カウンセリングルーム:Es Discovery

アクセスカウンタ

help RSS 日本経済の産業構造の転換と新卒者の就職活動の過熱化:採用面接では応募者の何が評価されるのか?

<<   作成日時 : 2010/11/27 08:03   >>

なるほど(納得、参考になった、ヘー) ブログ気持玉 2 / トラックバック 0 / コメント 0

前回の記事の続きになるが、日本で雇用・仕事の量が減少していて、一つずつの雇用の質(福利厚生・給与水準)も低下傾向にある原因は、“製造業・汎用業種・従来産業”から“サービス業・専門業種・先端産業”への『産業構造の転換』であり、企業の国際競争の激化とコスト削減の経営戦略が産業構造の転換を否応無しに進めている。

国内の生産コストが高くなって製造業が衰退しても、それ以外のサービス業やIT・金融・教育・人材派遣・医療介護などの産業が盛んになっているのであれば良いではないかという意見もあるが、成長期の競争力のある製造業と比較すると、それ以外の産業は雇用吸収力や人材育成の期間・コスト、一人当たりの平均労賃、公的保険の財政コストなどの問題点を抱え込みやすい。

医療の需要増加は、確かに医師・看護師・作業療法士など専門職として一定以上の待遇を受けられる雇用を生み出すが、医療事業の多くは公的保険(社会保険・国民健康保険)の財源があって初めて利益を生み出せる仕組みとなっており、そもそも『純粋な利益』を生み出すことを目的としていないことが多い。

また、多くの求職者が医療関連職に就きたいと思ってもすぐに就ける仕事は少なく、大学教育(専門学校教育)や資格取得、現地実習などのトレーニングに一定以上の時間を費やしてからでないと就業できず、行政の雇用対策としてはコストが高くなり過ぎる。純粋な利益を生み出せず、国・地方の財政に頼らざるを得ないという意味では、介護事業も類似の構造的問題(コスト体質)を抱えており、『医療・介護の雇用と発展』は『それ以外の分野の雇用(社会保険に加入して医療費支払のできる患者・利用者の安定雇用)』に依拠している部分が大きい。

国際競争力があり『内需+輸出』によって利益を積み重ねられるという条件を満たす製造業は、被用者(労働者)を雇えば雇うほど儲かるというビジネスモデルが成り立ち、過剰生産で在庫を積み重ねない限りは、売れている商品を更に低コスト化して大量生産することで大きな利益につなげることができる。

だが、日本のような『成熟した市場の需要』を事前に予測することは難しく、高度経済成長期の『三種の神器(白物家電)・自動車』のように作れば必ず売れるというアイテムが減って、過剰生産による在庫リスクが大きくなった。そのため、製品が大量に売れる時には労働者を多く雇い、需要が減って売れなくなったら労働者を減らすという『(景気の波に対応可能な)雇用の調整弁』として派遣労働者が雇われるようになったが、派遣切り(不安定雇用)による長期失業や生活困窮の増加などが問題視された。

民主党政権では『派遣労働の規制・法人税減税』が進められているが、派遣を減らして企業の税金を減らせば、正規雇用(正社員)が増加するのかというと、企業が『正社員の長期雇用』を可能と判断するだけの見通しと財務諸表の数字の裏づけが無ければ『正規雇用の量』は増えない恐れが強い。

日本国内で生産してもコストが高くて価格競争で勝てないと判断すれば生産拠点のオフショア(海外移転)が進み、自社で直接雇用するだけの中長期の業績の見通しが立たない(企業体力が落ちている)と判断すれば各種部門のアウトソーシング(非正規雇用者への外部委託)が行われることになる。日本の労働市場の問題点の一つは、相対的に待遇・福利の良い大企業の正規雇用のポストが少なくなり既得権化しているので、『新卒段階の採用の可否』が賃金労働・職業キャリア全体に及ぼす影響が極めて大きくなり、『就活競争』が前倒しされて過熱せざるを得ないという事である。

日本の労働市場の流動性の低さや中途採用で非正規から再チャレンジすることの難しさは、『新卒一括採用の慣行(新卒時にキャリアのアウトラインが決まりやすい)・解雇規制の厳しさ(いったん雇用すると長期雇用が前提で人が入れ替わりにくい)』にあるが、労働市場を活性化させて『新卒者の就活』以外の就職活動にも内実を持たせるには、職業キャリアのプロセスを多様化させて新卒以外の採用枠の間口を広げていく必要があるだろう。

新卒者の就職内定率の低下によって『就職氷河期の再来』とも言われているが、厳しい採用状況にあっても多くの会社から内定を得ているような学生もいれば、何十社と受けてもなかなか内定を貰えない学生もいるが、就職活動で良い結果を出せるか否かの違いは何に由来しているのだろうか。

学歴・成績・難関資格(専門資格)・活動実績など自分の潜在能力の高さや基本スキルの習得を示す“シグナル効果”によるスクリーニングが就職活動にかなり影響していることは間違いないが、それ以外にも『面接の受け方(自己アピールや質問・基本マナーや身なり・受け答えの仕方など)』によって採用のされやすさ(内定のもらいやすさ)は変わってくる。

資格や学校についていうならば『業務独占の資格制度と直結した特定の職業(医師・看護師・介護士・薬剤師・コメディカル・理美容・各種技術者など)』に就くことを入学段階から目的にしている学部や専門学校であれば、(就職後の職場定着率はさまざまだろうが)就職率は100%に近くなることが多い。なので、企業で雇用されるサラリーマンとしてのキャリアだけに頼らず、特定分野で資格を取って手に職をつけていこう(随時募集のあるような職種の資格を取っておこう)というのも一つの有効な選択ではある。

『企業の採用面接の受け方』『面接官とのコミュニケーションの取り方』については、膨大な書籍やパンフレットなどでマニュアル化されているが、マニュアル化された一般ルールや常識的マナーを守ってミスをしなければ採用されるというわけではなく、それらの一般ルールや基本マナーを踏まえた上で『自分自身の適職性と意欲・企業風土への適応性と業界への関心の高さ・人物としての魅力と企業に役立つ個性』を効果的に売り込んでいくことが重要になる。

採用面接を受けるに当たっての一般ルールやマナー、受け答えの仕方は『きちんとしたスーツの着こなしと清潔感のある身なり・大きな声でハキハキとした受け答え・面接の初めと終わりの挨拶やお辞儀の角度』といった感じでマニュアル化されているが、これらはやろうと思えばほぼ全てのやる気のある人ができることなので、『自分の他者との差異化・採用の決定的な要因』にはそれほど役に立つわけではないだろう。

また、ファッションや美容・コスメなど、業界によってドレスコード(仕事に要請される服装・雰囲気)は大きく変わり髪形やヘアカラーの制約が殆ど無い所もあるが、一般的なサラリーマンの求職では服装や髪型は派手(奇抜)過ぎず、ベーシックにまとめた黒髪(濃い茶)にリクルートスーツのスタイルにならざるを得ない。

採用面接では『企業が雇いたいと思う人材・面接官が一緒に働きたいと感じる人材』『自分の受け答えや表情態度が面接官(担当者)に与える印象・評価』が一致している度合いが高いほど内定を得られる可能性が高くなるが、そのためには企業がどのような人材を求めているのか、自分がその会社の上司であればどのような新入社員に入社して欲しいと思うのかについて、企業情報(事前リサーチ)に基づく合理的な推測を働かせたり、面接担当者の目線で自分に対する評価のイマジネーションを働かせたりすると良いかもしれない。

企業が雇いたいと思い面接官が一緒に働きたいと思う人材には、職種やキャリアによって色々な条件や特徴があるだろうが、会社員として共通する一般的な職業適性としては『企業や業界への強い関心を持っている・与えられた職務を果たす責任感がある・職務や仕事内容を改善していこうとする意欲がある・ストレス耐性があって長く勤められる・多様な人と上手くコミュニケーションできる柔軟性がある・組織の一員としての役割や立場を踏まえた行動ができる・業務に必要なスキルや経験を学ぼうとする熱意』などがあり、それらの適性・特徴は面接のプロセスの中でさまざまな言葉や表情、返答の仕方、態度などによって現れてくる。

上記した『一般的な職業適性』に加えて、学歴・成績・関連資格・活動実績などのシグナル効果も強みとなるが、採用面接のプロセスにおける『自分なりの志望動機や仕事意識の興味を惹きつける広げ方・職業や会社に対する関心(やる気)の伝え方・人間関係やコミュニケーションへの適性・仕事と関係しそうな自分の経験や知識に基づく話』なども採用されるかどうかに一定以上の影響を及ぼすのではないかと思う。

自分の長所や利点、適性だけをピンポイントでアピールしようとするとなかなか難しいように感じるが、企業人として働くための『一般的な職業適性』を担当者に上手く伝えられていれば、後は自分自身の過去の経験や活動、知識などの中から『仕事・職業・業務につながりそうな部分や要素』を面接前にでも、『まとまりのあるコンパクトな話』になるように整理してみると良いのではないかと思う。










■関連URI
正社員の解雇規制を緩和することによって、雇用問題は改善するか1:『雇用の量』と『雇用の質』

民主党の『事業仕分け』の効果と財政赤字増大の問題1:雇用の悪化によるデフレ経済への適応

新自由主義の自己責任原理と「派遣村」の支援に対する批判について:失業・貧困の原因帰属の心理

“ふつうの幸せ”が手に入りにくい心理的ハードルと社会経済的要因:香山リカ『しがみつかない生き方』

■書籍紹介



テーマ

関連テーマ 一覧

月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ
気持玉数 : 2
なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー)

トラックバック(0件)

タイトル (本文) ブログ名/日時

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コンテンツ&本の紹介

Es Discovery's Encyclopedia(百科事典的なアーカイブ)

ESD ブックストア(インスタントストアで色々なジャンルの本を紹介しています!)

心理学の事典や臨床心理学の概説書

S.フロイトとC.G.ユングの書籍
ブログアーカイヴ
2005年
3月4月5月6月7月8月9月10月11月12月
2006年
1月2月3月4月5月6月7月8月9月10月11月12月
2007年
1月2月3月4月5月6月7月8月9月10月11月12月
2008年
1月2月3月4月5月6月7月8月9月10月11月12月
2009年
1月2月3月4月5月6月7月8月9月10月11月12月
2010年
1月2月3月4月5月6月7月8月9月10月11月12月
日本経済の産業構造の転換と新卒者の就職活動の過熱化:採用面接では応募者の何が評価されるのか? カウンセリングルーム:Es Discovery/BIGLOBEウェブリブログ