共謀罪法案についての考察:権力濫用の不安・懸念を払拭する適正な運用の積み重ねを

共謀罪法案(テロ等準備罪を新設した改正組織犯罪処罰法)は国際組織犯罪防止条約を締結するという目的もあって成立したが、2020年の東京オリンピックに向けたテロ対策としての一面もある。『共謀罪』という名称が強調されると、一時的に集まった一般人の非犯罪集団が、犯罪に近いような発言を不意にしてしまうと捜査・逮捕の対象になるという心配をしてしまいがちだが、政府答弁を信用するならば現状では『テロ等準備罪・組織的犯罪集団の監視や抑制』に重点があるということになる。

国際組織犯罪防止条約を締結すると、締結国間で捜査情報の交換や迅速な捜査共助体制の構築がしやすくなり、犯罪者・テロリストの国家間での引き渡しをスムーズに行えるようになるとされる。共謀罪の主要な目的の一つは、国際的なテロリスト集団のテロ計画の事前抑止や計画を知る関係者からの通報奨励にあり、条約を締結すれば外国から日本に侵入しようとしているテロ集団の情報入手をしやすくなるメリットもあるようだ。

安倍政権の長期化と加計学園問題で疑われた政官業の癒着:共謀罪(テロ等準備罪)の可決

国連加盟国の中で国際組織犯罪防止条約を未締結な国は、日本やソマリア、南スーダンなど11ヶ国だけであり、先進国である日本がテロ対策で捜査協力体制を整えるために条約締結を急ぐべき理由はあったといえばあった。

共謀罪(テロ等準備罪)で一番懸念されていたことは、『一般市民も捜査・摘発の対象になるのではないかということ』と『(暴力を手段としない沖縄の反基地運動・戦争反対運動など)反政府的な市民運動や言論活動も捜査・摘発の対象になるのではないかということ』であった。

つまり『暴力的・搾取的な組織的犯罪活動』と『反政府的な組織的政治活動』が混同されてしまうのではないか、市民運動や言論活動が共謀罪によって萎縮してしまうのではないかということである。

しかし政府の回答では、共謀罪(テロ等準備罪)が摘発対象として想定している『組織的犯罪集団』には、一般人の政治的・雑談的な集まりは含まれず、犯罪者でも一時的なその場だけの集まり(犯罪行為を計画・着手する組織集団としての性格がない集まり)であれば摘発対象にはされないということである。

政府が組織的犯罪集団の例に上げているのは、テロリスト集団、暴力団、麻薬密売組織、人身売買組織、振り込め詐欺集団などである。実際の法律の運用がどのようなものになるのかは不透明だが、このリストを見る限りは『一般人の雑談の集まり・市民運動や政治活動のための集まり』に限っては、捜査・摘発の対象に含まれないと見ても良いのだろう。

テロ対策に重点を置いた『共謀罪(テロ等準備罪)』というのは大まかに言えば、組織的犯罪集団の構成員や周辺者が、2人以上集まって重大犯罪を企て、そのうち1人でも実行準備行為に着手すれば、その段階で関係者全員を取り締まることができるという法律である。この周辺者というのが具体的にどういった人たちなのかによって、共謀罪の適用対象となる人の範囲も変わってくるだろうが、原則としては『組織的犯罪集団の犯罪計画に直接に関わった人か間接に情報を得ていた人』になる。

過去に何度も廃案になった『共謀罪』では、適用対象の団体が組織的犯罪集団に限定されていなかったこと(一般人・市民運動の集まりも含まれる恐れがあったこと)、実際の実行準備行為がなくても謀議・計画の段階で摘発することができたことが、今回可決された共謀罪との違いになっている。

共謀罪は治安維持の大義名分によって政治権力や警察権力の濫用を招きやすい性格を完全には無くせない。そのため、特に日本では戦時中に防共を名目にして反政府運動を封じ込めた『治安維持法』との関連で、共謀罪が拡大適用される恐れがあるのではないか(強権化している自公政権が将来的に反政府運動を締め付けるのではないか)との不安も生まれやすくなる。

共謀罪(テロ等準備罪)にまつわる不安や懸念は、『監視社会・密告社会・言論統制・警察権力の強化』とつながっているが、この不安・懸念を払拭するには『組織的犯罪集団・テロ対策のみに限定した捜査・摘発の原則』を拡大適用しない(一般人の言論活動・政治運動とは無関係な法律である)という運用の実績を積み重ねて、国民の信頼と安心を高めていく以外にはないのだろう。法務省刑事局長は国会答弁で『犯罪の嫌疑が生じていないのに尾行や張り込みをすることは許されない』と答えており、警察が法律の趣旨と原則に依拠した適正な捜査・監視・摘発を行っていくことで、共謀罪に寄せられた不安も和らぎやすくなるはずだ。

共謀罪の審議・採決では、民進・共産など野党が金田法相の問責決議案、内閣不信任決議案などを提出して採決の時間稼ぎをしたり、自民が参院法務委員会での採決を省略して審議経過などに関する委員長の『中間報告』だけで済ませて野党の意見を排除して決めてしまうという混乱があった。さまざまな疑念も多い共謀罪のような重要法案では、与野党で十分な審議を尽くして国民の納得を得ていないと後に禍根を残しかねない。


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