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あらゆる心理的な問題や精神障害(精神疾患)、対人関係の確執には、精神的ストレスが何らかの形で作用しています。 まず、身体の遺伝要因・体質気質類型・生理学的障害などの生物学的基盤があり、その基盤に精神的ストレスが過度にかかることによって全ての精神障害や心理的問題(深い苦悩・悲哀・抑うつ・怒り)が発生してくるというのが『素因・ストレスモデル』と呼ばれるものです。 素因ストレスモデルは、“人間の先天的な生物学的素因”に“後天的な環境的要因(心理社会的因子)”が相互作用することによって、精神の病気や心の問題が生み出されるとする科学的な実証性を重視するエビデンス・ベースドな理論といえます。 素因ストレスモデルで、心因性の精神疾患や心理的困難を考える場合には、現在まで生きてきた人生の過程で、その人のストレス耐性やストレス対処能力を超えた精神的ストレスの負荷がかかった結果であると考えます。 職場や学校、家庭、公共の場などにおいてストレスフルな環境におかれやすい現代人が、精神の健康や心の安息を維持する為に最も重要なことは“ストレス・コーピング(ストレス対処法)”を適切に行うことです。 そして、自分に合ったストレスの対応を無意識的に行えるようになり、心理社会的なストレッサー(ストレスの原因となる刺激)に対する“耐性(ストレス・トレランス)”が高まっていることを実感できるようになると、精神的ストレスによる心身への健康被害を最小限に抑えることが出来るようになります。 ストレスとは何かと改めて正面から問われて即座に答える場合には、正確なストレス学説の知識で答える必要はなく、誰もがストレスとは何であるかを知っています。 大多数の人は、『ストレスとは、私が嫌悪や不快を感じる状況・場面・相手である』と認識していて、出来るだけ不快な強いストレスを減らしたい、ストレスのない環境で仕事や生活を満喫したいと考えています。 ストレスが何故、身体や精神に悪い影響を与えて様々な不調や疾患を引き起こしてしまうのかを知る為の理論としては、カナダの生理学者ハンス・セリエ(H.Selye 1907-1982)が提唱したストレス学説があります。 ストレスは、元々機械工学の専門用語であり、『外力が物体に加わった場合の歪み・不均衡』という意味を持っていました。 近代医学の歴史において、ベルナールは『生体の生命維持には、外部環境の変化に左右されない生体内部の恒常性』が必要であると考え、アメリカの生理学者ウォルター・B・キャノンはベルナールの発想を更に押し進めて“生体恒常性(ホメオスタシス)”の概念を提示しました。 ホメオスタシスとは、生物が生命維持の為に持つ環境適応能力であり、“外部環境の温度・湿度・圧力・化学成分など”がある程度変化しても、それに対応して生体内部の環境を一定に保つ機能です。 生体のホメオスタシスは、自律神経系や内分泌系、免疫系といった『不随意的な身体機構』によって維持されていると考えられます。 ホメオスタシスを実現することに特に重要な働きをしているのは、視床下部を中枢に持つ自律神経系です。 自律神経系のうち、交感神経は“向活動性(エルゴトロープ)”の働きでエネルギーを消費する方向に身体をコントロールし、副交感神経は“向栄養性(トロホトロープ)”の働きでエネルギーを保存する方向に身体をコントロールします。 ハンス・セリエは、ストレスを『外部環境からの刺激によって起こる歪みに対する非特異的反応』と考え、ストレッサーを『ストレスを引き起こす外部環境からの刺激』と定義しました。 私たちは日常生活でストレスとストレッサーを分けて考えることを余りしませんが、正確には、ストレスというのは、有害な外部刺激(ストレッサー)を受けた身体の反応・状態のことを指しています。 代表的なストレッサーの種類には、温熱、寒冷、痛覚、圧力、光、騒音といった“物理的ストレス”、薬剤、有害化学物質、環境ホルモン、化学合成物といった“化学的ストレッサー”、細菌、ウイルス、カビなどの“生物学的ストレッサー”、人間関係の葛藤や社会的行動に伴う責任や重圧、将来に対する不安、大切な人の喪失体験、経済的困窮などの“精神的ストレッサー”があります。 セリエのストレス学説の基盤は、“適応症候群(adaptation syndrome)”の理論にあります。 適応症候群とは、ストレッサーに曝された生体が見せるストレッサーの有害性に適応しようとする一般的な化学的反応のことです。 適応症候群……脳の視床下部と副腎皮質などの内分泌腺のホルモン分泌や自律神経系の神経伝達活動によって誰にでも起こる一般的な反応で、これによって生物はホメオスタシスを維持し、ストレス刺激に耐えています。 適応症候群は、以下の二つに分けられます。 汎適応症候群(GAS:General Adaptation Syndrome)……ストレッサーに対する生体の全身適応反応です。 局所適応症候群……ストレッサーに対する生体の局所的な適応反応です。 全身適応症候群は、ストレッサーを受けてからの時間経過とストレス適応状態によって、『警告反応期』『抵抗期』『疲憊期』の3つの時期に分けることが出来ます。
■参考書籍 この記事を読んで、ストレスの生物学的な解明や科学的なメカニズムについて更に精細に勉強してみたいと思われた方には以下の書籍を紹介します。 やや難解な専門的内容を含みますが、ハンス・セリエ『生命とストレス――超分子生物学のための事例』というセリエの鋭い洞察力と知性的直観に満ちた講義録と合わせて読むと一層、生理学的機序を踏まえたストレス心理学に対する理解が深まるものと思います。 ストレスの生物学―ストレス応答の分子メカニズムを探る
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カウンセリング・ルーム:Es Disco... 2005/09/25 06:43 |
自我(エゴ)中心の精神分析学と自己(セルフ)の相補性を重視する分析心理学:無意識の補償作用
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カウンセリングルーム:Es Discov... 2006/08/11 00:45 |
(講演レポート)「ストレスと精神生物学 −新しい診断法を目指して−」
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うつ病ドリル 2007/03/10 12:28 |
ストレスフルな現代社会における『自己への適応』と『環境への適応』:自由主義と自己アイデンティティ形成
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カウンセリングルーム:Es Discov... 2008/01/15 07:46 |
過労状態によって発症する神経衰弱と仕事(勉強)の効率性:睡眠を取れないマウスの脳下垂体の損傷
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カウンセリングルーム:Es Discov... 2008/02/19 20:02 |
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生後5〜8ヶ月頃に多く見られる『人見知り不安(stranger anxiety)』は、他者や社会的状況に対して気恥ずかしさを感じる『シャイネス(shyness)の気質』の起源であるとも考えられているが、シャイネスという心理状態は誰にでも起こり得る一般的なものである。他者とまともに会話ができないほどの極端に強いシャイネスは、社会不安障害(対人恐怖症)やひきこもりの原因になることもあり、回避性人格障害の重要な性格因子の一つであるとされているが、社会的場面で軽度の緊張や恥ずかしさを感じるというレ... ...続きを見る |
カウンセリングルーム:Es Discov... 2008/12/15 17:44 |
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カウンセリングルーム:Es Discov... 2009/04/28 11:35 |
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カウンセリングルーム:Es Discov... 2009/06/27 01:57 |
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カウンセリングルーム:Es Discov... 2009/12/05 06:44 |
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