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心理学的知見に基づく問題解決志向のアプローチは、標準化された心理アセスメントの実施と効果的な心理療法(面接技法)の組み合わせによって計画的に行われてきた。現在でも、エビデンスベースドな臨床心理学を前提とするカウンセリングでは、問題(症状)の実際やクライエントの状態を的確に把握する為のアセスメント(心理査定)を行って、そのクライエントに適した理論や技法を選択するところから始める事が多い。 心理アセスメントを行う目的は、『クライエントの問題解決や症状改善を促進するカウンセリングの実施に必要な情報を集める事』である。クライエントの問題解決志向のカウンセリングに役立てる事を目的とするアセスメント(心理テスト・調査面接)だが、『臨床心理学の事例研究や統計調査のデータ蓄積』といった副次的な学術利用の部分も持っている。 心理アセスメント・心理評価尺度によって理解できるクライエントの情報は、以下のようなものである。
ここで技法の概略と実際を説明するソリューション・フォーカスト・アプローチ(ソリューション・フォーカスト・セラピー)は、上述したような一般的な心理アセスメントによる問題解決を志向せず、クライエントの創造的な解決法の構築を志向するところに最大の特徴がある。ブリーフ・セラピーも、ソリューション・フォーカストな面接技法の一つであり、『問題の理解』ではなく『解決の構築』に焦点付けしていくカウンセリング技法である。 つまり、クライエントの生活適応における問題点や性格傾向における欠点、精神医学的な疾患に注目する『減点法のカウンセリング』ではなく、今ある生活状況や精神状態からどのような解決法や可能性を見出せるかをクライエントに考えさせる『加点法のカウンセリング』なのである。 ソリューション・フォーカスト・アプローチでは、『クライエントの問題点・心身症状・不適応』といったマイナスの部分を取りあえず脇に置いて、『クライエントの可能性・潜在能力・成功体験』といったプラスの部分に関心を集めカウンセリングの話題の中心に置いていく。ソリューション・フォーカスト・アプローチの基本的人間観は、カウンセリングという対人援助技術の原形を構築したカール・ロジャーズの自己理論に準拠していると考える事も出来る。 カール・ロジャーズやアブラハム・マズローらが分類されるヒューマニスティック心理学は、人間は生まれながらに良い特性を持っているとする性善説を基盤にしている。性善説に基づくヒューマニスティック心理学では、人間には、自然に心身の健康を回復する力や問題を解決する能力、更には道徳的な善を実現したりする能力が生得的に備わっていると考える。 カール・ロジャーズは、共感的な人間関係と受容的な生活環境があれば、人間はありのままの自分を表現して幸福な人生を送る事が出来るという楽観主義と肯定感覚に満ちた人間観を持っていた。人間は潜在的に『健康・成長・発展・解決に向かう本性』を持っていると考え、これを実現傾向とロジャーズは呼んだ。 スティーブ・ディ・シェイザーやインスー・キム・バーグらによって研究されたソリューション・フォーカスト・アプローチも、ヒューマニスティック心理学が規定する人間の本来的な実現傾向や自己回復能力など内的資源の存在を前提としている。 20世紀後半から心理臨床技法の中心となってきたエビデンス・ベースドな認知療法や構造化された面接技法は、問題の因果関係や性質・特性を調査して理解すれば適切な標準的対処が出来るという科学的な医学モデルを前提としている。 認知行動療法を典型とする問題解決アプローチは、問題の因果関係と症状の形成機序をより良く理解して、原因を除去したり症状を緩和しようとする心理学的アプローチである。 ソリューション・フォーカスト・アプローチでは、精神病理学(異常心理学)で研究調査する精神疾患や問題行動の知見を面接場面で利用せず、『診断的(分析的)な眼差し』を持ってクライエントと向き合うことがないのが大きな特徴である。クライエントの主体性や自立性によって自然な問題解決能力を活性化させようとするソリューション・フォーカスト・アプローチでは、精神障害の分類や治療といった精神医学的な方法論を採用せず、問題状況の査定や分析といった因果関係の解明を重視しないのである。
アカデミックな臨床心理学の研究と実践に代表される問題解決アプローチとブリーフ・セラピーなどソリューション・フォカーストな技法に代表される解決構築アプローチのどちらが効果的であるかという問いかけに対して単一の正しい回答というものは存在しない。 どちらがより優れた介入法なのか、どちらがより適切なアプローチなのかは、クライエントの自我の強度(カウンセリングへの積極性・参加意欲・自発性)や面接場面への期待によって異なってくるし、クライエントの抱えている問題の特徴や症状の深刻度によっても違ってくる。一般的に、ソリューション・フォーカスト・アプローチな面接技法が最も高い効果と実力を発揮するのは、精神障害や異常心理の問題ではなく、生活環境への不適応や人間関係の問題、人生全般の悩みの領域である。 即ち、多種多様な生活行動上の問題、恋愛や結婚・離婚に関する悩み、育児や親子関係に対する心配、就職や失業にまつわる葛藤、学校や職場での人間関係の問題、生きる意味や価値の探求といった『一般性の高い心理学的問題』『人生全般の進路や過程で生じてくる苦悩や葛藤』に対してソリューション・フォーカスト・アプローチは高いパフォーマンスを発揮することが出来るのである。 カウンセラーの専門性と体系化された手続きと介入によって特徴づけられる『問題解決アプローチ』は、どちらかというと症状改善的な心理療法に適しているアプローチといえ、カウンセラーとクライエントの良好な人間関係や長所・利点に注目したコミュニケーションに特徴づけられる『解決構築アプローチ』は、どちらかというと一般的な生活適応や人間関係についての心理相談に適したアプローチといえるが、双方共に例外は多くある。 一般にイメージされているカウンセリングのイメージに近いのはソリューション・フォーカスト・アプローチであり、医療分野における心理療法のイメージに近いのが標準化された問題解決アプローチだと考えると分かりやすい。問題解決アプローチは、問題をより良く理解してこそより効率的に問題を解決できるという科学的な因果関係の前提を持つので、現在、優勢で説得力のある精神病理学や心理療法理論の知見の影響を強く受ける。 その意味において、臨床心理学的な問題解決アプローチは、一般理論や普遍法則を個々の事例に当てはめるという『演繹的なアプローチ』の側面を持つ。反対に、カウンセリング学的な解決構築アプローチは、個々の面接事例におけるダイナミックな効果を観察して、その都度利用していこうとする『帰納的なアプローチ』の側面を持っている。 しかし、心理学的アプローチの完成度と有効性を高めていく為には、どちらのアプローチを採用するにしても、演繹法と帰納法の科学的思考をバランス良く行っていかなければならないだろう。 ■書籍紹介 ブリーフセラピーの再創造―願いを語る個人コンサルテーション
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心理検査(心理テスト)の前提にある人間観2:個人に固有のパーソナリティの総合的・歴史的理解
行動科学モデルや認知理論モデルといった基礎理論に基づく心理テストの最大の特徴は、『客観的に観察可能な臨床的有効性やカウンセリング効果』を引き出す為の簡略化された質問紙法を採用するということです。 ...続きを見る |
カウンセリングルーム:Es Discov... 2006/05/14 23:38 |
NLP(神経言語プログラミング)やSFA(解決構築アプローチ)を活用した短期療法の目標設定
問題の内容を詳しくアセスメント(査定)してから有効な対処法(治療法)を考えるという従来の臨床心理学的アプローチ(問題解決志向)は、『クライエントの問題点(病理性・異常性・不適応)』を専門的に査定(判断)するところに最大の特徴があります。正常な知能(判断力)と適応的な精神機能(対人関係)を持っている平均的な健常者をモデルとして、そのモデルとの差異や社会環境への不適応を改善していこうとする問題解決志向のカウンセリングは、基本的に『減点法のアプローチ』です。専門家である心理臨床家(カウンセラー)... ...続きを見る |
カウンセリングルーム:Es Discov... 2007/01/08 09:41 |
S.フロイトの快楽への意志, C.ロジャーズの有機体の価値判断, A.エリスの合理的思考の接点
どういった考え方や物事の捉え方が自分にとって実際的に役立つのか、どの行動を選択すれば自分の未来の可能性を高めてくれるのかを考えるのが、認知療法や解決志向(解決構築)アプローチですが、C.ロジャーズのカウンセリングでは『生得的な功利性への気づき(自然に自己肯定感や幸福感が高まってくれる自己充足的な意識の目覚め)』がその中心にあり、生得的な功利性に気づくことで『自己一致(congruence)』が促進されるとしています。自己一致とは、自分が率直に感じ取っている『自己の経験(self-exper... ...続きを見る |
カウンセリングルーム:Es Discov... 2007/08/15 20:27 |
“生きる意味”を積極的に生み出す『合理的な信念』と“生きる資格の障壁”を生み出す『不合理な信念』
解決構築カウンセリングを始めとする解決的アプローチは、臨床的な精神症状(抑うつ感・不安感・パニック発作・強迫観念など)にも応用可能ですが、日常的な悩みや対人関係(異性関係)の問題、学校や企業への環境不適応、仕事や勉強の能力向上(目標の達成)などありとあらゆる心理社会的問題に行動的レベルから直接的にアプローチできます。何故なら、人間社会の対人評価(人間関係)や職業活動(学習行動)、試験の成績、社会的スキル、異性関係(愛情表現)などは『実際の行動・発言の組み合わせ』から成り立っており、自分が何... ...続きを見る |
カウンセリングルーム:Es Discov... 2007/10/09 14:38 |
問題解決志向のカウンセリングと自他理解の重要性3:人の認知・行動は何によって変わるのか?
前回の記事の続きになるが、現実的な『自己理解』や状況認識を深めていくと同時に、『他者理解』を深めることが『新しい認知・行動パターン』の獲得を後押しすることも多い。カウンセリングにはクライアントの問題状況や性格傾向に適した情報提供を行うという『心理教育的な側面』もあるが、その心理教育的側面の中心にあるのが『自己理解と他者理解の促進』である。 ...続きを見る |
カウンセリングルーム:Es Discov... 2010/01/26 09:52 |
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