他人を“自分の仕事の邪魔”と感じてしまう心理と完全主義思考による不適応・無気力のリスク

ある分野の優れた能力(知識・技術)や意欲(やる気)がある人は、『他人にも自分と同程度の能力・意欲があるのが当たり前』という決めつけをしてしまいがちである。そして自分ができることを他人ができないことが許せなくなり、怒り・不満を溜め込み、リーダーシップや教育能力を発揮できなくなり全体の仕事のパフォーマンスも落ちてしまう。

『あいつは仕事ができない・全く使い物にならない・あの人のせいで仕事が終わらない』といった部下(後輩)への不平不満をいつも述べているような上司(先輩)は少なくない。部下(後輩)が『自分の仕事の邪魔・障害』になっているように感じている上司(先輩)は、パワハラをするリスクが高くなるし職場の人間関係(職場の居心地)を悪くしてしまいやすい。

そういった上司(先輩)の多くは、『長くその仕事をやっている自分と同じくらいに部下も仕事ができるべき・入ったばかりで何も教えられていない新人でもこれくらいの仕事はできないとおかしい・自分がなぜわざわざ仕事を教えてあげなければならないのか・何をして良いか分からない状態の新人に何も指示指導をしなくても自分からできる仕事を探して動いてほしい』といった非現実的・自己中心的な認知を持っている。

過剰な期待や高いハードル設定をしてしまい、その期待通りに部下(後輩)が動いて働いてくれないから頭に来たりストレスを溜め込んでしまう。だがリーダーシップの基本は、『相手のことをしっかり観察して長所・短所・意欲・適性・各種の心理状態を見極めること』である。

リーダーシップを発揮して相手のモチベーションや仕事の成果を高めるためには、『相手の短所(ダメな部分)だけを取り上げて否定する』のではなく、『相手の長所(良い部分)を発見して肯定的に評価して、次のステップに進めるよう支持すること』が大切になってくる。

すべての分野において能力も意欲もないダメな部下(後輩)も稀にいるかもしれないが、働き始めたばかりの新人の時期に完全に意欲のない人材というのは少なく、部下(後輩)の仕事ぶりや行動・表情・会話などをしっかり観察していくうちに『部下(後輩)の適性・特徴・能力の活かし方』『モチベーションの高め方』のポイントが見えてきやすい。

自分ほど仕事のできない部下・後輩に限らず、職場にいる他者を『自分の仕事の邪魔・障害』のように感じてしまう自己中心的な認知の背景には『自分自身の仕事状況や時間管理の余裕のなさ=ノルマ・目標達成に圧迫される心身の調子の悪さ』も関係している。

気分・感情を改善する認知療法の基本戦略は、自分の欠点ではなく長所に意識を向けて、客観的な出来事を肯定的に解釈していくことにあるが、『自分・他者の欠点(ダメな部分)』ばかりに意識が向かって成果を出せなくなる原因の一つに、『完全主義思考(0か1かの二分法思考)』がある。

正確には非現実的かつ非効率的な完全主義思考によって、人は『原理的に完全にはなれない自分・他者に対する評価や信頼』を失いやすくなり、『ミスのない完全な状態でなければ何をやっても意味がない』という無気力な状態(何も実際の行動ができない状態)に落ち込みやすくなる。

完全主義思考に過度に囚われた優秀な人は、途中のどこかで一度でも失敗や挫折をしてしまうと、それ以上の行動や努力を続けることができない『潔癖さ・ひ弱さ・逃避傾向』を露呈しやすくなる。

元々は成績優秀だった人や頭脳明晰だった人でも、『完全でなければ意味がない・常に他人より優れていなければ意味がない』といった非現実的かつ非効率的な完全主義思考(過剰な競争心・他者との比較)に囚われてしまうことで、現実的に意味のある仕事や努力を続けることができなくなってしまうリスクが高まるのである。

現実には有り得ない完璧な結果を求める『完全主義思考』は、真面目で几帳面な人ほど持ちやすい非適応的な偏った思考であるが、うつ病の病前性格として知られるメランコリー親和型性格や執着性格の根底にも『完全に仕事や学業をやり遂げられなければ意味がない・真面目にコツコツと努力してミスを全くせずに責任を果たさなければならない』という自分を追い込んでいく過度の完全主義思考があることが多い。

部下・後輩など他者が仕事ができないからといって『邪魔・障害』のように感じて、自分がイライラして人に当たってしまうような人も、『他者を邪魔・障害と感じるような好ましくない短所の部分』ばかりに意識を向けたり、『誰も自分の邪魔にならない完全主義的な職場環境・仕事状況の希望』を持っていたりする。

上司に対して過度の苦手意識や自分の邪魔になっているという感覚を持つ部下もまた、『誰も自分の邪魔にならない完全主義的な職場環境・仕事状況の希望』に囚われていると言えるが、そういった万事が思い通りになる完全な職場や仕事状況というのは『現実には存在しないもの』であるから、その希望に執着している限り不平不満のストレスが無くなることはない。

この職場の人間関係や完全主義の問題を改善するためには、『注意を向ける相手(自分に合って理解してくれる相手・仕事でプラスの多い相手に注意を向ける)』と『相手のどの部分に注目するか(相手の短所ではなく長所を見つけて注目する)』を調整していくことが効果的である。

仕事の悪い部分ばかりが目立つように見える相手であっても、『ここの部分や性格は素晴らしい・この分野の仕事や知識は優れている・あの時にこういったことで役に立ってくれたといったポイント』を探せば一つか二つは見つけることができるはずであり、困難や障害、欠点ばかりを過大評価しないようにすること、その相手の良い部分に注目して人間関係を良くしていくことが大切である。


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