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仕事を『単発的な労働』から『循環的な仕組み』に作り変えていくためにはどうすれば良いのかのヒントが詰まった本ですが、仕組みを作る目的は大きく分けると『効率性の向上』と『生存適応度の向上』に帰結してきます。個人が自らの力量とアイデアで安定的かつ効率的に作動して、価値や報酬を生み出す“仕組み”を作り出すのは現実問題としては至難の業であり、そのために大半の人は“既存の仕組み(いわゆる企業体)”と相互依存的な契約を結んで働くことになります。 初期投資として莫大な時間と労力、資金を注ぎ込み、相当に鋭く作動して効率的に利益を生み出す“仕組み”というのは、端的に言えば“起業の成功”になりますが、いずれにしても本書でも指摘されているように『仕組み作りのみ』に全精力を傾けるのはかなりリスキーです。常識的に考えれば、『最低限の食い扶持(衣食住・日常生活のコスト)』を稼ぐための仕事は仕事として、仕組み作りの外部に準備しておかなければならないのですが、そのことについて語っているのが『新20%ルール』というものです。 最低限の生存を確保する仕組み(仕事)のために『20%の時間・労力のリソース』を使い、新たな仕組み作りのために『残り80%の時間・労力のリソース』を使うというものですが、これはGoogleの『20%ルール(20%の時間を自分の好きなプロジェクトに回せ)』の時間配分を逆転させたものになっています。 通勤時間を含めれば、最低でも毎日10〜12時間程度は会社での仕事に時間を取られる人が多いでしょうから、実際にこの新20%ルールを実践することは難しいと思いますが、『今の仕事がダメになった時のオルタナティブ(もう一つの仕組み・働き方等)』というのを意識する必要性というのが、これからの時代、高まってくるというのは合理的予測だとは言えるかもしれません。 『Part1 仕組みの仕組み 仕組みを作る前に知っておきたいこと』では、仕組みがなぜ効率的に機能するのかを、『レバレッジ(効果を倍化する梃子の原理)』と『他人の力の活用』という要素を用いて説明しています。経営者的な仕組み作りだとか、FX(為替証拠金取引)のレバレッジだとかの例示が登場してきますが、『自分ひとりの力』を何らかの仕組みの機構を利用して、何倍にも強化するという方向性を押し出している感じになっています。仕組みのリスクヘッジについての補足もありますが、この辺の話は後半で失敗やミスを削除せずに『仕組みの更なる改善』にフィードバックしていくという話にもつながってきます。 『Part2 仕組みを作り直す 目の前の仕事を20%の力でこなす仕組み』では、タイトルの通り、今、自分が取り組んでいる仕事の効率性を向上させる方法について書かれているのですが、これをプログラマーの三大美徳『怠慢・短気・傲慢』という逆説的なコンセプトでまとめているのは面白いと感じました。もちろん、単純にやるべきことを怠けて、他人に怒鳴って、椅子にふんぞり返っていれば仕事が効率化するというようなお手軽な話ではなくて、『繰り返し作業の削減・トラブルの事前回避・仕組みのメンテナンス』をそれらのキーワードで表現しているわけですが、簡単なプログラムを例にしながら説明している部分は分かりやすいです。 複数の人間でチームを組んで共同作業をするような人であれば、『Part4 仕組みを合わせる チームで組み合うために』のパートを興味深く読めると思います。結局、どうして仕組みを意識して働いたほうが良いのかという根本的な部分については『Part5 仕組みと生物 「新しい仕組み」を作るヒント』にあるように、とりあえず“生き残ること(サバイバル)”こそが生物として最も根源的な存在意義だからということになってきます。 『より善く生きること』は生きる仕組みをある程度確立した上で考えていけば良いことですし、“遺伝子(DNA)の複製やミームの複製”という人類史が刻んだ『究極的な仕組み』に比較すれば、Googleであろうとトヨタであろうとアメリカ合衆国の連邦政府であろうとイスラム教であろうと民族・部族であろうと、地質学的年代の刹那に輝く小さな仕組みに過ぎないという見方もできるわけです。 そこまで話の規模が壮大なスペクタクルにまで吹っ飛んでしまうと、身近な仕事やビジネス、生活、人間関係の仕組みとは関係ない話になってしまいますが、とりあえずは『生きているだけで丸儲け・生命があれば何とかあれこれ工夫してやっていける』といった姿勢でリラックスして人生や仕事の問題に取り組んでいくことが大切だと思います。生命が連続してきた38億年の進化の歴史というのは、個人の人生や仕事とは直接的に相関していませんが、非常に壮大で無限な版図を持つ『仕組み』の中で、自分なりの幸福や満足を実感できる何らかの『仕組み』が作れれば、それだけで十分に素晴らしい成果といえるのではないかということでもあります。 最後のほうには、行き過ぎた拡大再生産や競争原理(格差社会)を批判するような部分もあるのですが、『生産効率からリソース効率へという発想の転換』には共感させられるものがありました。現在以上に、需要があるか無いかも分からない『無数のモノ(過剰生産で廃棄されるような残飯・モノ)』を拡大生産していく必然性は無くなってきており、未来社会では『がむしゃらな生産性追求+生産量の増大』よりも『リソース(資源)の有効活用+最適配分+生活の質の向上』のほうが重要になってくるというのは最もな話だと感じるからです。 本書は平易な文体で、仕事や人生の仕組みの原則的思考法を書き下ろした面白い書籍ですが、最後にあるベーシック・インカムの制度設計について、もう少し詳しく知りたいという方は、本ブログのトニー・フィッツパトリック『自由と保障 ベーシック・インカム論争』の書評1:労働と所得の倫理的結合の記事なども参照してみてください。 ■関連URI 小飼弾・山路達也『弾言 成功する人生とバランスシートの使い方』の書評 19世紀的な古典的自由主義に基づく“夜警国家”と20世紀的なリベラリズムに基づく“福祉国家” “働かなくても食べていける社会”と“働けば生活と老後に困らない社会”:高収益企業と社会格差 ■書籍紹介 |
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binWord/blog 2009/04/28 23:48 |
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カウンセリングルーム:Es Discov... 2009/08/21 05:52 |
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