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A.バンデューラの社会的学習理論で、『自己効力感など認知的制御』や『個人・行動・環境の相互決定論』の前提として重要な位置づけを持つ学習行動が『モデリング(modeling)』です。 モデリングとは、他者の行動の内容と結果を観察して模倣することによって、適応的な行動パターンを習得し、不適応な行動パターンを消去する学習過程のことを意味します。 モデリングには、最低、観察者とモデルの2人が必要ですが、観察するモデルの行為は、ライブモデリングのように生の直接的行為であっても、テレビやビデオなど映像媒体を介した間接的行為であっても構いません。 観察学習としてのモデリングの最大の特徴は、自分自身が実際にその行動を行わなくても良い『代理学習(vicarious learning)』であるという点です。 代理学習の最大の効果は、生死に関わるような危険な行為を一回一回試行錯誤しなくて良いことであり、長い時間のかかる行為を他人の行為の結果を見て学習できる事です。 つまり、代理学習としての特徴を持つモデリングは、『時間の短縮・思考の節約・生命の安全・行為の予測』という恩恵を私たちにもたらします。 古典的な行動主義心理学のように直接経験による強化(報酬・罰の強化子)を受けなくても、新しい適応的な行動パターンを獲得でき、今までの不適応な行動パターンを変容させられることをモデリング理論は示しています。 モデリング(観察学習)には、以下の4つの下位過程があります。
モデリングの学習行動が『行動の遂行』に至らない場合の原因としては、“注意過程”における『注意の拡散・不適切な注意の向け方』、“保持過程”における『象徴的コーディング作業の問題によるモデル行動の保持の失敗』、“運動再生過程”における『身体的な遂行能力の不足・情報フィードバックの活用の失敗』、“動機付け過程”における『モチベーションの低下や不足・不十分で不適切なインセンティブ』などを想定することが出来る。 人間の発達過程における行動の強化の起源は、親密な他者(母親・父親)の承認や欲求、関心と連合した快・不快の刺激にあると考えられます。 親密な関係にある養育者が子どもの行動に関心を向けて、『それは素晴らしいことだ。かっこ良くて素敵な洋服ね。とても可愛いと思うよ』というような肯定的な評価を下すと、子どもはその行動に対するモチベーションを基本的に高めます。 こういった承認と拒絶を機軸とする強化子のことを『対人的強化子』と呼び、子ども社会にも大人社会にもこの対人的強化子は大きな作用を及ぼしています。 『他者(社会)の承認と拒絶という対人的強化子』が人間の行動発現パターンを規定している領域はかなり広く、大人の職業活動や学習行動も対人的強化子の影響を強く受けています。 少数の人間の間の対人的強化子がより複雑化して、相互の行為の結果を容易には予測できなくなってくると法律や道徳を包含する『社会的強化子』としての性格を持つようになり、社会活動を行う人間は、この社会的強化子によって行動を促進され、あるいは制限されていることが多い。 社会的契約や社会的関係の本質は社会的強化子にあり、ある特定の行動には正の強化子(報酬・金銭・地位・愛情)が伴い、ある特定の行動には負の強化子(罰則・非難・軽蔑・憎悪)が伴うことにより、他者が観察できる部分において、社会的に好ましい行動が強化されやすくなり、好ましくない行動は消去されやすくなる。 他者の視線や評価と関わりなく、自己の価値創造的な行動を楽しみ、その行動に対する評価的フィードバックが働く事でモチベーションが高まるようになることもあり、自分に対する報酬を自分で提供できるようになる。 これが理想的な動機付け過程であり、価値想像的な行動は必ずしも客観的な価値ではないが、自己がその行動を行う対価として満足できるほどの価値を提供してくれることになる。 こういったモチベーションの意欲やインセンティブの報酬を自己産生できる理想的な過程を指して、自己強化・自己動機付けの過程と呼ぶことがある。 人間が自己強化の段階へと到達して、自発的な創造行動を楽しむには、暫くの間、退屈で面白みのない練習期間(熟達の為の準備期間)を我慢して、自分の有能性(コンピタンス)や自己効力感(セルフ・エフィカシー)を十分に高める必要がある。 自分の技能や知識が未熟な段階で、有能性を駆使して自発的な創造行動を楽しめない間は、外部にあるインセンティブを十分に働かせる必要があるが、『言語・認知・操作の技能』がある一定レベルを越え出ればあまりインセンティブの助けを借りなくても、自分自身で価値ある行動を見つけて行動を遂行できるようになる。 『金銭・賞賛・権力・罰則』といった実利的なインセンティブは、確かに人間の行動を発現させる力を持つ強力な社会的強化子であるが、基本的生活条件を大きく越えた強化子は自発的な学習行為や創造行為には必要ないということが社会的学習理論から言える。 つまり、他人から見て『そんな行動をしても一銭にもならないし、どこが面白いのか分からない』といわれるような行動であっても、自分自身がその行動に内在する価値や意味を発見して、その行動を遂行するに足る十分なモチベーションをそこから汲み上げることが出来るという事である。 そう考えると、インターネットにおけるブログやウェブサイトの更新作業の大半は、内発的モチベーションによって生起していると考えられるし、ミステリー小説や教養書など趣味で行う読書も外的なインセンティブなしに内在的な価値を楽しむ形で行動が発現している。 私たちは、社会的強化子と自己強化子の刺激の双方を適度に取り込みながら、自己効力感を高めて実利的な行動を行い、内発的動機付けを高めて私的充足の行動を行っていく事になる。 極端に社会的強化子の報酬に偏ると、合理主義を徹底させた仕事人間や金銭至上主義になってしまうかもしれないし、極度に自己強化子の快楽に溺れると、自己愛が肥大した社会性の乏しい人間や酔生夢死の風流人になってしまうかもしれない。 自己のアイデンティティを喪失しないバランスの取れた行動を選択していく為には、自然な生活体験の中で、自分自身や親密な他者、疎遠な他者(社会環境)から受ける刺激(フィードバック)を、適度な強化子として自発的な行動につなげていく必要があるように思う。 ■関連URL モデリング理論による新たな適応的行動の学習1:恐怖反応の生得性と後天性 ■書籍紹介 心理学史の上で、重要度の高い実験の内容とその実験結果がグラフィカルな図表を通して、分かりやすく解説されています。 記憶や忘却の領域を含む学習心理学の基本事項を、とりあえず一通り学びたいという人には以下の書籍が読みやすいと思います。 実験的な研究法を取る学習心理学の領域と関係した発達心理学や認知心理学、教育心理学などの概説書と対応させながら読むと、より一層深い理解が出来るのではないかと思います。 グラフィック学習心理学―行動と認知 Graphic text book
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モデリング理論による新たな適応的行動の学習1:恐怖反応の生得性と後天性
前回の記事で、環境刺激の影響や自分の行動の結果を予測して行動を決定する『予期学習』や『モデリング理論』について触れましたが、今回は、A.バンデューラのモデリング理論を中心として人間の学習行動を考えたいと思います。 ...続きを見る |
カウンセリングルーム:Es Discov... 2006/04/16 08:20 |
NLP(神経言語プログラミング)やSFA(解決構築アプローチ)を活用した短期療法の目標設定
問題の内容を詳しくアセスメント(査定)してから有効な対処法(治療法)を考えるという従来の臨床心理学的アプローチ(問題解決志向)は、『クライエントの問題点(病理性・異常性・不適応)』を専門的に査定(判断)するところに最大の特徴があります。正常な知能(判断力)と適応的な精神機能(対人関係)を持っている平均的な健常者をモデルとして、そのモデルとの差異や社会環境への不適応を改善していこうとする問題解決志向のカウンセリングは、基本的に『減点法のアプローチ』です。専門家である心理臨床家(カウンセラー)... ...続きを見る |
カウンセリングルーム:Es Discov... 2007/01/08 09:41 |
乳幼児の精神発達と言語獲得のプロセス2:『人間の顔』に対する認知と社会的微笑
新生児は産まれながらに大人や外界の刺激に対して微笑む『生理的微笑』のシステムを持っているが、生後2ヶ月以上くらいになってくると大人の表情を意識して微笑む『社会的微笑』をするようになる。つまり、生後2ヶ月以降の乳児は、『人間の顔』と『人間の顔ではないもの』を弁別して認識するようになり、人間の顔や表情に対して選択的に微笑むようになるが、一般的に生後6〜8週目以降になると『音声の聴覚刺激(母親の声)』よりも『顔の視覚刺激(母親の顔)』に対する反応が良くなっていく。 ...続きを見る |
カウンセリングルーム:Es Discov... 2007/06/21 16:59 |
漫画やゲームに登場する“創作上の人物”に対する表現規制の問題:『表現の自由』と『メディア学習』
あらゆる情報(コンテンツ)を容易に複製・頒布・共有できるインターネットの普及に伴って、音楽や映像作品などの『著作権の問題』が取り上げられる機会が増えましたが、ここ最近は、インターネットを含む各種メディアを介在した『有害情報の規制』に関連する政治的議論が活発になっているようです。有害情報とは何かを一義的に定義することは出来ませんが、一部の人にとって有害情報は『性的指向・性的嗜好(セクシュアリティ)』と深い関連を持っています。青少年の健全育成にとって有害な情報という時、私たちの脳裏に反射的にイ... ...続きを見る |
カウンセリングルーム:Es Discov... 2008/03/17 21:57 |
A.バンデューラのセルフ・エフィカシー(自己効力感)と内的統制の状況認知によるモチベーション向上
人間が物事を意欲的に行おうとするモチベーション(動機づけ)には、目的とする行動以外の報酬によって行動が強化される『外発的動機づけ』と目的とする行動そのものに興味関心や魅力を感じる『内発的動機づけ』がある。モチベーション向上には社会的・経済的な報酬(インセンティブ)や個人的・内面的な価値観などが関わっているが、人間がスキルや知識を習得しようとするモチベーションは心理学領域でセルフ・エフィカシー(self-efficacy)と呼ばれる自己効力感によっても大きく変化してくる。 ...続きを見る |
カウンセリングルーム:Es Discov... 2008/12/16 00:04 |
自分と異なる性格・特徴を持つ異性に魅力を感じるのはなぜか?:相補性の原理とコンプレックス解消
人間には誰でも『長所と短所』『得意な分野と苦手な分野』『強い要素と弱い要素』があり、『自分に欠けている長所・強み』を持っている影(シャドウ)に近いような異性に魅力を感じやすい部分もあります。論理的な思考を重視して計画的にかっちり人生を生きている人は、感情優位で自分の気分の赴くままに生きているような人が『影(シャドウ)』として機能し、そういった異性に引きつけられることがあります。 ...続きを見る |
カウンセリングルーム:Es Discov... 2012/04/03 18:21 |
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