ソーシャルスキルとは何か?:多様な定義と他者との相互作用に効果的に適応するプロセス

社会心理学・臨床心理学では、他者とのコミュニケーションや人間関係を「対人的な相互作用のパターン」と前提して、トレーニング(練習・訓練)によって「コミュニケーション能力・人間関係の能力」を高められると考えています。対人的な相互作用や個人と集団との相互作用、他者とのコミュニケーション全般に関する学習的な能力のことを「ソーシャルスキル(社会的スキル)」と呼んでいます。

最近は、広汎性発達障害(自閉症スペクトラム)の療育の文脈などで“social skills(ソーシャルスキル)”に言及されることが多いのですが、“social skills”の訳語には「社会的技能・社会技能・対人技能・生活技能」などさまざまなものがあります。しかし近年は、そのまま「ソーシャルスキル」と記述したり「社会的スキル」と記述したりすることが多いようです。ソーシャルスキルを練習・訓練する技法として、「SST(Social Skills Training)」がよく知られています。

日本に出版された事典・辞典として初めて“social skill”について記載したのは、「心理学事典(平凡社,1957年)」とされますが、その段階では「社会的技能・社会技能」と翻訳されていました。

ソーシャルスキルとは、他者とのコミュニケーションや集団生活との相互作用に適応するための学習的(後天的)に身につけた技能のことです。ソーシャルスキルは「他者に対する話し方・行動の仕方・態度にまつわる技能」や「集団生活の状況における適切な反応・役割・振る舞い方に関する技能」のことを指示しているのです。

入院患者などを対象とする精神医学領域では、ソーシャルスキルは「生活技能」、ソーシャルスキル・トレーニング(SST)は「生活技能訓練」と翻訳されることも多いのですが、それは重症精神病患者のケースでは他者とのコミュニケーションの問題もありますが、それ以上に「社会的な日常生活の遂行に必要な生活技能(身だしなみを整える・あいさつをする・公共交通機関を使うなど)」のほうに重点があるからです。

社会的技能と生活技能の違いも含めて、ソーシャルスキルを一義的に定義することは難しいのですが、ソーシャルスキルを大きく分ければ「行動的側面を強調した定義」と「能力的側面を強調した定義」に分けることができます。

「行動的側面を強調した定義」には以下のようなものがあります。

○相互作用する人の目標を実現するのに効果がある社会的行動(アーガイル、1981年)

○社会的行動に随伴する強化の可能性を最大にして、罰の可能性を減少させる行動(グレシャム、1981年)

○個人間で行われる効果的な対人コミュニケーションにとって基本であるような行動(マクガイアとプリーストリー、1981年)

○対人的相互作用の間に観察され、社会的役割や関係性を立派にこなす能力によって特徴づけられる行動(シェパード、1983年)

○望ましい社会的成果を導く特定の肯定的対人行動(ヤングとウェスト、1984年)

○重要な社会的成果を、一定の状況の中で予言する行動(グレシャムとエリオット、1987年)

「能力的側面を強調した定義」には以下のようなものがあります。

○他者によって正または負の強化を受ける行動を発現させ、罰せられたり圧倒されたりするような行動を抑える複雑な能力(リベットとレウィンソン、1973年)

○社会的に受容され評価されると共に、個人にとって、あるいはお互いにとって利益となるような特定のやり方で、一定の社会的文脈の中で他者と相互作用を行う能力(コムとスレービー、1977年)

○特定の社会的課題を有能に遂行することを可能にする特定の能力(マクフォール、1982年)

このようにソーシャルスキルを一つの定義として包括的に整理することは困難ですが、経験的・直感的にはソーシャルスキルが何なのかについて概ね共通のイメージがあることも明らかなのです。ソーシャルスキルとは他者とのコミュニケーションや集団活動における振る舞い方・態度によって、自分の目標あるいは社会的な目標(他者との共通の目標)を達成する技能のことです。

ソーシャルスキルとは、対人的な相互作用のプロセスの中で用いる効果的な行動・発言・態度のことであり、集団活動(社会生活)に対する適応プロセスの中で用いる効果的・規則的な行動や発言のことなのです。ソーシャルスキルは個人的あるいは社会的な仲間関係を構築したり維持したりすること(他者からの愛情・承認を得るためのプロセス)とも関係しているので、個人のメンタルヘルス(心の健康)を大きく左右する一要因にもなっています。

ソーシャルスキルとは、対人コミュニケーションや社会的行動を実行するプロセスのことでもあり、対人場面においては相手の感情・意図を適切に推測する能力である「心の理論」とも深い関わりがあるのです。


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