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zoom RSS 他者との非言語的コミュニケーションを生む“偶発的ジェスチャー”と“一次的ジェスチャー”

<<   作成日時 : 2010/07/13 22:56   >>

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身振り手振りや手足の動きなど『身体動作』を用いた非言語的コミュニケーションの中心は『ジェスチャー』である。ジェスチャーは手振りや手足の動きなどの視覚刺激によって、他者に『特定の意味情報・感情・意志』を伝達するが、ジェスチャーが代理表象する意味(意志)は『同じ動作』であっても、それぞれの文化圏・生活圏・宗教圏によって大きく異なってくる。

ジェスチャーは言語的コミュニケーションと比べれば『厳密さ・正確さ・修飾性』において劣るが、ジェスチャーは言語よりも意図的な装飾や修辞がしにくい身体表現なので『感情・意志のダイレクトな伝達』を生み出しやすい。ジェスチャーは一般的には自分の話の要点や伝えたい趣旨・感情を強調する『手の動き』とされるが、ここでは広義のジェスチャーとして身体動作全般を含めて考えていく。

動物界全体で見ても、話し言葉と文字・記号(数字)を用いた『言語的コミュニケーション』は知的に高度で複雑なコミュニケーションであり、『身体動作を用いた意思疎通』よりもかなり後の時代になって生み出されたものであることは確かである。

身体動作を用いた非言語的コミュニケーションのバリエーション(感情・地位・仲間意識の伝達)は、チンパンジーやゴリラ、オランウータンなどの類人猿に見られるが、更に原始的なサルやその他の哺乳類・鳥類などにも見られる。そのことから、身体動作を用いたコミュニケーションは、一般に低次のコミュニケーションと見なされやすい。

だが、『伝達される感情・意志の真正性の判断(本物か否か)』において、言語的コミュニケーションは必ずしも非言語的コミュニケーション(ジェスチャー)よりも優れているわけではない。孔子の『巧言令色、鮮し仁』ではないが、『口先だけの感情表現・意見・約束』は簡単に誤魔化しやすく悪意をもって他人を騙そうとするような人もいるので、『言語的コミュニケーション(口の上手い人・言葉がポンポンとでてくる人)』があまり信用できないという人は現代社会でもかなり多いのである。

信用力・説得力の高い言語的コミュニケーションは、適切な非言語的コミュニケーションによって補完されているか、社会的権威や法律的規定によって裏付けられていたりする。言葉そのものよりも、行動・態度・動作といった『非言語的な要素』のほうが優先される関係や状況は少なくないのだが、『ジェスチャー(他者に観察される動作)の膨大な体系』というものは無意識的に構築されているため、日常ではあらゆる動作・態度・仕草がいつの間にか他者に解釈されているということのほうが多い。

ジェスチャーには、一般的・日常的な動作ではあるが受け手によって偶発的な意味を付与される『偶発的ジェスチャー』と、他者への意志伝達のみを目的とした動作である『一次的ジェスチャー』とがある。『偶発的ジェスチャー』は感情・気分・意志を伝達しようとしているわけではないが、その動作を見ている人(受け手)によって感情や気分が容易に推測されてしまうタイプのジェスチャーである。

あるいは、『動作の持つ本来の意味』と『動作が他人に与える意味=二次的情報』とを両方持っているのが偶発的ジャスチャーであり、偶発的ジェスチャーは『他人』がいてもいなくても行われる可能性がある動作である。

例えば、『あくびをする・よそ見が多くなる・手遊びをする・携帯電話をいじる・眠たそうにする』などの動作によって、その動作を見ている受け手の人に『自分の存在や話題に余り関心を持っていないのだろう・手持ち無沙汰でつまらない時間を過ごしているのだろう』といった意味を付与するというのが、偶発的ジェスチャーの典型である。

あくびをするやよそ見をするというのは、『他人』がいなくても『自分ひとり』でもする可能性がある動作であるが、他人がその動作を見ていることによって『二次的情報』が生成され、偶発的ジェスチャーとして非言語的コミュニケーションを成立させることになる。

もちろん、受け手(動作の観察者)が意味を読み取る偶発的ジェスチャーであっても、『相手が受け取るであろう印象・意味』を推測して、意図的に偶発的ジェスチャーをすることも可能であり、一緒に居て退屈な相手に対してあくびをしたり携帯電話・ゲームをいじったりといった動作で、『間接的な意志表示』をするようなケースもある。

しかし、原則的には偶発的ジェスチャーというのは、『一般的に考えてこういう動作をしているということは、この人はこういう感情や意志を持っているのだろう』という経験的・慣習的・合理的な推測が成り立つようなジェスチャーのことであり、コミュニケーションそのものを意図して考案された種類の一次的ジェスチャーとは異なる。

喫茶店で鋭い目つきをして貧乏揺すりをしながら不機嫌そうに待っている客(更に自分の動作を意識しているわけではない客)がいれば、その動作を見た店員はその客が注文を待ちきれなくてイライラしていると推測する可能性がでてくるが、もしかすると、客は他に嫌なことや待っている人があってイライラしているだけかもしれない。このように『動作を観察した受け手』によって、ある程度共通性のある推測・解釈が働くジェスチャーのことを偶発的ジェスチャーというが、推測された意味・感情は必ずしも当たるというわけでもない。

『一次的ジェスチャー』というのは、他者とのコミュニケーションのためだけに使用されるジェスチャーであり、『他人のいない場面・状況』ではその動作をする可能性(必然性)が殆ど無いのが特徴である。一人でいる時にもすることがある日常的・一般的な動作に、コミュニケーションにも応用できる二次的情報が追加されるというのが『偶発的ジェスチャー』であるが、他人との非言語的コミュニケーションのためだけに為される動作のことを『一次的ジェスチャー』と呼んでいる。
『一次的ジェスチャー』は非常に複雑かつ多様な非言語的コミュニケーションの体系を作り出しているが、そのジェスチャーの構成要素は大きく以下の6つに分類することができる。

1.表出ジェスチャー……高度に発達した人の顔面筋肉を使って、『喜怒哀楽の感情・気分』や『他者に対する関係性・新密度(敵意の無さ)』を伝達するジェスチャーである。国・地域・文化・宗教などによる違いが少なく、嬉しい時に笑い、友好的な時に微笑し、怒るときに赤面してしかめ面をし、恥ずかしい時に赤面し、悲しい時に目をふせがちになるなどの傾向が共通している。

表出ジェスチャーは概ね人類に普遍的なジェスチャーであるが、文化圏・共同体によっては『気軽に笑ってはいけない・悲しくても泣いてはいけない』などの文化的(規範的)な感情抑制・教育的矯正が見られることもある。


2.模倣ジェスチャー……他人・モノ・動作を模倣したり、慣習・文化・儀礼に適応することによって形成される意志伝達のためのジェスチャーである。

冠婚葬祭などの儀式でその場に相応しい表情や態度、動作を模倣することを『社会的模倣』といい、役者・芸人のように特定の人物を観察して真似をしたり、人物の特徴や雰囲気をイメージで模倣したりすることを『演劇的模倣』という。

人間ではないモノや動物を身体動作で模倣して表現することを『部分的模倣』といい、手で長い鼻の動きを真似して『象』を表現したり、手でモノの輪郭を空中でなぞって特定のモノを指示しようとしたりする。更に、実際にはない食べ物や飲み物を食べよう(飲もう)とするような手の動き、実際にはいない相手を殴ろうとする動作などのことを『架空模倣』といい、このジェスチャーもどの文化圏でも見られるものである。


3.形式ジェスチャー……上記の模倣ジェスチャーを省略化・簡略化したジェスチャーであり、模倣しようとする対象の一つの特徴だけを強調するものである。頭の上にうさぎの耳に見立てた手を掲げて動かすことで『うさぎ』を指示したり、馬の手綱を引くような動作で『競走馬』を指示したりなどが形式ジェスチャーに該当する。


4.象徴ジェスチャー……実際に存在するモノや動物ではない、『抽象的な意味・評価』などを表現するジェスチャーで、文化圏・言語圏による差異が非常に大きなジェスチャーである。

日本語圏であれば、頭の上で拳をぐるぐると回してパーと開く“くるくるパー”のジェスチャーやこめかみ部分に人差し指をコツコツと何度か当てるジェスチャーで、『あの人は頭が悪い・間抜けで考えが足りない』などの象徴的意味を表現することができる。小指を立てることで『あの人は女好き・女性で人生を失敗した』などの象徴的意味を伝達することもある。キリスト教圏では指で十字を切ることで、自らがキリシタンであることを伝達することができる。


5.専門ジェスチャー……特定の専門家や職業分野の間で用いられるジェスチャーである。テレビで番組撮影をする時にディレクターなどが用いるジェスチャー、証券取引所や市場の競りで用いられるジェスチャー、海で遭難を伝えるジェスチャーなど、それぞれの業界や職業に専門的に携わっている人の間でしか通用しにくいという特徴を持つ。


6.コードジェスチャー……一般的な『言語』にも相当する複雑で高度なコード体系を持つ信号であり、『手話・手旗信号』などがコードジェスチャーに含まれる。

コードジェスチャーはその文化圏・言語圏で生活している人が、自然にいつの間にか習得できるようなジェスチャーではなく、一定以上の教育訓練期間(学習期間)を必要とするものであり高度な記号操作を伴う。

コードジェスチャーは、非言語的コミュニケーションが言語的コミュニケーションに近い『正確さ・詳細さ・厳密さ・語彙の多さ』を持てるという潜在的可能性を示唆しており、人間が視覚刺激から一般に思われている以上の『多くの意味』を読み取れることを証明している。










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