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help RSS 赤ちゃん(新生児)の視覚・聴覚の発達とヒトの乳幼児期の特殊性2:脳の発達の早さとメルツォフの実験

<<   作成日時 : 2011/06/29 04:49   >>

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モーツァルトやショパンのようなクラシック音楽を聴かせると、胎児の知的発育が良くなったり知能指数(IQ)の上昇率が高くなるという『胎教』もありますが、胎教には比較実験(胎教してない子との比較)・縦断研究(成長後の知能発達の研究)で示されるような科学的根拠はないものの、音楽で母親の心身状態をリラックスさせたり子どもに音の刺激を与えることは、胎内での『赤ちゃんの居心地』を良くするといった効果はあるでしょう。赤ちゃんの脳の発達では、脳波の活動性が妊娠20週目以降に高まり始め、その脳波の動きの発生は『レム睡眠(REM睡眠)の発生』を意味していると解釈できますが、胎児は夢を見たりして脳が活動しながら眠っているレム睡眠(浅い眠り)を繰り返すようになります。

レム睡眠のREMとは“Rapid Eye Movement(高速眼球運動)”の意味ですが、脳波の動きからレム睡眠が増加していくと推測される20〜31週目の時期には、『眼球運動・呼吸運動』をある程度制御できるレベルの中枢神経系(脳機構)が発達してきていると考えられるのです。聴覚を司る器官の構造・神経回路は出産する前の胎児期で概ね完成しますが、妊娠5ヶ月頃には聴覚器官としての内耳が形成され、妊娠9ヶ月頃の出産直前には内耳から大脳・脳幹にまでつながる神経伝達回路(ニューロンネットワーク)が完成することになります。

そのため、特別に準備した音源を聴かせる胎教をするかしないかに関わらず、赤ちゃんには『出産前の聴覚刺激の記憶(馴染みのある音のリズム・種類などの記憶』がうっすらと残っていると推測できるのです。胎内環境に類似させた音を作って聴かせると、赤ちゃんが落ち着いてリラックスしやすい(泣きやみやすく母乳や哺乳瓶を吸いやすい)というのも、聴覚的な記憶の名残に反応しているのでしょう。

赤ちゃんの視覚には『人の顔(特に動きのある顔)』をそれ以外のモノよりも好んで見やすいという選好性が見られるように、赤ちゃんの聴覚にも『人間の話す言葉(言語刺激)』をそれ以外の物音・雑音よりも好んで反応しやすいという傾向が見られますが、これは人間が他者との相互的なコミュニケーションや協働・交渉によって社会環境を作り上げていく能力の原点になっています。

『人の顔・言語的刺激』を選好して反応したり真似をしたりする生得的な傾向性は、人間関係や言語の習得、社会生活への適応性を高めてくれますが、これらの傾向性が大きく障害されると『広汎性発達障害(自閉症・アスペルガー障害)』に特有の人間関係がスムーズにいかないコミュニケーション障害が起こってくることがあります。

広汎性発達障害のコミュニケーション障害とは具体的に言えば、『人の目を見て話せない・人にほとんど興味がなく母親への愛着も弱い・言葉の発達が遅れる・相手の感情や意図を上手く推測できない・場違いな行動や発言をしてしまう・対人的な状況の判断ができない・臨機応変な柔軟な反応ができない』ですが、1歳以降の乳児期にも視線を合わせてくれなかったり、人や言語に対する興味が極端に乏しかったりする傾向が出てくることがあります。

『学び』『まねび(真似び)』を語源にするという説もありますが、赤ちゃんの学習能力の原点も『親(他者)の行動・表情・発話』を真似するということにあります。新生児は視覚の焦点を合わせる能力が未熟なため、大人の表情や行動をどれくらい模倣できるかには諸説ありますが、ワシントン大学のアンドルー・N・メルツォフ(Andrew N.Meltzoff)の実験では、生後3週間程度の赤ちゃんでも『口を突き出す・口を開く・舌を突き出す・手の指の運動』の4つの動きを真似できることが示されています。

メルツォフの発達心理学の研究では、新生児が一定の知識を持っており、一般に思われているよりも高い模倣の学習能力(知能の起源)を備えている事が示されていますが、それは育児をしている母親の生活実感(それほど高度な学習をしているようには見えない感覚)と異なっている事もまた事実です。そもそも『他人の動きを模倣・真似する』というのは、かなり高度な学習行動であり認知(感覚)と運動の協応行動なのですが、新生児の模倣の最大の特徴は『客観的な動きそのもの』を真似しているのではなく、『人間の顔らしきものの動き』に対して生得的な反応を返しているという事にあります。

生後1ヶ月や4ヶ月の赤ちゃんに、『人の顔の図版』を見せて反応を観察すると、『人間らしさの特徴(目・口がありその配置が正しい図版)』に対して選択的な模倣行動を見せやすいことが確認されており、どんな図版や対象に対しても模倣行動ができるわけではないのです。生後2ヶ月までの赤ちゃんは、常識的に考えれば極めて無力・未熟であり、その学習能力も『実験的な環境』を整えた上で初めて、確率的な傾向として確かめることができるものなのです。

生後2ヶ月までは大脳皮質の活動も限定的で、分かりやすく観察できる学習能力も乏しいのですが、赤ちゃんは『母親との相互的なコミュニケーション』を少しでも多くしようとするかのように、『覚醒‐まどろみ・睡眠の周期性』を示します。出産後すぐの赤ちゃんは、約2時間ほどは覚醒とまどろみを繰り返す『超覚醒期』の状態を示し、この時に産んでくれた母親と視線が合う可能性が高くなるのです。産まれたばかりの赤ちゃんのぱっちりと開いた目を見つめることができた母親は、改めてわが子を可愛くて守りたいと実感することができ、母子間の愛着(アタッチメント)が形成される始点にもなってきます。

産まれてすぐの赤ちゃんは慣れない外部環境や人間関係に適応するために、目が覚めている『覚醒期』には周囲の様子をぼんやりと見たり、お母さんらしき人間の顔を見たりしますが、覚醒期とは『外部の情報をインプットしている時間』でもあります。この覚醒期が起こりやすいのは『泣いた後・授乳後のまどろみの後』であり、母親が側にいてくれる時間帯に覚醒しやすい生理的周期があると考えられていますが、母親と目線があったり微笑を交わしたりすることで母子関係の愛着・情緒的なつながりがより深まっていくことになります。

新生児の『泣き・ぐずつきの行動』は生存を維持して保護を求めるための生理的本能でもありますが、自分の世話をしてくれる母親や周囲の大人に対して『お腹が空いた・寂しくて不安だ・スキンシップをして欲しい』というメッセージを伝える疑似言語的な役割を果たしており、生後4週間くらいになると泣いた後に周囲を見渡す(誰か来ているか確認する)という探索行動が見られ始めます。

2ヶ月児くらいまで視覚的・聴覚的な探索行動が発達してくると、実際に抱きかかえたり乳首をしゃぶらせたりしなくても、母親が声を掛けてあげたり近くに寄って顔を見せて上げたりするだけで、泣きやみやすくなってきますが、どういったあやしかたや接し方で泣き・ぐずつきが収まるか(どのくらいのスピードで視聴覚の発達が進むか)には大きな個人差があります。






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J.ピアジェとE.S.スペルケの“乳児のモノ(対象)の認識”に関する実験1:ピアジェの思考発達理論
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