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help RSS 子どもに愛情を感じる“生得的本能”と子どもの育児方針(養育態度・虐待リスク)に影響する“モデル学習”

<<   作成日時 : 2009/05/01 18:32   >>

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母親と父親は、『子どもの安全と健康』に最大限の配慮をするのが当たり前という社会的認識は相当に強く、子どもを虐待するという行為は極めて特殊でイレギュラーなことだと思われています。そのため、子どもを虐待する親は『一般的・平均的な親』とは異なる特別な性格や背景を持った親と見なされやすく、『児童虐待』は大多数の親とは無関係な遠い場所で起こっている問題、非常識で未熟な親だけが起こす稀な問題と認識されがちになります。

特別な悪条件や性格特性を備えた親だけが、病的な心理状態や強度のストレス状況に陥って子どもを虐待するというイメージは間違いですが、重大な児童虐待を起こす可能性が誰にでも等しくある(誰がいつ起こしてもおかしくはない)という認識もまた極端なものだと思います。言うまでもなく、大多数の親は自分の子どもを虐待しないというのは客観的事実としてあり、思春期・青年期以後にまで『親への憎悪・怒り・不信・軽蔑』を残すような虐待の事例(アダルトチルドレンの自覚を持つ事例)というのは少数派です。

特に、子どもを『死亡・重症・深刻な後遺症』にまで至らしめる虐待というのは発生頻度が低く、軽度の一時的な暴力(体罰)や行き過ぎた叱責、子どもの自尊心を傷つける暴言などの軽い虐待を起こす可能性はあっても、決定的かつ致命的な形で子どもを虐待する親は極めて少なくなっています。成長した子どもの側の『親の育児に対する解釈』や『親の態度の受け取り方』によって、虐待になったりならなかったりするような微妙なケースを除けば、『顕著な暴力(傷害レベル)・育児放棄・精神的攻撃』を持続的に行う虐待というのはそれほど頻繁に起こるものではありません。

母親の子どもに対する愛情は『生物学的本能』なので、どんな母親(女性)でも自分のお腹を痛めた子どもは無条件で可愛いと思えるはず(どんな自己犠牲を払っても育てようとするはず)というのは、正しい面もありますが正しく無い面もあると思われます。客観的事実としては、子どもを産み捨てにしたり、虐待・育児放棄をする母親もいるので、生物学的本能によって無条件に献身的かつ保護的な育児行動を取れるという前提は反証されます。

つまり、『母性の生物学的本能』にプラスアルファされる『学習・体験・共感などの条件』がなければ、無条件の献身的・保護的な育児行動ができるようにはならないというのが一般的な理解として正しいと思いますが、大多数の親はそういった保護的な育児行動をするために『特別に準備された学習』をするわけではなく、自らの成育家族・親子関係や社会経験、情報環境(育児に関する知識)などが“標準的なモデル”として機能します。

どんな親子関係や育児方針を“標準的モデル”として人が成長していくのかのプロセスはさまざまであり、教育的なマスメディアや書籍からの育児情報などと合わせて、『個別的な育児のやり方(自分が正しいように感じるしつけ・親子関係)』ができあがっていくことになります。

社会学の分野では『母性神話の事実性(女性は誰もが絶対的な母性愛を持つ)』は否定的に捉えられていますが、認知心理学・発達心理学等の研究では『生まれたばかりの赤ちゃん(新生児)』を見て反射的に可愛いと感じて愛着を築きたくなる先天的本能というのは備わっているようです。誰もが生まれたばかりの赤ちゃん(新生児)の形態や表情に対しては、半ば本能的に『可愛らしい・守ってあげたい』と感じるのですが、実際の育児行動の方法や価値観についてはかなりの個人差が生まれてくると考えられています。

母親も父親もすべての人が反射的に子どもを可愛いと思える本能的要素を持っていますが、各個人の成育歴(自分が育った家族)やトラウマ、標準モデル、職業生活、ストレス状況などによって『愛情表現(保護的対応)の仕方・しつけや教育の方法・子どもとのコミュニケーション・親のフラストレーション耐性(感情処理能力)』は大きく異なってきます。

“虐待”と“しつけ”を混同してしまうようなケースでは、『言うことを聞かない子どもは、叩いたり懲らしめたりしてしつけをすべきだ・言葉をよく理解できない子どもは、多少の体罰をしなければまっとうに育つことができない・親と子どもの立場の違いは、暴力や威圧によって明確化すべきだ』という育児の標準モデルを親が持ってしまっていることがあります。

こういったしつけや教育に対する基本的価値観というのは、外部からの情報やアドバイスによって変更させることはなかなか困難です。『暴力を用いて子どもに物事を教えることは、精神の成長過程に与える弊害が大きい』というような情報を与えても、『そんな甘えたことばかり言っているから、最近の子どもは親の言うことを聞かなくなってダメになっているんだ(うちの家庭のしつけに余計な口出しをしてもらう必要はない)』というような反論をして聞き入れないことが多く、子どもに怪我や病気をさせるほどの虐待でなければ、外部(行政・学校・他者)から強制的に親の暴力的なしつけ・育児方針を抑制することは通常できません。

問題を抱えた親自身が、自分の子どもとの関わり方や育児の基本方針を見直してみようという動機づけを持たなければ、『今までの育児方針・しつけの方法・家庭の価値観』を非虐待的な方向に変容させることは難しいのですが、育児行動は親の生活態度や職業生活、過去の家族歴とも関連しています。その為、子どもに過度の暴力や暴言を振るってしまって、自分の怒り・不満・攻撃性をコントロールすることが完全に不可能になっているケースでは、親自身のトラウマ記憶(心理的ダメージ)や認知の歪み(親子関係のとらえ方の歪曲)、ストレス状況、攻撃的な衝動性を改善するカウンセリング的対応が必要になることも少なくないと思います。

核家族が増加して地域社会の連帯・関心も弱まり、家庭環境はますます閉鎖的に孤立する傾向が強まっており、『密室化した家庭内部の問題(DV・虐待・依存症・非社会化)』に行政や学校が対処することも難しくなっていると感じます。虐待問題の予防対策としては、学校関係者・医療従事者や周辺住民が『子どもの虐待の兆候・子どもの様子の変化・子どもの友達からの情報』に目と耳を意識的に傾けていくことが必要だと思います。

子どもの生命や健康に影響が及ぶ深刻な虐待の可能性が疑われる場合には、『児童保護・安全確保』を最優先して児童相談所・家庭裁判所などの権限を発動すべきですし、その前段階では、学校関係者の定期的な家庭訪問や児童の健康状態の確認(児童からの直接的な情報収集)が求められてくるのではないでしょうか。

事前に万全の予防対策を講じることは難しい部分がありますが、『小さな虐待の兆候(傷痕やあざ・元気の無さ・清潔状態の悪化)』や『子ども集団に伝達されている虐待の情報(父母から叩かれる・食事を抜かれる・家から締め出される・極端に苦痛な罰則等の情報)』を見逃さないようにすることが大切だと思います。それ以外にも、『親に対する育児教育・親子関係の指導の機会増大』に努めることや、地域社会全体で『近隣の家庭(子ども)の変化・異常』に少しでも関心を持つことなどが虐待予防対策として考えられますが、警察・児童相談所に通報があった後の『子どもの心身の健康状態のチェック体制』をもう少し効果的なものへと整理していく必要があるのではないでしょうか。

大阪市西淀川区の市立佃西小4年・松本聖香さん(9)が、身体的暴力やベランダに長時間締め出す虐待などによって衰弱して死亡した事件では、実の母親と義理の父親(内縁の夫)との共謀がショッキングな事実として話題になっていましたが、その後の報道では『母親に対する内縁の夫のDV・精神的支配』などが子どもを守らなくなった母親の態度の変化に影響していた側面もあるようです。

再婚した配偶者の連れ子を虐待するというケースは比較的多くありますが、母親が自分の子どもを何が何でも守ろうとする気力・意志を失う時の原因は大きく分類すれば『異性関係への依存(捨てられることへの恐怖)』と『DVによる恐怖感・精神的支配(閉鎖環境での暴力による感情鈍磨・判断力低下)』に分けられますが、『子どもの優先順位』が子どもを大切にしない男性よりも落ちると危険な事態(子どもを二人の邪魔者のように認知する状況)に陥る恐れは高まるでしょう。

兵庫県小野市でも、再婚した夫婦が当時4歳だった長男(女性の連れ子)の遺体を2年近く自宅の冷蔵庫内に隠していたという事件が発覚していますが、この事件でも再婚した男性の日常的なDVと虐待(折檻)が結びついており、閉鎖的な家庭環境における暴力的支配や男女の共依存(欠点・短所・症状を持続させる形のネガティブな相互依存)の問題が指摘できると思います。

親の離婚・再婚による『連れ子に対する虐待リスク』というのは大きな問題ですが、再婚しようとしている相手が『自分の子どもへの関心・愛情』を持続的に持ってくれるのかどうか、相手の性格傾向に思い通りにならない時の暴力性や衝動性などが無いかを確認することが重要だと思います。

初婚でも再婚でも実際に付き合ってみたり一緒に生活しないと見えてこない部分も多いとは思いますが、子どもがいる場合の再婚では特に『異性としての自分・二人きりの関係』だけに関心を持っているのではなく、『母親(父親)としての自分・今後の子どもの育児』にも関心と愛情を持って積極的にサポートしてくれるような相手を探すことが大切であり、『自分と子どもとの関係性・子どもの成長と健康』を第一においた家族設計や親子関係に同意してくれるか否かというのも、相手の基本的な性格・信念を見抜くポイントになると思います。






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■書籍紹介

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文芸社
鈴木 健治

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