トランプ大統領の『壁』に象徴される政治理念と入国制限令1:限定されるアメリカ国民

アメリカのドナルド・トランプ大統領『大統領令』を連発して、『国内の分断・国際社会の分裂・イスラームの憎悪』を煽る側面の強い過激な選挙公約を次々に実現に移そうとしている。

オバマケアの廃止、TPP(環太平洋経済連携協定)からの離脱、メキシコ国境での『壁』の建設、シリアなど中東7ヶ国から来る人々(移民・難民・旅客)の入国制限などが、トランプ大統領の即座の大統領令によって進められているが、国内外の反対の声は強く国内でも激しい抗議活動が続いている。

アメリカの前オバマ政権が、あれだけ強いプレッシャーをかけていたTPP(環太平洋経済連携協定)をトランプ政権は簡単に反故にして離脱してしまった。世界の公平な貿易と投資のルールを定めるTPPは、世界の経済成長や参加国の相互利益、消費者の恩恵のために必要だと力説されていたが、トランプ大統領は『アメリカの雇用と企業利益はTPPによって甚大な損害を被る(アメリカが環太平洋経済のカモにされて外国製品ばかり買わされ米国人が雇用を失う)』という被害者意識さえ滲ませてTPPには絶対反対の離脱姿勢を貫いている。

『メキシコの不法移民問題』を厳しく指弾するトランプ大統領は、メキシコとの国境沿いに『壁』を建設してその費用をメキシコに負担させるという政策も断行しようとしている。メキシコのペニャニエト大統領は、不法移民の侵入を防ぐ壁の費用負担には応じない構えを見せて遺憾の意を述べた。壁を巡って米墨関係が緊張している中、トランプ大統領は更にメキシコの麻薬汚染(メキシコからアメリカへの麻薬密輸)を指弾して、麻薬組織壊滅に米軍を派遣すると発言するなど強硬姿勢を見せている。

多民族が宥和する移民国家(人種の坩堝)としての歴史を持つアメリカが、シリアからの難民の入国を禁止して、イラン、リビア、スーダン、イラク、ソマリア、イエメンからの移民の入国も制限したのは衝撃的だった。アメリカの空港では入国を制限された人々が足止めされて混乱が起き、入国制限された国々ではアメリカ行きの航空便に乗れない人たちも出たが、永住許可証(グリーンカード)や査証(ビザ)をきちんと持っている米国居住の人・一時の旅行客まで入国禁止にするのは行き過ぎた措置だろう。

トランプ大統領は『入国制限を事前予告していたらその間に悪人が押し寄せてきただろう』『入国制限措置は悪者をアメリカに入れないようにするためだ』などと主張して、イスラーム圏の国々やムスリムの人々の強い反発を受けているが悪びれた様子もない。

入国制限令の大きな問題は、入国制限した中東やアフリカの特定の国だけを差別的に処遇していることであり、反米主義やテロ思想に染まったりIS・テロ組織に参加しているわけでもない一般市民のムスリムたち全員を『潜在的な悪者(容疑者・テロリスト)』のように見なして一律でシャットアウトした点だろう。

イスラーム圏の人たちの反米意識や憎悪感情を煽るリスクも高く、更には『ムスリムの善良なアメリカ国民(イスラム教徒でアメリカ市民として労働・納税・社会貢献をしてきた人たち)』をアメリカ大統領であるトランプ氏が差別的に待遇して仲間はずれにしているような印象を与えてしまう。トランプ政治が『分断・対立の政治』として批判される所以でもあるだろう。

トランプ大統領の選挙時からの一貫したマニフェストは『アメリカファースト(アメリカ第一主義)』であり、その具体的な政策の現れとして『反グローバリズムのTPP離脱・不法移民対策のメキシコ国境の壁建設・反イスラムの入国制限』が出てきている。アメリカを再び『偉大な国』にすると豪語し、政治権力をワシントン(エリート層)から国民に取り返すと語ったトランプ大統領は、ポピュリストと揶揄されることもあるが本人の意識としては『アメリカ国民のためだけの政治』をしようとしているのだと思われる。

トランプ大統領にとっての『アメリカ国民(アメリカ市民)』とは誰なのか、狭義にはトランプ大統領の熱烈な支持層とされる『白人労働者層・中流階層からこぼれたWASP(白人で経済的に恵まれていない移民・外国人・ムスリムに不満や不安を持つ層)』と重なるのだろう。しかし多民族が共生する移民国家として発展し続けてきたアメリカは、白人だけの国家ではなく、アメリカの国土となっている広大な土地は元々白人の所有地ではなく、ネイティブ・アメリカンが私的所有権の概念もなく自由に暮らしてきた土地をほとんど一方的に侵略・開拓したものであった。

アメリカ大統領が、『多民族・多人種の混じり合うアメリカ国民全体』のために働いていると言えない現在の状況は、アメリカ合衆国という『自由主義と多様性のダイナミズム』に突き動かされてきた主権国家の統一性を脅かしている。特定の国々やムスリムに対する入国制限措置やメキシコに対する敵対的な政策の数々が、アメリカに住む人々やアメリカに行こうとする人々を疑心暗鬼にして分断してしまっているのである。


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