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zoom RSS TPP参加のメリット・デメリットをどのように考えるか1:モノの貿易自由化と各分野の規制緩和・基準統一

<<   作成日時 : 2011/10/23 17:30   >>

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TPP(環太平洋経済連携協定, Trans-Pacific Partnership)の交渉参加は菅政権の時代に『日本経済の成長戦略』として打ち出されていましたが、野田首相が11月にハワイで開かれるアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議でTPPの交渉に参加するという意向を示しました。

『TPP参加』に関しては、野党だけではなく民主党党内でも参加すべきか否かで激しく意見が割れており、特に農政分野や医療分野に関連する議員の反対が強くなっています。国民の多くは、TPPという名前は知っていても『TPPの詳しい内容・影響』については知らない事が多く、賛成か反対かの明確な意見を持つための基本情報が不足している状態にあるように感じます。

TPPとは平たく言えば、太平洋を取り巻いているオセアニア、東南アジア、東アジア、南北アメリカの国々の間で関税・産業規制・労働規制をはじめとする貿易障壁を無くして、『自由貿易圏』を形成しようとする国際協定のことです。

締結した初期の段階で、どの分野をどれくらい自由化するのか、特定品目の関税撤廃を延期できるのか(期間限定の例外品目を設けられるのか)というTPPの具体的な内容については、参加交渉のやり取りで詰めていくことになるので、現状ではTPP締結による個別的な影響について論じることまではできないと思います。原則的には、すべての品目の関税を撤廃する協定ですが、アメリカなども例外品目を設けたい意図があるという報道もあり、即座にすべての品目の関税を撤廃するほど厳しい協定になるのかは不透明です。

最終的には、加盟国間で工業品や農業品をはじめとする全品目の『10年以内の例外無しの関税撤廃』が目指されており、金融・医療・通信サービスや労働力の移動、知的財産権、雇用規制(解雇規制)、公共事業参加などに関連する『総合的な経済連携の規制緩和(基準統一化)』も進めていくことが確認されています。その影響が各国にとって相当に大きなものになることが分かりますが、日本にとってはモノの輸出入の自由化という面では『開放すべき分野』が農業部門くらいしか残っておらず、TPP締結は『工業品の輸出における不利益を回避する』という意味合いが大きくなっています。

『労働力の移転(外国人労働者の受け入れ・サービス業の自由化)』に関しては、さすがに単純労働力を含む全ての産業分野で全面的な規制緩和をすることは無く、そういう条件であれば日本はTPPを締結しないと思います。

しかし、一部の専門職や労働需要の大きい業種(日本人の求職者が少ない供給不足の業種)に関しては、現在のEPA(経済連携協定)以上のレベルで、外国人労働者を受け容れる可能性はあるでしょう。原則としては、TPPは国境を越える『モノの輸出入の自由化=本格的な産業のグローバル化』を目指すものであり、サービスや医療、金融投資、雇用、安全基準などに関係する『制度的規制やルールの統一化』を目指すものだと考えることができます。

野田首相が言うように、日本は工業品目での輸出競争力(ブランド力・品質の水準)があるのでTPP締結による『自由貿易のメリット』は大きく、TPPによって経済成長が促進される可能性は高いと思います。それは裏返せば、TPPに参加せずに日本だけが輸出品に関税を掛けられることによる『輸出競争力低下の不利益』が大きいことも意味しています。

一方で、TPPが日本経済全体のGDPを押し上げて、経団連に加盟しているような大企業(輸出事業者)にとってプラスになるとしても、様々な職業・仕事に就いている『国民ひとりひとり』にとってプラスになるかは分からない部分が多くあります。輸出産業に従事しているサラリーマンであっても、TPPで会社の売上・利益が増えることによって自分自身の給料が増やしてもらえるという保証はなく、企業は増えた利益を内部留保や設備投資、新規開拓のほうに振り向けるかもしれません。

プラスになる人もいればマイナスになる人もいるわけで、日本人全員にとってTPPがプラスになるわけではないという事は言えますが、その部分は『日本経済(GDP)を成長させるメリット』『マイナスになる人のボリュームの大きさ(具体的なデメリットの深刻さ)』の利益衡量で判断するしかないと思います。農業に従事している人にとっては、TPP参加による『安価な外国産農業品の流入』は不利益のほうが大きいでしょうし、規制緩和が行われる分野では、日本人の雇用が減少したり製品の安全性基準が低くなったりする問題も出てくる可能性があります。

TPPの歴史は2006年にシンガポール、ブルネイ、ニュージーランド、チリの4ヶ国の間でFTA(自由貿易協定)が締結されたことに始まり、そこにアメリカ、オーストラリア、ベトナム、ペルー、マレーシアの加盟交渉国5ヶ国が加わって拡大交渉を行っています。ここにハワイのAPECで日本が交渉に参加すると10ヶ国でのTPPが議論されることになりますが、GDPの規模ではアメリカと日本が突出していることから(日米のGDP合計でTPP加盟国の91%を占めることから)、TPPは実質的には『日米FTA(自由貿易協定)』になるという見方も出ています。






■関連URI
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バラク・オバマ大統領の誕生とアメリカ国民の熱狂:経済・外交の試練を超えてアメリカ再生の契機を掴めるか

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