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help リーダーに追加 RSS 自立心と依存心の葛藤によって表出する思春期〜青年期の『家庭内暴力・怒りの感情』の問題

<<   作成日時 : 2006/01/12 19:48   >>

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前回、『個別的な多様性を見せるトラウマの影響』という記事を書き、トラウマとなる外傷体験の個別的な心身への悪影響と、性的逸脱など自傷的な意味合いを持つ行動の心因について考えて見ました。

反社会的な粗暴行為や逸脱集団での非行、家庭内暴力については、トラウマやアダルト・チルドレンと完全に無関係とは言えませんが、どちらかといえば発達心理学的な諸問題に分類されるべき問題ですので機会を改めて書きます。
余り詳細を掘り下げていませんが、以下に、家庭内暴力について力動的心理学の観点からその概略だけ書いておきます。

青年期前期(思春期:12〜18歳頃)の第二次反抗期に見られる親への暴力的言動や社会的権威への反抗に関しては、その暴力や反発の程度や期間が常識的に了解可能なレベルであれば特別な心理学的問題として取り上げる必要はないと考えます。

但し、青年期前期の家庭内暴力について適切な対応をする為に、『本能変遷』という概念と『家庭内暴力の2つの分類』を理解しておくと良いと思います。

本能変遷というのは、フロイトのリビドー発達論やエリク・エリクソンの心理社会的発達論に見られるような『リビドーの本能的欲望の変遷』のことで、一般的に、『家庭内の家族構成員』から『社会内の対象』へとリビドー(性的関心・関係欲求)の方向性が向け変えられます。

精神分析的なコンテキストにおける正常な精神発達ラインとは、『発達早期の自他未分離な自己愛』から『エディプス期の近親相姦的な欲求(エディプス期は現代的な精神発達の過程では「性的欲求」を重視しないことが多く「関係欲求」という解釈をしたほうが分かりやすいです)』を経て『対象愛』へと向かうラインです。

対象愛とは、具体的には『家族関係の外部の他者への対象愛』であり、性的欲動(リビドー)は『家族関係の内部』から『社会関係という外部』へと変遷していくことを意味します。

最近では、友達感覚の親密な親子関係が増えてきたこともあって、『自己愛から対象愛への移行過程の曖昧化』や『厳格な父性の衰退による社会規範の内面化の欠如』が指摘されることもありますが、精神の発達過程においては、一般的に欲求や関心の向かう先は家族内部から家族外部の人間に向けられていきます。

精神の発達過程における『自己愛から対象愛への移行=本能変遷』の典型的な現れが、『児童期から青年期早期に見られる同性の親友との親密な関係』『青年期に見られる特定の異性との親密な恋愛関係・性的な関係』であるということになります。

自己愛の発達過程と対象愛への移行などについて詳しく知りたい方は、当ブログの『自己愛と対象愛によって満たされる私』『 傷ついた自己愛の防衛と補償のメカニズムと母子一体感からの脱却』の記事に目を通されてみると良いと思います。

家庭内暴力は『自立と依存にまつわる心理的葛藤』『家庭外の社会生活でのフラストレーションの発散』の規範逸脱的な行動化として理解することが出来ます。

そして、家庭内暴力を二つの精神的な力動の見地から分類すると、『家族関係からの離脱としての家庭内暴力』『家族関係への依存としての家庭内暴力』の2種類に分類することが出来ます。

家族関係から離脱しようとする心理的力動が働いた暴力は、心理社会的に自立したいという欲求とその自立がなかなか達成できないという現実の葛藤の問題ということが出来ます。
自分の心理社会的自立の障壁として認知される『両親の保護・監視・指導』が非常にわずらわしく面倒に思えて、その言動が反抗的になりそれが亢進すると暴力行動になってしまうことがあります。


家族関係からの離脱としての家庭内暴力……親からの束縛や指示の影響を低下させる為に、規範逸脱的な暴力や暴言の行動化を示すものである。

一般的に、『家族外部への人間関係への移行を含む精神的自立の一過程』として理解できるが、暴力の程度が常軌を逸している場合や、家庭外での反社会的な行動が目立ってきた場合には一定の注意や対処が必要である。

男子の場合であれば、反社会的な逸脱集団・暴力組織(暴走族や暴力団など)への加入や違法薬物の使用がないかに留意し、女子の場合であれば、反社会的な属性を持つ男性との交際や売買春や援助交際などの性的逸脱行為がないかの注意が必要である。

家族関係からの離脱をして心理社会的に自立する過程で、多少の家庭内暴力や社会規範からの逸脱が見られることはあるが、それが行き過ぎて通常の仕事や学業を完全に放棄した逸脱行為にいかないかの配慮はしたほうが良い。逸脱行為の典型的な徴候としては、家出や薬物使用、アルコール依存、性的逸脱などが分かりやすい行動化の例である。

生命や健康に危険が及んだり、人生全体のキャリアが侵害されるような逸脱行為でなければ可逆性が高いのでそれほど心配いらないが、青年期前期の子どもが暴力団や窃盗グループ、薬物販売グループ、詐欺商法、売買春グループなどに加入して反社会的なアイデンティティを獲得してしまわないような注意は必要といえるだろう。


家族関係に留まり続けたいという心理的力動が働いた家庭内暴力は、心理的・経済的に家族(両親)に依存したいとする欲求といつまでも依存し続けることは出来ないという現実の葛藤の問題といえます。

現実的な生活における心理社会的な自立の必要性を自覚していながら、その自立の時期を出来るだけ延期してモラトリアムを遷延したいという意図が働いている状態であり、青年期前期(思春期)では不登校や家庭内暴力の問題となって表面化しやすくなります。

青年期後期(20代前半)において社会的アイデンティティの確立に失敗した場合にも、自立と依存の精神的葛藤の問題が起こり、その葛藤が依存欲求の方向に強く傾いた場合には、ひきこもりやアパシーなどの意欲減退と結びついた非社会的問題が顕在化してくることがあります。


『家族関係への依存としての家庭内暴力』……親からの保護や愛情を得る為に、反抗的な態度や暴力的な言動を取り、自分にまだ心理社会的な自立の準備が十分に整っていない事を理解してもらおうとするものである。

一般的に、『家族外部への人間関係への移行が上手くいかず、青年期以前の保護的な生活状況を維持しようとする欲求』として理解することが出来る。暴力の程度が常軌を逸してきた場合や家庭外部での社会的活動(学校・仕事・職業訓練・友人関係・恋愛関係)に全く興味を見せなくなったときには一定の注意や対処が必要である。

自立欲求よりも依存欲求のほうが勝っている状態なので、突然、家出をしたり反社会的な逸脱集団・暴力組織(暴走族や暴力団など)へ加入したりするケースは極めて少ない。
女子の場合も異性関係に積極的でないケースが多いので、反社会的な属性を持つ男性との交際や売買春や援助交際などの性的逸脱行為などに走る恐れも低くなる。

反社会性という観点では、妄想幻覚や無為自閉を伴うような精神障害を発症したり、いじめや失恋などに伴う特定個人への怨恨などがあったりしない限りは、上記した『家族関係からの離脱としての家庭内暴力』よりも反社会的行動を行う可能性は低いといえるだろう。

反対に、非社会性の観点から子どもの生活状況を見守る必要があり、家庭内部に人間関係が閉じられていないか、社会的活動の一切を放棄していないか、適度な外部との接触はあるか、ある程度の友人関係(異性関係)への欲求があるかなどに配慮して『将来の自立促進につながる対応』を心がけていくと良いだろう。


結局、どちらの家庭内暴力のケースでも『家族間の人間関係の距離と依存』『家族外部の人間関係の距離と社会性』『反社会的な逸脱行動と非社会的な逸脱行動』のバランスの問題になってくるが、一定の家庭内暴力の期間をモラトリアムとして、通常の精神発達過程を踏み社会的自立へと進んでいくことになるケースのほうが多い。
但し、病院での治療が必要となるような激しい暴力や深刻な犯罪行為や自滅的行動となるような逸脱の習慣化が見られる場合には、専門機関や専門家の助力を得たほうが良いだろう。

幼児虐待や幼少期の暴力や侮辱のトラウマの影響として『他者への暴力性・攻撃性の連鎖とトラウマ体験の再現性』について前回の記事で説明しましたが、それ以上に深刻なトラウマの問題となりやすいものとして『自己嫌悪や自己否定の感情と結びついた自己への攻撃性・破壊衝動』の問題がありますので、その問題については記事を分けて書きます。


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