カウンセリングマインドで結果としてやる気を引き出す:なぜ人の話を上手く聴けないのか?

スパルタ教育から話を戻すと、カウンセリングマインドの『人の話を聴くこと』というのは『人の話を聴いて自分の意見を返すことで、相手を変えようとすること』ではなく、『人の話をその人の欲求・意図に従って共感的に聴くことで、相手を受け容れること』です。

カウンセリングマインドとリーダーシップには、『人は自分の存在・能力を評価してくれて受け容れてくれる人(集団)に自発的に貢献したいとする傾向を持つ』という点において一定以上の相関関係もあるのです。

人のやる気(意欲)を高めるか無くしてしまうか:人を思い通りに動かすことはできない

人の話を聴かない人(人の話を聴けない人)というのは、『相手の欲求・感情・意図(事情)に配慮せず共感もしない人』というのに近く、相手の話を真剣に聴いているような態度を示しているとしても、心の中では『特定の結論や自分の欲求(目的)の押し付け』があるので、それを察した相手が素直にやる気を出しにくく、反発やひねくれた対応を受けやすくなってしまうのです。

カウンセリングマインドを持って人の話を聴こうとする時には、『偏見・差別に基づく固定観念(頑固な思い込み)』『特定の結論=自分の欲求(目的)の押し付け』を排除して、『相手が話したいと思っている内容(欲求・感情・意図)』に対して丁寧に傾聴しながら共感・受容をしていくことになります。『オープンな態度の理解者』のポジションで相手の話を丁寧に聴いて受け容れることは、相手の潜在的なやる気や能力・自信の可能性を引き出すことに役立ちやすいのです。

相手の話を聴けない人は『投影(projection)・反動形成(reaction formation)』の自我防衛機制を用いていることが多いのですが、それは無意識に抑圧したり合理化して誤魔化している『自分自身の未解決の心理的問題』があることとも関係しています。

自分の未解決の心理的問題があると、その問題と関係する欲求やフラストレーション(欲求不満)が無意識に抑圧されて、『実際の欲求(愛情・甘えなどの求めていること)とは正反対の攻撃的・批判的な言動』を取ってしまう反動形成を起こしやすいのです。あるいは自分が持っている欲求・感情・フラストレーションを相手に投影してしまって、本当は自分が怒っていたり無気力になっていたりするのに、『相手が怒っている・相手が無気力になっている』というように思い込みやすいのです。

自分に未解決の心理的問題が残されている時(抑圧・投影・反動形成といった自我防衛機制が発動している時)、あるいは自分で自分の弱さやフラストレーションを認められない時に、『人は相手の話を共感的・受容的に聴くことができない心理状態』になりやすいのです。

S.フロイトが始めたとされる精神分析家同士で自分の心理的問題について再検討する『教育分析』、あるいはカウンセラー同士で自分の心理的問題や難しいケースについて話し合ったり先輩からアドバイスを受けたりする『スーパーバイジング』といったものも、突き詰めれば『相手の話を共感的・受容的に聴くことができる心理状態』を安定的に維持するための方法として理解することができるでしょう。

自分で自分の心理的問題を受け入れて解決に近づけ、自分の弱さを受け入れて非適応的な防衛機制を弱めることによって、『相手の話を聴くことができる余裕のある心理状態』や『リーダーシップを発揮できる部下(生徒)を共感的に理解しようとする心理状態』が再構成され、『人間関係・仕事・学業』でも好ましい結果を出しやすくなることが多いのです。

投影の防衛機制が働いている時には、『自分の要求・否定・押し付け』を『相手の要求・否定・押し付け』と勘違いしてしまうことが多いので、『相手の意見・主張』を自分に何かを押し付けてきているように感じて、落ち着いて共感的に聴くことができなくなります。

投影の防衛機制によって心理的問題が未解決のままになっていると、『自分と相手の人格・言動(意見)の境界線』がなくなってしまいます。自他の境界線がなくなった結果、『自分は自分・相手は相手という割り切り』ができなくなり、『相手の意見・主張』に対して非常に強い攻撃性・圧迫感(強要性)を感じやすくなってしまうのです。

しかし、そういった他者が持っているように感じる『攻撃性・圧迫感(強要性)』は、本当は自分自身が持っているもの(相手を思い通りに動かしたいという強要性・自分と異なる価値感に対する攻撃性)であることも多いのです。自分の無意識に抑圧された未解決の心理的問題(自分が持っている欲求・感情・不満)に自覚的になって自分を変えようと思わない限り、『相手の話をそのまま共感的・受容的に聴くこと』が非常に難しくなり、更に何かを強制されているという苦痛を感じてしまうのです。


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