北朝鮮問題にどのように対処すべきか?:圧力強化のリスクと対話交渉のポイント(不透明な北朝鮮の要求)

北朝鮮問題に対する安倍政権の基本的対処法は、『日米韓の軍事的連携+物理的な抑止力の強化』であり、物理的な抑止力の強化として最新鋭のイージス艦アショアの購入やミサイル迎撃用のPAC3(地対空誘導弾)の配置増加、ミサイル発射段階で落とすレーザービームの開発などが検討されており、日本の防衛予算は今後加速的に肥大する可能性も出てきている。

北朝鮮の『ミサイル発射(ICBM強化)・核実験』による無謀な挑発と安保情勢の緊張:1

日本の国内世論でも北朝鮮の軍事的危機・ミサイル発射の威嚇があるのだから、『防衛・安全保障の予算の増額には賛成』という意見が増えているようだが、イージス艦やPAC3による現時点のミサイル防衛システムは『ミサイル迎撃の命中精度』が低く(米国内の実験成果でも迎撃率は50~60%台のようである)、本当に日本国土にミサイルが撃ち込まれた場合に迎撃して核や爆弾を無力化できる保障は強くない。

ミサイル防衛システムの強化は出来る範囲で行うことは必要だが、超高齢化社会で財政が段階的に今よりも厳しくなり社会保障の税負担も大きくなる日本において、5年、10年と防衛予算を継続的に増大させていくことには限界がある。

またどんなにお金をかけてミサイル防衛システムや自衛隊の攻撃能力を高めても、北朝鮮の核攻撃・ミサイル攻撃のリスクをゼロに近づけることはできず、仮に自暴自棄になった北朝鮮が複数箇所へのミサイル攻撃を仕掛けてくれば、相当な犠牲者が出て放射能汚染が起こることは完全には避けられないだろう。

その北朝鮮リスクは憲法9条改正によって自衛隊を国防軍に改変した上で装備・攻撃兵器を強化しても同じことである。現時点で世界最強の軍事大国であるアメリカが、戦争を辞さない警告で圧力を掛けていても北朝鮮に対する十分な抑止力にはなっていないのだから、日本が自衛隊から軍隊を創設して多少強化しても、北朝鮮が素直にミサイル発射実験をやめてくれるとは考えにくいからである。

ミサイルを迎撃できる防衛態勢の強化はすべきだが、本当に北朝鮮との戦争を開戦すれば、個人の人権や生命を尊重する日本の主観的な損失・被害のほうが大きくなってしまい、放射能汚染などがあれば経済・財政・土地へのダメージも計り知れないものになる。

その意味では、北朝鮮に対する軍事的な攻撃能力の強化や日本単独で戦争可能な体制・憲法へのシフトというのは、北朝鮮問題への対処策としてとてもベストとは言えないのであり、『人命の犠牲覚悟で北朝鮮への軍事作戦の断行』といっても日本人の大半は自分や家族が死ぬ覚悟を固めてまで、一か八かで北朝鮮へ先制攻撃(ミサイル基地破壊作戦)を仕掛けることに賛成はしないだろう。

最終的な北朝鮮問題の解決のためには、やはり『対話と圧力のバランスを組み替えていく粘り強い外交交渉』が必要であり、その交渉に実効性を持たせるためには無謀・危険な軍事行動を許さない『中国・ロシアが本気で参加する国際社会の連携と結束』を実現しなければならないように思う。

北朝鮮も本当に攻撃能力(爆発能力)を持つICBMを米国・日本・韓国の人が居住する領土内に撃ち込めば、一時的なダメージを与えられても、間もなく北朝鮮そのものが壊滅的な報復攻撃(核を使えば米国の大量の核兵器による報復)を受けることは百も承知のはずだから、挑発を繰り返す北朝鮮が死傷者を出すデッドラインを自ら踏み越えてくる可能性は現状では低いだろう。

しかし、実際に死傷者の出るミサイル攻撃を仕掛けてこないからといって、北朝鮮の暴挙・挑発を無視すればその間に『ミサイル・核兵器の性能向上の時間』を与えてしまうことになるので、どういった抑止力や交渉条件をどのタイミングで真剣に提示するかというのは非常に難しい。中には北朝鮮には『対話』など通じないのだから、日米韓と国際社会はもっともっと北の嫌がる『圧力』を強めていって、経済制裁だけでなく軍事制裁のオプションでも追い詰めるべきだという過激な意見もある。

しかし、とにかく圧力と脅しを強めていけば、いつかは米国や国際社会を恐れて怯んだ北朝鮮が核とミサイルを放棄して降参してくれるだろうという見通しは、『圧力に耐えられなくなった北朝鮮の自暴自棄な暴発リスク』を軽視している部分もあるだろう。今の北朝鮮の瀬戸際外交・挑発的な軍事行動を見ていると、戦前に国際連盟を脱退して満州国・東南アジアに侵略的に進出しながら国際社会で孤立していった旧大日本帝国の姿とどこか重なってしまうのだ。

満州事変を起こして国際連盟を脱退し、『国体護持・絶対的国防圏・勢力拡大(戦略的な資源確保)』を至上価値とした旧大日本帝国は、どれだけアメリカの圧力を受けても『徹底抗戦・戦争利権の維持(満州国はじめ戦争で獲得した領土維持)の外交・軍事の姿勢』を変えようとはしなかった。

禁輸措置(経済制裁)の強化をされてハルノートで最後通牒を突きつけられても、『資源と物量・生産力・社会発展度の差』で負けると分かっていた日米戦争に日本は駆り立てられていった。北朝鮮の金王朝体制とも呼ばれる独裁政治体制は、旧大日本帝国の天皇主権体制や国体・天皇を第一の価値として忠誠心を持たせる臣民化(皇民化)教育をモデルにしている側面もあるとされる。

現在の北朝鮮も旧日本と同じように『アメリカからの軍事圧力と経済制裁の強化』に対して屈服してアメリカの言い分を受け容れる保障はなく、核とミサイルを放棄するくらいなら(金正恩体制の長期存続性をアメリカが担保しないなら)負けることを覚悟して、捨て身の決戦に出てくる可能性もゼロとは言えない。その場合には、実質的に北朝鮮とアメリカの戦争であっても、同盟国である地理的に近い日本・韓国のほうが大きな人的・物的な被害を蒙る恐れが出てきてしまう。

北朝鮮問題を圧力一辺倒や軍事的決戦の威圧だけで解決することは難しいというか、日本人の犠牲を出さずに軍事的解決をすることはほぼ不可能に近いから、『他人事として傍観者の目線』で考えられる人でなければ、日本に居住していて一か八かで北朝鮮の核・ミサイルの軍事能力を無効化するための攻撃を仕掛けてほしいと本気で考える人は限定的になってくるだろう。

現代日本の平均的な価値観からすれば、いくら北朝鮮に決定的なダメージを与えて金正恩体制を崩壊させられたとしても、自分や家族が核攻撃を受けて苦痛にのたうち回って死んでしまったり、自分の住む県・市が焦土になってしまっては、そんな戦争の勝利は意味がないように感じられるのが普通だからである。

北朝鮮問題の解決が困難になっている大きな理由は、『北朝鮮首脳部・金正恩総書記が何を求めているのか、何が不満で頻繁にミサイル発射の軍事的挑発を続けているのか』がよく分からないことであり、よく分からないことで外交交渉の落としどころも決めることができないのである。

更に、『日本・アメリカ政府の首脳や閣僚と北朝鮮高官のパイプがない』ために北朝鮮・金正恩の真意が分からないまま、『相手がやるつもりならやられる前にやるしかない・金正恩は対話不能な狂人のような人物だから先制攻撃で無力化すべきだ』といった開戦肯定ムードのようなものまで不安に駆られた一部の日本国民に広がっているのも不安なところである。

戦争勃発や核攻撃の応酬という最悪の事態(無実の国民の悲惨な犠牲)を回避して、北朝鮮問題の決定的な解決目標である『朝鮮半島の非核化・対話可能な北朝鮮の姿勢』に近づくためには、かつて小泉純一郎元首相が北朝鮮を電撃訪問して拉致問題を進展させたように、トランプ大統領・安倍首相やそれに近い閣僚が北朝鮮の金正恩総書記と直接交渉して『北朝鮮が具体的に何を望んでいるのか?体制保証をするにしてもどういった対応をしてほしいのか?』を引き出して、日米朝の間で妥協可能な交渉条件(あまりにむちゃくちゃな条件は飲めないとしても)の優先リストを設定していく必要があるように思う。

歴史を振り返れば戦争勃発に至る場合には、国家の代表同士の対話機会が断絶してしまい、閣僚・高官レベルでも仮想敵国の真意・本音・条件についての情報が入ってこなくなるものだが、『対話不能と見なした相手への圧力強化・戦争覚悟』というのは現代の先進国の人々にとっては必ずしも賢い政治的選択とは言えない。

アントニオ猪木氏がこんな緊迫した安保情勢の中でも、北朝鮮に渡って記念式典に参加し政府高官と会談するらしいが、本来はより日本国内で影響力のある政治家・閣僚級が金正恩総書記の真意や受け入れ可能な条件を聞きただしにいくというような戦争回避の使命感を持った北朝鮮入りを画策すべきだろう。


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