回避性パーソナリティー障害の傾向を強める現代人のライフスタイルと消費文明・ネット社会

回避性パーソナリティー障害の傾向性がある人が増えている大きな原因として、利便性や効率性が高まり拝金主義で勤勉道徳がかつてより衰え、ネット(スマホ)が普及して画面を通した間接的コミュニケーションが一般化した『現代的なライフスタイル』もあるだろう。

回避性パーソナリティー障害の人はなぜ『対人関係の苦手意識・面倒くささ』が強まるのか?

現代人は中流的な経済状況の家庭で育てば、子供時代からインターネットを使って物質的・情報的に満たされた生活を送り、ある程度甘やかされれば便利なモノや道具があって当たり前という消費文明に過剰適応してしまう。受験・学歴に偏った価値観に染まれば、勉強さえして点数・順位などの数字の結果を出せば良い(大人になればお金さえあれば良い)とする社会性・協調性の乏しい自己中心的な性格形成をしてしまう可能性も高まる。

農業経済・工業経済の時代のように、つらくて大変なことも多い『生産者(労働者)』としての自己アイデンティティーを自然に身につけていくことが簡単とは言えなくなっている時代背景や個人の能力・魅力・努力の競争原理による格差(自己評価の低下のしやすさ)も影響している。

現代はインターネット(スマホ)のSNSのコミュニケーションにせよ、ネット通販の買物やネット上の株取引にせよ、企業の自宅勤務・リモートワークの促進にせよ、『直接に他者と接してやり取りする対人コミュニケーション』を回避しても迅速に目的を達成することができるツールや手段が増えている。

こういったネット社会や技術革新による利便性・効率性の増大が、『社会的な動物』として今まで進化してきた人間の行動パターンや対人関係に一定以上の影響を与えていることは確かで、単純に『一日のうちで画面を見て過ごす時間』がネット以前(1995年以前の頃)とは比べ物にならないくらい増えている。

回避性パーソナリティー障害が重症化する前兆としては、(いじめなど特別な理由もないのに)思春期の子供が学校に行くのが面倒くさいといって行かなくなるとか、(うつ病のような精神運動抑制で動けないわけではないのに)大人が会社に行ったり働くのが億劫になって長期の失業状態に陥ってしまうとかいう現象があるが、『学校・会社・仕事・人間関係に対する社会的適応』というのは基本的に大変で面倒なことが多いものである。

ストレスも多くて大変な労力・時間も必要になる社会的適応の課題に、自分がどのようなモチベーションや意味づけの意識で立ち向かっていけるか(前向きな意欲を維持して適応的な努力・行動をやめずに続けられるか)が、現代ほど問われた時代はかつてなかったとも言える。

それは現代ほど衣食住に困らない時代(生きるための社会的行動を取る理由をあれこれ考える時代)が過去にはなかったことの現れでもあり、現代ほど仕事に必要なスキル・経験が複雑化している時代(ただ健康でやる気さえあれば納得できる仕事で稼げるわけではなく仕事のための学習が必要な時代)も過去になかったことの現れでもあるのだが…。

人生を決断しないモラトリアム遷延や他人と関わらない非社会的行動を生み出す『前向きな意欲(やる気)の低下』『対人関係の苦手意識』『自己評価(自己イメージ)の低下』は、回避性パーソナリティー障害の各種の行動パターンを特徴づけている。

極度の回避性パーソナリティーの傾向性は、現代人にとって豊かで便利な現代の消費社会の中での『主観的な悩み+客観的な格差』を生み出す原因にもなっているので、これらの心理社会的問題ややる気をなくす自他の認識を解決する自分と社会にとってのメリットはやはり大きいということになる。

社会的活動や人間関係の何もかもが面倒くさくて煩わしいという行動抑制の傾向は、過去のトラウマや性格形成過程が背景にあって『失敗・挫折・拒絶』によってこれ以上傷つけられたり恥をかいたりしたくないという自己防衛の心理とも重なる部分が多い。『自己評価・自己イメージ』を適切な水準に回復させながら、『実際の他者・社会と関わって得られる何らかのメリット』を一つでも二つでも体験してみる機会を持てることが社会的行動の意欲回復のポイントになってくる。


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