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zoom RSS 境界性・自己愛性のパーソナリティ障害と自己愛の発達2:自己アイデンティティの脆弱性と依存性

<<   作成日時 : 2012/01/22 12:24   >>

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精神分析のリビドー発達論では、自己愛障害(クラスターB)とは『本能変遷(自体愛→自己愛→対象愛)』を停滞させられる精神発達過程の障害によって発症するものであり、『トラウマ(愛情の欠落あるいは過剰な溺愛)を受けたと想定される早期発達段階』への固着・退行によってその症状形成のメカニズムが説明されています。

自己愛(self-love)が過剰になり制御できなくなる事によって起こってくるパーソナリティ構造(人格構造)の特徴や問題、性格行動パターンには、主に以下のようなものがあります。これらの特徴の多くはクラスターBのパーソナリティ障害とオーバーラップ(重複)しています。
1.自己中心的(視野狭窄的)な世界観や人間関係の捉え方。

2.自己と他者の境界線の曖昧さ

3.他者に対する依存レベルと要求レベルの高さ。

4.孤独に対する耐性の低さと承認欲求(他者から肯定されたい欲求)の強さ。

5.他者に対する共感性の低さと他者の内面・心情に対する関心(想像力)の乏しさ。

リビドー発達の本能変遷が順調に進んでいけば、誰かと関係を持ちたいという人間の本性的欲求のベクトルは『自己→自己外部の家族→家族外部の他者(異性)』へと移行していきます。

しかし、何らかの精神発達上の問題が生じて『(早期発達段階への)固着・退行』が起こると、『自己外部の家族・親しい人との関わり』において、自己と対象の同一化(過度の依存・要求)が起きやすくなります。

自分と同等の存在として認識する他者(対象)のことを、精神分析では『自己対象』と呼びますが、自己愛障害では『自己と自己対象との境界線』が薄まってしまい、自己対象(親しい他者)にも自分と同じような考え方・接し方をして欲しいという欲求が強くなり過ぎてしまうのです。

しかし実際には他者には他者の人格(内的構造)があり、他者には他者の生活・仕事・人間関係の都合があるわけですから、どんなに親しくて気心の知れている家族・恋人・親友であっても、『自分の思い通りの反応・愛情供給・承認』を得るというのは原理的に不可能であり、ここに自己愛障害に特有の『自己と他者との不適切な距離感の問題(依存と要求の過剰によるトラブル)』が生まれやすくなります。

自己と他者の境界線が曖昧になって、自他の同一化の心理規制が強くなると、『他者の存在・愛情(承認)』に一方的かつ過剰に依存している自己アイデンティティは非常に脆弱なものになりやすく、自分が信頼していたり好きだったりする他者が少しでも『自分の思いに反する反応・対応・拒絶』をすると、自己アイデンティティが拡散して自己否定感や自傷行為の衝動が強まるリスクが高くなります。

そういった自己アイデンティティの脆弱性や他者への依存性(要求性)が顕著に現れてくるパーソナリティ障害が、“見捨てられ不安・自傷行為・希死念慮(自殺企図)・衝動性・各種の依存症”の特徴を持つ境界性パーソナリティ障害です。

また、外見的には自分に対する自信が高くてしっかりしているように見える自己愛性パーソナリティ障害にも、“他者からの拒絶に対する弱さ・他者への共感性の欠如からくる孤独感・仮想的な万能感に対する虚しさ・対等な相手とコミュニケーションできない寂しさ”などがあり、これらも自己アイデンティティの脆弱性(他者の反応への依存性)として理解することができるでしょう。一見すると、自分の能力や魅力、才覚に自信がありそうに見えるのですが、自己と他者の対等で共感的な人間関係を作り上げることができなかったり、些細な批判や否定にも傷つきやすいために、『慢性的な自己不全感・孤独感』をどうしても抱え込みやすくなります。表面的な強さや自信、パワフルな印象とは裏腹に、『自分を否定されないための防御壁(自分の能力や実績についての自己顕示による自己防衛機制)』が崩れかかった時には、自己アイデンティティが極めて脆弱になりストレス耐性もほとんど無くなってしまうのです。

本能変遷の持つ発達上の意味は、『閉鎖的・依存的な家族関係(内の関係)』から『開放的・自立的な社会関係(外の関係)』へと行動範囲や人間関係を広げていくということであり、その結果として社会性(環境適応)が向上したり、異性関係(婚姻・出産育児)が確立されたりといった発達上の成果を得ることもできます。

S.フロイトが言及した思春期以降に他者を尊重できず愛せなくなる“二次的ナルシシズム”では、他者に愛されたい守られたいという『被保護欲求・愛着の要求』が過剰になると境界性パーソナリティ障害に見られる“他者の愛情へのしがみつき”が見られやすくなります。更に、他者に褒められたい自分が優位に立ちたいという『支配欲求・自己顕示欲求』が過剰になると自己愛性パーソナリティ障害に見られる“他者への共感性(他者の人格を尊重する感情)の欠如”が見られやすくなります。






■関連URI
境界性・自己愛性のパーソナリティ障害と自己愛の発達1:S.フロイトの二次的ナルシシズム論

境界性パーソナリティ障害の性格行動パターンの特徴と早期母子関係に注目する原因論の移り変わり

古典的なヒステリー性格の特徴と自己愛性人格障害:他者への信頼感と共感性の視点

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