“回避性パーソナリティー障害・退却神経症”から見る現代人のストレス反応性の広がり

自我が傷つけられたり重い責任・負担を感じさせられたりする場面を避けるという『回避性パーソナリティー障害』は、1990年代までは学校・会社・仕事といった人生の主要な活動から退却するという笠原嘉(かさはらよみし)『退却神経症』によって説明されることが多くありました。

退却神経症の人が避けてしまうのは、誰かに管理・査定をされていたり何かを絶対にしなければならなかったりする『精神的なストレスの強い状況』であり、自分の価値・能力やプライドが脅かされてしまうような『他者との競争場面』ですが、これらは『学校や会社の集団生活・義務的活動(勉強・仕事)』では必ず付いて回る要素です。

学校・会社における所属や義務的活動は、例外はあるにせよ、人生の社会的アイデンティティーや経済活動(お金を稼いで生活すること)と密接に関係していることが多いので、部分的に退却することで『不登校・出社拒否』から派生する社会適応(経済状況・精神状態)に問題が生じやすいのです。

友人関係のストレスや学業不振の劣等感から学校にずっと通わなければ進学・就職に不利になりやすく、職場の人間関係や仕事のストレスが嫌で会社にずっと行かなければ懲戒処分を受けて解雇されたり収入がなくなったりするので、退却神経症(スチューデントアパシー含む)や回避性パーソナリティー障害の本人にとっての社会経済的な不利益は一般に小さくはないのです。

退却神経症や回避性パーソナリティー障害の原因には、立ち直れないほどに自尊心を傷つけられた過去のトラウマから来る社会不安(対人恐怖)と、自分が他者よりも劣っているという現実を競争の結果(集団内での扱い)によって突きつけられたくないプライドの高さ(現実自己の否認)が関係しています。

そのため、対人的な緊張感・不安感が弱かったり(上下関係を意識させられることのないフラットな人間関係であったり)、自分に求められる責任や仕事の内容が重くなかったりする状況であれば、『部分的な社会適応』をすることは可能なことが多く、うつ病(気分障害)に見られるような『全般的な精神運動抑制』による抑うつ感や無気力に覆われているわけではありません。

新型うつ病や非定型うつ病では、『ストレス反応性の抑うつ感』が見られることがあり、楽しいことや興味のある活動であれば参加できるのに、ストレスを感じる嫌なこと(面倒なこと)や関心を持てない活動には参加できないということが、『擬態うつ病(仮病)』だとして非難されることがあります。

典型的なストレス反応性の抑うつ感としては、学校に行こうとすると頭が重たくなって何もやる気が起こらなくなり体調も悪化するとか、会社に行こうとすると気分が深く落ち込み思考力も低下して仕事ができなくなり腹痛も起こってくるとかいうことがあります。

しかしこういったケースでも、『学校は行けないがアルバイトなら行ける・仕事は行けないが映画館や旅行なら行ける・正社員では精神的につらいが時短の派遣ならできる』というストレス反応性(場面選択性)の症状の変化・好転が見られるわけです。

笠原嘉は退却神経症の定義において、気楽な副業や娯楽的な活動はできるが、責任・重圧・競争が強くなりやすい本業(学業・仕事)から撤退する『部分的退却』が現代人に多いことを指摘しています。

この部分的退却の問題は、就職氷河期(ロスジェネ世代)とゆとり世代(シビアな競争の回避)、価値観の多様化(終身雇用前提の働き方の崩壊)を踏まえた現代において、よりリアルなものになってきています。

状況や相手によって適応度(リラックス度)が変わるという『ストレス反応性(場面選択性)』そのものは、多かれ少なかれ誰にでもある普通の反応なのですが、それが過剰になって自分の意志や努力ではどうしてもストレス状況のある学校・会社(仕事)に適応できないというレベルになると、退却神経症や新型うつ病・非定型うつ病に遷移していきやすくなると考えられます。


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