リーダーシップの心理学と上司・部下の上下関係(役割分担)の区別:1

リーダーシップの心理学では、“P(Performance,目標達成能力)”“M(Maintenance=集団維持能力)”の強弱を組み合わせて考える三隅二不二(みすみ・じゅうじ,1924~2002)『PM理論(P-M leadership theory)』がよく知られている。

PM理論はリーダーの能力や資質を『指示・指導による目標達成(実際の成果)』と『人間関係の調整による集団統制(まとめる人望)』の二面のバランスから考えているものであるが、部下(人間)を仕事に動機づけていく場合に難しいことの一つが『報酬の与え方』である。

人間の動機づけ(モチベーション)は大きく、金銭・物品・評価上昇などの外的な報酬を貰えることによってやる気を出す『外発的動機づけ』と、仕事・課題の内容(内容の魅力・顧客の感謝・技術の向上)そのものに興味をもって自発的にやりたいと思う『内発的動機づけ』に分けられる。

仕事には給料(報酬)を貰うためや職業的地位を高めるためにするという『外発的動機づけ』も大きく関係しているが、部下(他者)を働かせようとするリーダーシップやコミュニケーションでは『金銭・物品の報酬』に頼りすぎると、返って部下(他者)のやる気が低下したり職場の士気を保てなくなったりする。

行動経済学の心理実験では、仕事内容にほとんど面白みの少ない『同一の単純作業』をさせる場合には、金銭の報酬を大きくするほど『単純作業自体のやりがい(面白さ)の評価』が下がりやすくなることが知られていて、その理由は『原因帰属理論』で説明されることが多い。報酬が少ない時のほうが単純作業のやりがいや意味づけ(共同作業の楽しみ)をどうにかして探そうとする心理が働きやすく、報酬が増やされると単純作業そのものには意識が向かなくなり、報酬の高低だけを評価する心理になりやすい。

給料(報酬)が高いほうが外発的な動機づけ(モチベーション)が高まるというのは一般論として正しいのだが、経営者・上司として部下(他者)を働かせるような場合には『中途半端(一時的)な報酬の引き上げ』は逆に部下(他者)のやる気を低下させたり、(特に報酬を元に戻して下げた場合に)不満を大きくしたりするリスクもあるということである。

自分が『相手のためを思って良かれと思ってした対応(報酬の一時的な引き上げ・下手にでる謙虚な振る舞い)』が、相手のモチベーションや心理状態を悪い方向に変えてしまうことは少なからずある。

リーダーシップや対人関係の心理学の事例では『報酬の与え方・役割関係の区分・上下関係の区別』などを相手のためを思って調整することで、相手が『そのくらいの報酬は貰えて当たり前・相手は上司であるが自分と対等な立場である(甘くて気が弱いので自分に強い指導的な態度は取れないはず)』といった傲慢な考え(相手を下に見る意識)を持ちやすくなって、かえって悪い結果を導いてしまう問題が起こりやすい。

リーダーとなる人にもさまざまなタイプ(性格傾向)の人がいて、部下のモチベーションを高めたり集団の連帯感・協力意識を高めたりするために用いる指導・支援・相談・ケアの方法も変わってくる。

リーダーである自分を『素晴らしい人格者・尊敬されるべき優れた人物・完璧にセルフコントロールできる寛容な人物』と実際以上のものに見せかけたい(そのように見られて慕われたい)という承認欲求が強くなりすぎると、上記した『報酬の与え方・役割関係の区分・上下関係の区別』の間違ったやり方に陥りやすくなって自分も相手も疲弊させてしまう。自分はストレスと過労で燃え尽きやすくなり、良かれ(好かれたい)と思ってへりくだってあれこれ報酬・賞賛を与えたりもした部下が自分を舐めて従わなくなるといった悲劇にもなりやすい。

つまり『部下の人間性・モチベーション』を悪い方向に変えてしまう『過剰な気遣いやバラマキ型の報酬・過度のへりくだりや持ち上げ』をしてしまうということである。


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