カウンセリングルーム:Es Discovery

アクセスカウンタ

zoom RSS 境界性・自己愛性のパーソナリティ障害と自己愛の発達4:向上心と理想に支えられる健全な自己愛

<<   作成日時 : 2012/01/25 23:26   >>

なるほど(納得、参考になった、ヘー) ブログ気持玉 2 / トラックバック 1 / コメント 0

自分で自分を大切にしたり自分の能力・努力の価値を信じたりする“健全な自己愛”が無ければ、現状よりも自分の能力や状況を高めていこうとする『向上心』が持てず、自分が将来的にいつか到達したいと思う『理想』のイメージを構築することも難しくなります。

“病的な自己愛”では自分自身に自信を持って理想を目指したり、能力を向上しようとするのではなく、『他者の人格・感情の軽視』や『自己顕示性・見捨てられ不安』といったものが前面にでてきて、日常的な生活や仕事、人間関係に支障が生じてくるという点に大きな違いがあります。自己愛性パーソナリティ障害では『尊大さ・横柄さ・支配性』といった特徴がでやすく、境界性パーソナリティ障害では『見捨てられ不安・しがみつき・自傷や自殺企図による危機状況の間接的訴え(クライシスコール)』がでやすくなります。

H.コフートの自己心理学では、人間は誰もが発達早期に受けた心理的な傷つき(親子関係における幼児的万能感の挫折)を抱えているという『欠損モデル(defect model)』が前提になっており、この不可避的な欠損(傷つき)を補償しようとするところに『自己愛の起源・原型』があると考えます。3〜4歳の幼児期になると中核自己(nuclear self, 私が私であるという自意識)が形成されて、この中核自己によって自己愛の発達過程が進んでいきますが、コフートの発達理論は上記したように向上心と理想の極を目指していくので『双極自己理論(bipolar self theory)』と呼ばれたりもします。

双極自己には向上心の極を目指す『誇大自己(grandiose self)』と理想の極を目指す『理想化された親イマーゴ(idealized parent imago)』という二つの発達ラインがあります。

誇大自己は『共感的な親(反応性の良い支持してくれる親)』の下で順調に発達していき、他者(社会)と向き合っていく健全な自尊心や自分を引き上げようとする向上心の基盤になっていきますが、誇大自己の発達が非共感的な親やトラウマティックな体験によって障害されると、わがままで未熟な振る舞いが増えたり、傲慢な自己顕示欲が前面に出てしまいやすくなることがあります。

H.コフートは発達早期の母子関係を重視しましたが、現在では非共感的な冷たい親の影響だけではなく、フラストレーション(欲求不満)の過剰やトラウマ的な体験などの要因も関係しているとされます。自己心理学の『欠損モデル』では、乳児の心的構造の欠損(心的な外傷)に関して、乳児の内面世界で自己表象(大切で親しい他者のイメージ)の『断片化(fragmentation)』が起こることで、自己愛障害(クラスターBのパーソナリティ障害)の発症リスクが高まってしまうと考えられています。

誇大自己と並ぶ『理想化された親イマーゴ(idealized parent imago)』の発達ラインでは、親という表象(イマーゴ)や自己対象を理想化することで、それと自分とを同一化しようとする心理機制が働きます。幼児期から児童期にかけての親子関係を通して、子どもは『最適な欲求不満(optimal frustration)』を経験することで、自己対象である親を理想化していくのですが、その理想化に失敗すると『自己アイデンティティの不確実感・理想の不在』が高まり不安や依存を感じやすくなります。

この問題は精神分析では、『対象恒常性の欠如』として一般的に知られているものですが、自分の内面で安定的に自分を支えてくれるイメージとしての対象恒常性が確立されれば、『誇大自己に基づく過剰防衛』をする必要性がなくなり自己愛障害が起こりにくくなるのです。

子どもは自分に価値があるという実感や自分が誰かに評価されているという安心の『原初的体験』を親子関係やその後の友人関係などの中でしていき、そういった『自分の存在価値の実感・自分を認めてくれる他者の存在』によって健全で自律的な自己愛が発達していくことになります。幼少期〜青年期にかけて自分の存在や人格、能力を愛されたり認められたりする『共感的な承認体験・自己肯定』が極端に欠如してしまうと、自分で自分を愛するしかないという形の非適応的な自己愛が過剰になって、愛情と評価(賞賛)をすがりつくように求める誇大自己の弊害がでてきてしまうというのが自己心理学の考え方になります。

親子関係が上手くいかなくて孤独感を強めたり、家庭に居場所がなくて慢性的な不安感を感じたりすることで、『理想化された親イマーゴ』の形成が難しくなってしまうわけですが、理想化の自己対象(大切な他者のイメージ)を見失うと、衝動的・自虐的な行動が増えたり、抑うつ的な気分が目立ってきやすくなります。逆に、自分で自分を愛して高まる自己愛が異常に高まることで、『他者への共感性・思いやりの欠如(基本的信頼感の形成不全)』『自己中心的な世界観と振る舞い』という自己愛性パーソナリティの問題が出てきてしまうこともあります。






■関連URI
境界性・自己愛性のパーソナリティ障害と自己愛の発達3:コフートの自己心理学と愛情不足・過保護の影響

パーソナリティ障害(人格障害)における“内向性・外向性の過剰”と“自己顕示欲求の表現形態”

“子どもの幸福・成功”を応援できない親の心理的問題と見捨てられ不安:空の巣症候群・境界性人格障害

強迫性パーソナリティ障害の精神分析的な解釈:“完全主義・義務意識”と“罪悪感・自己嫌悪”の相関

■書籍紹介

現代精神分析における自己心理学―コフートの治療的遺産
北大路書房
フィル モロン

amazon.co.jpで買う
Amazonアソシエイト by 現代精神分析における自己心理学―コフートの治療的遺産 の詳しい情報を見る / ウェブリブログ商品ポータル


テーマ

関連テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ
気持玉数 : 2
なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー)

トラックバック(1件)

タイトル (本文) ブログ名/日時
H.コフートの“誇大自己”と“理想化された親イマーゴ”から見る境界性パーソナリティ障害:1
前回の記事で説明したH.コフートの自己心理学では、向上心を伴う『誇大自己(grandiose self)』と理想を目指していく『理想化された親イマーゴ(idealized parent imago)』が相互作用することで進んでいく心的構造の形成過程を『変容性内在化(transmuting internalization)』といいます。H.コフートの自己心理学では、自己愛性・境界性・演技性などクラスターBのパーソナリティ障害の人格形成過程は、『変容性内在化(transmuting inter... ...続きを見る
カウンセリングルーム:Es Discov...
2012/02/18 17:04

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文



コンテンツ&本の紹介

Es Discovery's Encyclopedia(百科事典的なアーカイブ)

ESD ブックストア(インスタントストアで色々なジャンルの本を紹介しています!)

心理学の事典や臨床心理学の概説書

S.フロイトとC.G.ユングの書籍
スポンサーリンク


ブログアーカイヴ
2005年
3月4月5月6月7月8月9月10月11月12月
2006年
1月2月3月4月5月6月7月8月9月10月11月12月
2007年
1月2月3月4月5月6月7月8月9月10月11月12月
2008年
1月2月3月4月5月6月7月8月9月10月11月12月
2009年
1月2月3月4月5月6月7月8月9月10月11月12月
2010年
1月2月3月4月5月6月7月8月9月10月11月12月
2011年
1月2月3月4月5月6月7月8月9月10月11月12月
2012年
1月2月3月4月5月6月7月8月9月10月11月12月
2013年
1月2月3月4月5月6月7月8月9月10月11月12月
2014年
1月2月3月4月5月6月7月8月9月10月11月12月
2015年
1月2月3月4月5月6月7月8月9月10月11月12月
2016年
1月2月3月4月5月6月7月8月9月10月11月12月
境界性・自己愛性のパーソナリティ障害と自己愛の発達4:向上心と理想に支えられる健全な自己愛 カウンセリングルーム:Es Discovery/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる