回避性パーソナリティー障害の人はなぜ『対人関係の苦手意識・面倒くささ』が強まるのか?

『前向きな意欲(やる気)の低下』は極端に強くなれば精神医学的なうつ病(気分障害)に当てはまることになるが、『対人関係の苦手意識』とも密接な関わりを持つものである。

『対人関係の苦手意識』といってすぐに想起されるのは、人と会ったり話したりすること、人前で何かを発表したり動作をしたりすることに強い緊張感・不安感を感じて動悸・発汗・赤面のような身体症状がでる『社会不安障害(社交不安障害,対人恐怖症)』であるが、意欲の低下と相関する問題では不安・恐怖よりも『人と会うことの面倒くささ・人と責任(義務)の生じる約束をすることの億劫さ』というものが強くなりやすいだろう。

回避性パーソナリティーの『面倒くささ・億劫さ』と社会適応の妨げとなる『前向きな意欲(やる気)の低下』

人と関わることが面倒で億劫という人も、『他者や他者とのやり取りに対する興味関心がほとんどない自閉症スペクトラムの程度が強い人』『他者や他者とのやり取りに対する興味関心はあるが自分にとってちょうどいい関係性(相手)がなかなかない人』に分けることができる。

前者は他人に対する興味(欲求)がなく他人と関わっても喜び・楽しみを感じにくい、他人の評価にもあまりこだわらないので『他人と関わらない一人の時間・場所がとにかく好き(他人には自分にあれこれ構ってほしくない)』という感じになりやすい。

後者の『他者や他者とのやり取りに対する興味関心はあるが自分にとってちょうどいい関係性(相手)がなかなかない人』というのは、『他人に気を遣いすぎて疲れてしまう人・他人の要求や期待に応えることが煩わしいと感じる人・長い時間、他人と一緒だと気疲れしてしまう人』で、現代人には比較的多いタイプの人たちである。

人と会うと疲れてしまう人は、人に良く思われたい、人に悪く思われたくないという気持ちが強い人で、他人からの否定・拒絶(他人が機嫌を損ねて自分を低く評価すること)に対して敏感になる傾向がある。こういった人に良く思われたい、人に嫌われたくない(人に失望されたくない)という心理は現代人では一般に相当に強いので、アドラー心理学をベースにした『嫌われる勇気』がベストセラーになったりもするわけである。

人と会うと疲れてしまうとか、人と話したり関わるのが煩わしいとかいう人のもう一つの心理として、自己愛性パーソナリティー障害とも関係した『人間関係のメリットとデメリットへのこだわり・都合の良い人の過度の選り好み(自分が気に入って自分に負担やデメリットの少ない人としか接したくない)』もあるだろう。

こういった人は、具体的根拠のない自信過剰や自己愛の強さによって、他者の相対価値(自分と合うような人間かどうか)を値踏みしやすく、自分が納得のできる気に入った人としか関わりたがらないが、基準・好みが高すぎたり要求・期待が多すぎたりして、結局、誰とも関わりたくない億劫さや煩わしさに負けてしまう。

更に、他人に対しては選り好みをしたり高い基準や贅沢な好みを押し付けるのに、自分自身は他人から負担になるような要求や期待をされたくない(自分側の要求や期待ばかりを押し付ける)というわがままな自己中心性も出やすいので、色々なタイプの人と付き合う多様な社会的な人間関係からは必然的に遠ざかりやすくなってしまう。

『前向きな意欲(やる気)の低下』の背景には、上で述べた『対人関係の苦手意識』だけでなく『自己評価(自己イメージ)の低下』も深く関わっている。対人関係が苦手という人の多くは『自己評価(自己イメージ)』が低下しているが、自己評価が下がって自己イメージが縮小していると、『他者からの要求・期待に応えることができる確信』もなくなるので、他者から賞賛されたり認められたりすることさえも心理的に大きな負担になってしまう。

普通は、他者から賞賛されたり認められたりすれば嬉しくてやる気が高まるものだが、自己評価の低下と対人関係の苦手意識が強くなっていると、『更に困難なことを期待されるのではないか(この気を遣う人間関係がまだずっと続くのではないか)という煩わしさ・面倒くささの思い』ばかりが沸き起こりやすくなり、何かを期待されて自分が評価されること自体が憂鬱の原因にもなってしまうことがある。

現代の若者のかなりの部分が、会社での立身出世や社会的成功に後ろ向きで、どちらかといえばほどほどに仕事をしてまったりと私生活(自由な時間)を充実させていきたいという考えを持っているとされる。

こういった社会活動や昇進昇給にあまり前向きでない心理の根底にも、この『他人から要求・期待されることの煩わしさや重圧感(他人の要求・期待に応え続ける自信・確信のなさ)』があると推測されるが、消費社会・ネット社会の現代では必要以上にストレートな形で他者・社会にコミットしたくはない(お金や社会的承認がそれほどなくても自分と極めて親しい他者だけの世界に浸るほうが良い)とする軽度の回避性パーソナリティーや非社会的行動の傾向はそれほど珍しくないだろう。


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