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zoom RSS アパシーシンドロームによる無気力化・無関心化と自己アイデンティティ拡散:ウェブサイトの更新

<<   作成日時 : 2010/12/11 00:24   >>

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大学生の『学業・進路選択=本業』に関する無気力や意欲減退が持続する状態を、ハーバード大学の心理学者P.A.ウォルターズはスチューデント・アパシー(student apathy)という概念で表現しましたが、アパシー(意欲減退)の問題は青年期の大学生に限らずさまざまな年代や状況で起こる可能性があります。

精神科医の笠原嘉は、人生の主要な課題や活動から退却して長期のモラトリアム(社会的選択の猶予期間)にはまり込む状態に対し『退却神経症』という疾病概念を考案しましたが、退却神経症は客観的な競争状況・評価場面から距離を置くことによって、自己の自尊心や仮説的アイデンティティを想像的に守ろうとする防衛機制の投影でもあります。

現代の学校教育の現場では、教師・社会規範(常識)に対して暴力や非行行為で反発する分かりやすい『反社会的行動』の頻度は減少しており、学校に行かなくなる不登校や各種の課題・行事に対する無関心な態度、進路選択に自分の意思を持たないといった『非社会的行動』の問題の対応のほうが難しくなっています。

マクロな社会学や哲学の視点から見れば、アパシー・シンドローム(意欲減退症候群)は、文明社会における管理化された人生・労働への反発や競争社会における他者との相対比較や自己意識への不適応として解釈できるでしょうし、雇用が減少して自分の希望・能力と仕事内容の乖離が進む中での職業適応の困難や仕事の細分化やマニュアル化によるルーティンワークの認識の高まりといった問題も指摘できるかもしれません。

アパシー・シンドロームの概略については過去の記事でも書いていますが、社会の中で自分の職業的役割や進むべき方向性を定めることができないという『自己アイデンティティの拡散』や自分の努力・行動では自分の望んでいる結果に近づくことなどできないという『諦観を生む非随伴性認知・自己効力感の喪失』とも関係していますが、どうすれば自分が前向きに生きていく為の動機づけ(意欲)を高められるかということは現代社会において重要性の高い問題の一つになりつつあります。

ウェブサイトの以下の記事では、『無力感・意欲減退・努力の消失の形成』を説明するエイブラムソンの改訂学習性無力感理論を引いて、無力感がどのような認知と原因帰属のプロセスを経て強化されるかを解説したりしていますが、高校生・大学生など各発達段階で現れやすいアパシー(意欲減退)の質や無気力の理由には若干の違いもあるでしょう。

何かを自発的にやりたいと感じ、困難な課題にも自分なりにチャレンジしようと思い、社会参加して何らかの帰属感・達成感を得たいと思う『動機づけの心理』については、これをすれば必ずやる気や向上心、参加欲求が起こるという画一の答えは無いですが、自分にとっての社会・仕事に対する適応方略を実践するに当たって、『必要限度のモチベーション・意欲』を高めるきっかけ(何が自分の意欲や関心、行動を突き動かしやすいのかのポイント)を掴むことが大切だと思います。

現代のアパシー(無気力)と不登校・ひきこもりの問題

アパシー(無気力)の形成と改訂学習性無力感理論・自己注目理論

発達段階における無気力の特性とスチューデント・アパシーの定義











■関連URI
青年期のモラトリアムや中年期のアイデンティティの危機と関連するアパシー・シンドローム(選択的退却)

ストレスフルな現代社会における『自己への適応』と『環境への適応』:自由主義と自己アイデンティティ形成

青年期危機説と青年期平穏説:学校・企業・家庭の環境への適応と社会的自立の問題

■書籍紹介

青年期の本質
ミネルヴァ書房
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“依存の極”と相関するパーソナリティ障害・人格特性とアパシー1:依存性パーソナリティ障害
アパシーシンドローム(意欲減退症候群)と関係する悩みの一つに、『自分のやりたいこと・好きなこと』が見つからないという事があり、何もやりたい事がないから意欲・やる気が大きく低下して、モラトリアム(社会職業上の不決断)が長く続きやすくなります。 ...続きを見る
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2011/01/18 21:53
努力する事で得られるものと要求水準の高さ・幸福の実感2:苦しまない努力をするための方法
『成果のでにくい努力の繰り返し』で問題になるのは、自己評価が下がって自己価値を実感できなくなるため、強迫的・義務的に何かに急き立てられてする努力が過剰になりやすいということです。その努力の過剰(努力による疲弊・燃え尽き)の背景にあるのは、現代社会のアノミーや格差感が生み出した『普通の幸福のハードルの高さ』です。普通の幸福とは何なのかについて、厳密な掘り下げをしていたら切りがないですが、一般的にはそれなりの企業に就職して安定した給料を貰い、一定の年齢で結婚・出産育児などを経験し、『仕事の充実... ...続きを見る
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2011/04/02 22:02
やる気を生む内的モチベーションと外的インセンティブ2:ヒューリスティックな仕事と意識の自由度
外部的な報酬や自己利益の最大化にこだわらない活動は、ウェブ上のオープンソースやQ&Aの回答に留まるものではなく、近年では『利潤の最大化』を追求する営利企業とは異なる、『良い社会変化の促進・社会貢献の最大化』を追求する社会起業(ソーシャル・アントレプレナーシップ)のコンセプトもでてきています。社会起業家の活動や概念は、途上国で低所得者向けの融資を行う『グラミン銀行』を創設したムハマド・ユヌスの登場によって更に広まりましたが、国際的な規模を持つNGO・NPOから、地域社会に根ざした草の根的な家... ...続きを見る
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2011/04/09 19:44
社会的ひきこもりの定義と心理行動パターン2:非社会的問題行動と相関する心理社会的な要因の分類
人間の『生の本能』を有効活用する『森田療法』を創始した森田正馬(もりたまさたけ)は、他人から見られたり他人と話す場面において、自分が他人に不快な影響を与えないか、相手から自分がバカにされないかという過剰な不安が生じ、その結果として対人関係から逃避してしまう神経症的病理を『森田神経質』と名づけた。 ...続きを見る
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2011/07/08 01:09
新型うつ病の労働適応とポストモダンの環境管理型権力5:精神医学的な正常‐異常の基準・働く事の本質
前回の記事の続きになりますが、ポストモダン(後期近代)の社会では、教育制度や命令規則によって行動基準を内面化させる“規律訓練型システム(権力)”に代わって、本人が操作されていると気づかないうちに環境条件の調整によって本人の行動選択を無意識的に誘導するという“環境管理型システム(権力)”が中心になると考えられています。しかし、労働の動機づけや仕事のストレス対応、職場適応といった部分では環境管理型システムも余り上手く作用していないのではないかと思います。 ...続きを見る
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2011/12/02 14:17
自己愛パーソナリティーにおける夢・理想の追求と挫折:『なりたい自分』をどこまで目指すか
自己愛性パーソナリティーの特徴は『自己愛の傷つきに対する脆弱さ』と『誇大な自己像を実現して自己愛を満たすための努力』である。自己愛の傷つきに対する脆弱さでは、周囲の小さな世界で認められていた自己愛が深く傷つけられると思春期挫折症候群にも似た絶望感や劣等感、虚無感、無気力に陥ってなかなか立ち直れなくなる(実際の自分に見合った自己イメージや周囲からの対応ではどうしても納得できない)ということにもなりやすい。 ...続きを見る
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2016/09/03 00:04
パーソナリティー障害の『自己機能』と『対人関係機能』の分類:他者・社会状況を回避する心理
回避性パーソナリティーの認知傾向の特徴は、『マイナス要因の過大評価+プラス要因の過小評価』である。自己愛性パーソナリティーでは『実際以上に自分を自己中心的(わがまま)に高く評価する認知傾向』が見られるが、回避性パーソナリティーでは『実際以上に自分を悲観的(卑屈)に低く評価する認知傾向』が見られる。 ...続きを見る
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2017/06/15 15:59

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