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コミュニケーションの目的には大きく分けて『情報交換・情報共有による意思疎通』と『感情交流(感情共有)・共感伝達による相互承認』とがあるが、一般社会のビジネスや教育の場面で重視されるのは前者の『正確な情報交換とその内容の理解』である。 ここでは自分が『何(どんな内容)』を伝えようとしていて、相手が自分の伝えようとしていることの『意味』を正しく理解したかどうかということが問題になる。だが、私たちが日ごろ行っているコミュニケーションには、『話の内容・意味』を厳密に問わないものも多い。 『感情の交流・共感の伝達』を目的とするコミュニケーションは、『情報の交換・意味の伝達』を目的とするコミュニケーションよりも原始的かつ本能的なものであるが、『親密な他者との関係』を維持して強化する上では、情報よりも感情を伝えることのほうが重要になりやすい。言葉の発生の起源は『文字(書き言葉)』よりも『音声(話し言葉)』にあり、西欧哲学の言語学の歴史においても『音声言語(パロール)』は『文字言語(エクリチュール)』よりも先行的で本質的な言語と考えられている。 直接的に他者に向けて『個人差の大きな音声』で伝えられるパロール(音声言語)は、声の抑揚や大きさ、口調などによって“感情”に強く訴えやすい性質を持つ。それに対して、パロールを『形式的な文字・文章』に置き換えるエクリチュール(文字言語)は、相手の実際の声が聞こえないために“理性”に強く訴えやすい性質を持つ。 複雑で多様な分節化(語彙の増大)を遂げていない『パロールの原型』は、高等類人猿やサル、鳥などにも見られるが、特に高等類人猿の叫び声・吠える声とそれに対する反応を観察していると、言葉の原初的で本質的な働きが『意味の伝達』よりも『感情・関係性の調整』にあることが推測できる。 類人猿(サル)の鳴き声の音声を通したやり取りでは、複雑な意味を伝達したり抽象的な思考を行ったりすることは不可能だが、『親密な関係や序列関係を確認する・トラブルを回避して群れの秩序を保つ・激しい情動をなだめたり癒したりする』といった感情面や社会関係の適度な調整を行うことができる。 音声言語よりも先に(音声言語を記号に置き換えた)文字言語が生まれた可能性は考えられないので、言語的コミュニケーションの原初的な役割は『感情交流による社会的関係(人間関係)の調整・共感伝達による集団の秩序維持』などにあったと合理的に推測される。 文字によって書かれた文章(エクリチュール)は、論理が破綻していたり伝えるべき内容(意味)が無ければ、それを書く意義や効果は殆どない。ケータイメールやTwitterなどで余り意味のない文章を書くこともあるではないかという意見もあるが、それは“余り意味がない文章”であって“完全に意味がない文章”ではない。コミュニケーションをしている当事者間では、『今からお昼ご飯を食べます・今、会社の仕事が終わった』などそれなりに情報としての内容・意味を持っている文章になっている。 記憶力や理解力が段階的に低下していく認知症(アルツハイマー型認知症)、現実認識能力が低下して言語構成力が支離滅裂となる統合失調症などの精神障害では、特に言語的コミュニケーションの持つ『感情交流・情動共有・共感性』といった役割の相対的な重要度が高まりやすくなる。 『意味のある言葉』を発言できなくなり、『相手の言葉の意味』を正しく理解できなくなったからといって、人間にとっての『コミュニケーションの必要性』までもが失われるわけではないという認識は、精神医療・高齢者介護・社会福祉活動・心理臨床などではかなり重要な認識になる。 統合失調症の患者は、論理的に破綻している事柄や非現実的な根拠のない妄想内容を延々と話したり、観念連合の障害で言葉のサラダと呼ばれる支離滅裂な発言をしたりするが、『意味伝達のコミュニケーション力』は大きく障害されていても、『感情伝達のコミュニケーション力』を完全に喪失しているわけではない。 現実と妄想の境界線が曖昧になっているような病者であっても、『好意・善意・敬意』といったポジティブな感情を伝達するコミュニケーションには好意を持って反応することが多い。反対に、『悪意・敵意・侮辱・非難』の感情を伝えられると、興奮・混乱・妄想強化といった精神病症状の悪化を示すことが増える。 認知症の高齢者も『暴力性・情緒不安定・怒り発作』などの問題行動が増えてくる時には、家族との情動的コミュニケーションが円滑に行われておらず、呆けていてどうせ話の意味を理解できないから会話をしても仕方が無いと放置されているようなケースもある。言語能力や理解力(記憶力)が衰えている認知症の人にとってのコミュニケーションの目的は、『情報交換・意思疎通(意味のある言葉のやり取り)』ではなくて『情動共有・存在の承認(感情的な心地よさの感覚)』になることが殆どである。 ■関連URI 大井玄『「痴呆老人」は何を見ているか』の書評:認知症に対する恐怖感を生む自我中心の現代社会 自己存在のリアリティ(現実性)を喪失する離人症と相補的な拘束作用の働く家庭環境の問題 武井麻子『ひと相手の仕事はなぜ疲れるのか―感情労働の時代』の書評:1 高齢者の所在不明問題と生存確認方法の曖昧さ:“家族・地域・福祉”で高齢者の生活や命をどう見守るか ■書籍紹介 |
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統合失調症 絵
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管理人の徒然日記 2010/09/12 07:59 |
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カウンセリングルーム:Es Discov... 2010/09/22 05:31 |
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カウンセリングルーム:Es Discov... 2011/10/11 02:13 |
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