リーダーシップの心理学と“厳しい上司・優しい上司”双方に共通するリーダーの能力:2

何でもかんでも部下と同じ目線・立場に立って考え、自分も一緒になって部下と同じ雑務的な仕事で汗を流すといったリーダー(上司)は、一見すると優れた謙虚な人格者なのだが、上下関係(お互いの役割)の区別を混乱させて組織全体の成果を出しにくくするリーダーになってしまうリスクもあるのである。

こういった優しさや人格性を勘違いした『嫌われないためのリーダーシップ』は、上司にとっても部下にとっても居心地の悪い人間関係の結末に終わることが多い。それは部下に好かれようと思って過剰な気配り・バラマキ・賞賛をする上司は、初めは確かに『優しくて良い上司』として好かれるかもしれないが、『仕事の目的達成のための上下関係(お互いの役割分担)』が混乱するほどに甘すぎる対応やご機嫌取りのような追従をしていると、本気で注意・指導すべき場面でも部下が上司の言うことを聞かなくなりやすいからである。

リーダーシップの心理学と上司・部下の上下関係(役割分担)の区別:1

こうなると、上司は部下に対して『これだけ色々と目をかけて良くしてあげたのに、何だあいつの態度は』という不満が強まりやすくなり、部下は部下で上司に対して『今まで優しい上司で良かったのに、急に偉そうに指示・説教をしてきて気に入らない』という的外れな怒りを溜めやすくなってしまう。しかしこういったお互いの気配り・思惑がすれ違って組織の目的達成が困難になる上司と部下の好ましくない人間関係では、上司がはじめから『部下との適切な上下関係の距離感・仕事の役割分担とラフな雑談のケジメ』をしっかりつけていなかったことが災いしてしまうことが少なくない。

厳しいリーダーにも優しいリーダーにもそれぞれ一長一短があるが、一般論としてリーダー・上司は『敢えて嫌われる覚悟もないと勤まらない・厳しく指導すべき場面では演技的であっても厳しい言動をしなければならない』とも言われるように、『部下に好かれて尊敬されること(部下から嫌われないこと)』が最優先事項になってしまうようなリーダー(上司)は『部下の目的意識とモチベーションを高めて適材適所で活用して成果を出す』というリーダー(上司)に求められる役割を果たすことがなかなかできないのである。

厳しいリーダーといってもパワハラやセクハラまがいのことをして、部下(他者)の人権や尊厳を踏みにじるような傲慢不遜な態度でふんぞり返っている上司のことでは当然ない。その厳しさは『集団組織の目標達成+役割分担による成果実現』『部下の指導教育・成長支援・得意分野の見極め・心理ケア』のために向けられたものである。

ここでいうリーダーシップの長所ともなる厳しさは、三隅二不二のPM理論でいう“P(Performance,目標達成能力)”につながるものである。

『P(目標達成能力)』となる厳しいリーダーの態度とは、部下を傷つけたり押さえつけたりする攻撃性・暴力性ではなく、目標達成と機能的な組織維持のために『上下関係(お互いの役割分担)のケジメ』をつけることであり、自分の指示・指導・評価に迷いのない説得力や安心感を持たせる効果もある。

『M(集団維持能力)』となる優しいリーダーの態度も大切であるが、その優しさ・メンタルケアは『部下の心理状態の安定化・モチベーションの強化・集団組織の協力意識』のために発揮されるべきものであって、優しいリーダーとして自分が嫌われないため好かれるためのもの(過度にへりくだる部下のご機嫌取りのような言動)ではないことに注意が必要だろう。

PM理論の“P”と“M”の強弱の組み合わせ、あるいは厳しいリーダーシップと優しいリーダーシップのバランスが大切という話になるが、パワハラではない『適度な上下関係(お互いの役割分担)の区別』を自覚させて組織内で成果を出そうとするやる気を引き出すような関わり方、『部下ひとりひとりの人間性・適性(得意不得意)・ストレス状態』をしっかり観察して対処してあげるようなマネージメント感覚がリーダー(上司)となるべき人物には求められている。

リーダー(上司・経営者)に求められる最大の資質とは何かと考えると、『自分自身の仕事の有能さ・人格の良さ・今までの成果をアピールすること』ではなく、『部下(他者)を丁寧に観察してその性格・能力・適性・ストレス(心身の健康状態)を適切に見抜き適材適所で活用できること』である。

部下(他者)をまとめて効果的に使うことのできる『優れたリーダー』になることの難しさは、自分個人がプレイヤーとして優秀な成果を出し続けてきた人のほうが難しくなるという側面もある。自分自身が個人レベルで非常に優秀な人材・学生であった場合、『自分にとって当たり前の仕事・見識・学力の最低水準』が高くなりすぎたり、『自分にとって当たり前(簡単)なことができない人の心理状態や能力の特性』が分からなくなりやすいからである。


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