本質的な疑問も当然にある。 アメリカはイラン制裁を発動するに当たって、『世界的な石油の需給体制・経済環境』の維持にも一定の責任を負わなければならないと思うが、イラン制裁がどれだけ有効になるかはイランの石油の最大の輸入国である中国の対応にかかっている部分も大きい。昨年末に、金正日総書記が死去して三男・金正恩が後を継いだ独裁国家(疑似共産主義国家)の北朝鮮も含め、世界で核開発・挑発外交などのトラブルを起こしている国の後見人(後ろ盾)になっているのはやはり中国とロシアが多い。 イランは、国連安全保障理事会の四回にもにわたる制裁決議を無視して、ウラン濃縮活動を継続しているにも関わらず、未だに決定的な制裁を与えられていないが、それは中ロがどちらかというとイランの肩を持つような反応を示しているからである。中国とロシアは“政治的・経済的・軍事的な大国”であるものの、『自由主義・民主主義(普通選挙)・人権思想』といった欧米の平和秩序を安定させるイデオロギーや価値観を共有しているとは言えず、独裁国家の人権問題・核開発に対する国連の制裁決議でも拒否権を行使することが多い。 そのため、どうしても『欧米・日本の自由主義圏VS中ロ・中東・途上国の非自由主義圏(欧米中心の世界秩序への反対勢力)』という対立図式がでてきて、世界にある軍事的・政治的・独裁的(人権抑圧的)なトラブルの火種は温存されやすくなってしまう。だが、この問題は中国自身が『共産党一党独裁体制・人権抑圧と言論弾圧・情報統制とナショナル(自民族中心)な国民教育』などの問題を抱えている以上、容易には解決することができないものであり、2012年も『多極化する世界秩序・米中の二大大国の覇権主義(正義の理念のズレ)』といったフレームワークの中で変化が続いていきそうである。 アメリカは財政難と民意の変化、イラク戦争でのコストの大きさによって、『国防費削減に伴う国防戦略の見直し』を余儀なくされると同時に、オバマ大統領は二つ以上の軍事活動を同時並行させない『二正面戦略放棄+対中のアジア太平洋地域の重視』を打ち出している。 アメリカは大規模な地域紛争への対処とそれ以外の地域での『事前抑止』によって、軍事コストが大きくなる『二正面作戦』を回避するとしており、米軍は今後、『対テロなどの非正規戦・効率的で安定した核戦力維持・米本土の防衛』を中心的な任務として活動するという。アメリカの軍事的な影響力と中東への干渉度の低下で、世界情勢のパワーバランスは変化することになる可能性がでてきたが、アメリカと中国のG2体制が戦略的互恵関係を維持して、基本的な思想・価値観の対立を調整していけるかどうか、世界の多極化に柔軟な対応をとれるか否かが『世界秩序の鍵』になりそうである。 2011年の政治経済・国際情勢を振り返って解釈や感想を書いていこうと思って記事を書き始めたのだが、国際情勢の分析部分が長くなって、『日本の内政問題・民主党政権の総括・社会保障と税の一体改革と消費税増税』については十分な言及をすることができなかった。 民主党政権の評価については、国民に公約していたマニフェストの大半を放棄して、自民党時代の政策に逆戻りしたという意味で『政権交代の期待・意義』がほとんど失われたと見ているが、野田首相が繰り返し主張している消費税増税については過去にブログで『欧米の財政難による“世界経済の不況・円高”と日本のメディア・財界・世論が後押しする“消費税増税論”』や『『税の効率性』を示唆するラムゼイ・ルールと消費税の課税対象による『税の公平性』の問題 』といった記事も書いている。また政治問題について書く機会があれば、消費税増税の賛否やその影響などについても改めて考えてみたいと思う。 ■関連URI アメリカのイラク戦争終結と経済力・領土的野心を拡大させる中国の存在感:2011年のニュース回顧8 チュニジアのジャスミン革命・エジプトのムバラク政権崩壊を受けて揺れる中東の独裁政権:2 イスラエルのガザ侵攻とパレスチナ問題1:近代国家のナショナリズムとユダヤ人のシオニズム アメリカの『双子の赤字』の拡大の深刻化:好調な日本経済の抱える格差の問題 ■書籍紹介 |
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