川崎市無差別殺傷事件と中高年ひきこもり問題2:経済的問題・精神的不安定・アイデンティティ拡散

伯父夫婦の岩崎容疑者に対する養育態度についても分かっていることはほとんどありませんが、伯父の実子である従兄弟二人と比較して、自分は不当に差別待遇を受けているというような逆恨みの感情を募らせていた可能性もあると言われています。従兄弟二人は今回の事件の被害者児童の通っていた私立のカリタス学園に通っていて、岩崎容疑者は地域の普通の公立校に通っていたといいます。

川崎市無差別殺傷事件と中高年ひきこもり問題1:51歳の岩崎容疑者の凶行が強めた偏見

散髪をする時も、従兄弟は坊ちゃん刈りで髪の毛の長さがあったのに、岩崎容疑者は常に坊主頭だったという話もありましたが、そういったことが伯父伯母の差別的処遇だったのかどうかという点については不明で、悪意や贔屓があったのかも定かではありません。あからさまに差別して嫌っていたのであれば、容疑者が50代になるまで自宅での居候生活を許したり、最低限の経費負担をしたりもしないのではないかという見方もできるからです。

岩崎容疑者が事件を起こす原因の一つになったのではないかと言われているのが、「80代になった叔父叔母が介護サービスを受けることになったこと」や「自宅に介護士が来る介護サービス利用に当たって、自分が扱いが厄介なひきこもり扱いをされたこと」です。岩崎容疑者は伯父夫婦との接触を徹底して嫌っていて、自宅で風呂・トイレを使う時間まで分けて、10年以上も一切叔父夫婦と顔を合わせずに特殊な生活をしていたと報じられています。

そんな生活状況にあった岩崎容疑者が、手紙で伯母から「介護サービスの利用をすることになったこと・あなたはひきこもりのような状態にあるが今後どうするのかを間接的であれ問われたこと」によって、改めて「いつかは伯父伯母も亡くなる現実(自宅が維持できなくなったり金銭援助も途切れたりする現実)・今まで通りの他人と関わらないで済むひきこもり生活を続けられなくなる可能性」に直面して絶望する方向に思いつめた可能性もあります。

川崎市無差別殺傷事件は、「岩崎容疑者が長期ひきこもりの状態を継続できなくなる現実に直面したストレス」や「自分をひきこもり扱いされたことに対する激しい怒り・不満(ひきこもりになった原因を伯父夫婦に責任転嫁している怒り)」、「伯父夫婦に対する長期間にわたって溜め込んだ怨恨・不満の爆発」、「自分一人で死ねずに他人を巻き込んで自殺する拡大自殺」といった側面から理解を進めることができるように思います。

しかし、原因は複雑に入り組んでいてこれだという一つの原因だけを上げることはできません。無差別殺傷に至った不安定な精神状態の根本にあるのは、「経済的自立・精神的自立をしないまま、現在のようなひきこもり生活が成り立たないこと」と「今のひきこもりのような生活状況に陥ったのは実親・伯父夫婦らが自分に適切な養育環境・愛情を与えてくれなかったからだという強い怒り・不満」ということになりますが、同じような境遇・状態にあっても岩崎容疑者のような無差別殺傷を企図して実行するのは極めて珍しいと言わざるを得ません。

ひきこもりが犯罪者予備軍という見方は差別・偏見を助長して、現在ひきこもっている状況にあって何とか立ち直ろうとしている人たちや親子関係にマイナスの影響しか与えませんが、「経済的要因(親がいつか亡くなる要因)からひきこもりを死ぬまでは継続できない人が大半であるという問題」や「ひきこもっていると他者とのコミュニケーション(他者からの承認・愛情・評価)も決定的に失われるという問題」に対する何らかの具体的な支援策・援助方法は必要になってくると思われます。

川崎市無差別殺傷事件のような特異な大量殺人(個人の過去の成育歴・養育者・社会全般に対する怨恨も絡む問題)と「中高年ひきこもりの問題」は切り離して考えるべきで、中高年ひきこもりの問題は短期の即効性のある解決策は無いものの、「少しでもいいから何らかの稼ぐ手段を見つけること(中期的には最低限でも収入のある就労先を見つけること)」や「他者から承認されたり心が満たされたりする何らかの居場所作りのシステムを作ること(完全に何十年も孤立して誰とも話さないような状況を無くすこと)」が差し当たっての課題になるのではないでしょうか。


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