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help RSS 強迫性パーソナリティ障害の精神分析的な解釈:“完全主義・義務意識”と“罪悪感・自己嫌悪”の相関

<<   作成日時 : 2009/10/01 12:22   >>

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幼少期には、母親・父親から受ける『躾(しつけ)の強度や方法』によって人格構造(性格特性)の基礎が形成されてくるが、理不尽な体罰や配慮のない人格非難などを受けた場合には『怒り・反抗・攻撃にまつわるサディズム(嗜虐性)』が起こってくることがある。大半の子どもは、身体的虐待を受けようが精神的侮辱を受けようが、両親がいなければ生きていけないという現実的な不安や自分の親が根っからの悪人であるはずがないという縋るような期待によって、両親に物理的に反撃しようとするサディズムは抑圧されることになる。

過度に厳しいしつけや暴力的な体罰、理不尽な叱責(お前はダメな子どもだというような人格非難)を受け続けている場合に、児童期〜思春期に掛けて『親に向かうはずのサディズム』が、『いじめ・非行行為・自己嫌悪(感情抑制)』に転換されることもある。この解釈は、強迫性障害(強迫性パーソナリティ障害)を『(親に対する)攻撃性の転移・反動形成』と見るものであるが、両親が怖くて逆らえない、逆らうと何をされるか分からないというような恐怖感がある時に、自分よりも弱くて与しやすいと見る相手を攻撃したりいじめたりすることがある。

『権威者・上位者への過度な従順さ(抵抗できない服従性)』という強迫性パーソナリティの特徴は、『過去に両親が有していた権威(支配力)の強さ』を現在の人間関係に転移している部分があるが、その反動として『下位者・弱者への過度な優越意識(傲慢さ)』が現れてくることがある。

親を謝罪させたり迷惑を掛けたりする非行行為(少年犯罪)には、『間接的なサディズム』を発揮しながら『自分に対する親の愛情・関心を求めている』という側面も指摘できるが、強迫性パーソナリティでは、親に向かうはずのサディズムが『自己』に転換されることで『強い罪悪感・自己否定の認知』が生まれやすくなる。

罰せられないためにルール(しつけ)を守って完全主義で物事を成し遂げなければならない、非難されないために自己主張や感情表現を抑制しなければならないという『自己認知(自己抑制)』が強迫性パーソナリティには見られるが、この場合には『サディズム(攻撃性)』をコントロールしようとする防衛機制が自己の感情や攻撃欲求を抑圧しているのである。肛門期の『親に対する反抗の葛藤』に由来するサディズムには、相手を痛めつけて自分が優位に立ちたいという『支配欲求』だけではなく、攻撃しても相手から反撃されて自分が更に傷つけられるかもしれないという『不安(自信の無さ)』が内在している。

サディズムと絡んだ『支配−服従の関係性にまつわる葛藤』は、現実の人間関係の中で『自分が相手よりも上の立場か下の立場かという優劣判断にまつわる葛藤』を引き起こして、フラットで親密なコミュニケーションの成立を阻害するという問題も出てくる。例えば、相手の年齢や職位を聞いてからでないとプライベートでも『自分の口調・態度』を決めかねたりすることがあり、相手から自分が格下に見られて服従的なスタンスに置かれるのではないかという不安から、『不機嫌な表情・イライラした雰囲気・怒りっぽい性格・外観的なとっつきにくさ』を無意識的に演出しているようなところがある。

強迫性パーソナリティ障害では、共感性や温かさ、優しさといった『ポジティブな感情表現』が出来なくなっていることがあるが、それには人間関係を優劣(どちらが優位か)で捉えやすいという硬直的な認知が関係していることがある。つまり、『機嫌や愛想の良さ・思いやりのある対応・とっつきやすさ』を、相手に服従的な態度を取っている証拠のように偏って受け取ってしまったり、優しい言葉や共感的な態度を取ることによって、相手から自分の弱みにつけ込まれるのではないかという不安を抱くのである。

ジークムント・フロイトは『強迫性障害』を、攻撃衝動や自律(自己主張)を目指す思考に対する自己防衛の失敗と解釈し、この自己防衛が反動形成や昇華によって成功した時に『肛門期性格(強迫性パーソナリティ障害)』が形成されると考えていた。S.フロイトのリビドー発達理論を敷衍したカール・アブラハムは、肛門期性格の特徴として『金銭・知識の所有に対する異常な執着』を指摘しているが、この金銭への執着(過度のケチ・倹約)は『対象からの分離不安』から生まれるとしている。

完璧な結果を出さなければ『両親からの賞賛・愛情』が得られないという経験が、『僅かなミス・損失』に対する神経質で吝嗇(りんしょく)な不安へとつながり、『金銭・知識の無駄のない蓄積』によって完全な価値のある自己(他者に愛される価値を有する自分)へと幻想的に接近しようとするのである。

強迫性パーソナリティ障害(強迫性人格障害)の心因には、『どんなに頑張ってもどれだけ良い成績を上げても、自分を認めたり褒めてくれたりしない親(権威者)のイメージ』が関係しており、要求水準の高い“超自我(理想・倫理観)”が内面化しているので、どれだけ努力したり成果を出しても『自分はまだまだ不完全で十分な価値がない』という劣等コンプレックスを克服することができない。

強迫性パーソナリティ障害の典型的な特徴である『完全主義思考・秩序志向性』が深刻になってくると、ストレスフルで神経質なワーカホリック(仕事中毒)に近い状態となり、『リラックスしたり休むことは罪悪であり恥ずべきことである=自分は永遠に休むことなく努力して完全な仕事を完成させなくてはならない』という自滅的な自己制御状態にはまりこみやすくなる。自己評価が極めて厳しくなり、誰もそこまで望んでいない『完全主義の水準』で自分の仕事・生活を評価するので、『自分の努力や成果をとりあえず認める(仕事や思考に区切りをつけて休養する)』ということがいつまで経ってもできず、完全な結果を強迫的に求め過ぎることでかえって仕事が出来なくなったり、社会への適応性を失ってしまう恐れもある。

強迫性パーソナリティ障害の人は、『緊張感・集中力・完全主義の過剰』によって、日常的な仕事や人間関係がスムーズに行かなくなったり仕事が停滞して完成させられなかったりするが、それは『緊張感を伴う思考・努力・作業』が自分にできるだけのことは精一杯やっているという意識を生み出し、その全力でやっている感覚が『十分に努力できていないという罪悪感』を緩和するからである。

強迫性パーソナリティ障害にまでいかなくても、強迫的で完全主義の認知を持つ性格傾向というのは、現代社会では比較的ありふれたものになっているが、この几帳面で緊張感の強い強迫性パーソナリティには『進学(試験)・就職・転職で失敗することは許されない(進学や就職で失敗するとやり直しが効きにくく大きな人生の損失を蒙ることになる)』という経済社会構造や職業キャリア(雇用慣行)も関係しているように感じられる。

いつも『見えざる力(努力不足・目標未達に対する罪悪感)』に追い立てられるかのように、終わりの見えない緊張や努力を強迫的に続ける状況は、非常に厳しく苦しいものがある。強迫性パーソナリティの改善を図るためには、『自分の人生における幸福・充実の基準』を現実的な方向へと修正していくこと、無根拠に『〜しなければ自分はダメになる』と思い込まずに『自分がやるべきことの水準』を達成可能なものに変えていくことが必要である。

努力不足に対する自己嫌悪(罪悪感)が強い場合には、『自分が最も恐れている状況・不安』を明確化(言語化)していき、それを必要なだけの努力で回避するための『適応的な認知(考え方)』を確立していくことが大切である。『努力することの効用と限界』を現実的な尺度で見直していき、行き過ぎた完全主義の思考によって、自分で自分を過度に責めないようにしていって欲しいと思う。










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