東京医科大が「女子受験生の点数」を減点していた問題:医学部と「女性差別・年齢差別」

東京医科大が女子受験生の点数を一律に減点して、学生全体に占める女子の比率を3割以下に抑えていた不正行為が露見し、「女性差別・不正受験」であるとして大きな非難の声が巻き起こっています。大学受験は実技試験や面接試験(OA入試)がある学校学部があるとしても、原則として「客観的なテストの点数」で合否が決まる公正な競争と考えられてきました。

客観的な点数を操作する「医大・医学部の独自の都合」によって、大学入試の結果の公正性が歪められてきた問題は深刻であり、性別が女性であるという事実だけによって、本来合格できていたはずの人(受験勉強を頑張ってきた人)が合格できないというのは受け入れがたいことです。

一方で、女性が医学部に合格して医師になっても長く続ける人(高齢になるまで終身に近いキャリアで続ける人)の比率が男性よりも有意に少なく、夜勤・残業のハードワークをこなそうとする女医の比率も低いために、男子学生を入試で優遇していたという東京医科大の言い分も完全に荒唐無稽なものとは言えません。

東京医科大の系列病院の勤務医のリソースが不足しがちという事情もあるようですが、女子学生の比率が高まれば高まるほど、ハードワークに耐えて系列病院・地域医療を支えてくれる勤務医を集めることが難しくなるというのです。

6年もかけて最難関の国家資格である医師免許を取得したのだから、女性も終身に近い形で医師をしてくれるのではないかと思いがちなのですが、女性は医師免許を持っていても何らかの事情・希望で職業としての医師(特に残業・宿直の多いフルタイムの勤務医)を続けない比率が男性医師よりも高いと言われています。やはり結婚・出産の後に女医のキャリアは途切れやすく、女医は配偶者も医師・医療関係者であることが少なくなく、医師をやめても(他職種に転職しても)世帯としての所得は高めである事情もあります。

女医が医師をやめる理由(医師をしてもアルバイト的な働き方になる理由)は育休・産休の制度の未整備や不十分さ、ブランクがある間に最先端の臨床医療の現場にキャッチアップしづらくなるということもありますが、それと合わせて医師という職業・職場が他の仕事と比較しても極端なハードワークであることが大きいでしょう。医師は時間拘束が長くて親身に患者に接するほど心身共に疲弊しやすく、大半の女性は子育て・家事とフルタイムの医師を両立させることが極めて困難であると感じているのだと思われます。

とはいえ、医学部志望の女性全員が結婚・出産を機にして医師をやめてしまうわけでもなく、医療現場の第一線や開業医で長く活躍している女性医師も多くいる以上、女性であることだけを理由にして、不正に受験の点数を減点して不合格にすることが許されて良いはずもありません。

医大や医学部の都合によって、ハードワークを受け入れてくれやすい男性医師の育成が望ましいのだとしても、その裏事情を隠して「公正な受験を実施しているような虚偽の建前」を作ることはやはり罪であり、男子学生を多めに取りたいのであれば、入試の募集段階から「男子7割・女子3割の合格者数の比率」にすることを明記しておく必要があります。

公正に採点すれば女子学生の比率が高くなりすぎてしまい、系列病院や地域医療に必要な医師全体のリソースが不足してしまう(長期スパンでは男性医師1人は女性医師3人分の働きに等しい)という理由が、統計的に妥当なものであるかどうかを示す必要もありますが、「女性医師が長期的にキャリアを継続していきやすい医師の職場環境・育休制度」などを更に整えていくことも急務なのでしょう。

それにしても、20年以上前までは医学部は男子ばかりの印象がありましたが、現在では本気で医学部受験を目指して勉強する女性が増え、18歳時点の平均的な学力では男性よりも女性のほうが優位になっているようですね。ただ医学部受験の本質的な難しさは、「入試時点の頭の良さ・点数の高さ」と合わせて「医師として長くタフに働いてくれそうかどうかという要素(医師養成には高額の税金・補助金が投入されているため長く働ける人が望ましい)」も重要になってくることでしょう。

かつても、「女性差別」と合わせ「年齢差別(中高年だと合格しても医師として働く期間が短すぎる)」で点数を減点されて不合格にされた中年女性が、大学を相手取って「不合格撤回の訴訟」を起こしていましたが、女子医大を除く医大・医学部には昔から「若い人・男性を優遇したい動機付け」が潜在的に強く働いていることは確かなように思えます。


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