ブラック企業と日本の雇用形態・格差社会による従業員心理の変化:1

ブラック企業の問題の根底にあるのは、会社が社員(従業員)の人生設計や健康維持、やりがいに配慮しなくなったことであり、それと合わせて社員(従業員)の会社に対するロイヤリティ(忠誠心)や帰属感・共同体感覚(仲間意識)が落ちてしまったことである。

会社と社員(従業員)の相互的な貢献・配慮・仲間意識の中心にあったものが、昭和の高度経済成長期に慣習化した『終身雇用・年功賃金・福利厚生』であり、日本人はそれまで『与えられた労働環境・役割・組織目標の中で努力し続けること』が得意で、それが日本経済の強みとされた日本人の労働者の勤勉性・地道さにもつながっていた。

その勤勉性や地道さの背景にあったものが、会社を辞めずに帰属して頑張って働いていれば人並みの人生設計が成り立ち、自分・家族が経済的に困窮しないという『終身雇用・年功賃金・家族主義(仲間意識)』だったが、バブル景気が崩壊して平成期のゼロ年代に入る『失われた20~30年』の中で、企業間・個人間(雇用形態間)の格差が拡大していき、会社は以前ほど忠誠心のある社員(従業員)の生活・人生設計を守るという姿勢を示さなくなってきた。

派遣社員・期間社員・アルバイトなどの非正規雇用をはじめ、『自由度は高いが雇用保障の薄い・給与水準の低い働き方』が好むと好まざるとに関わらず増え始めた。医師・看護師・エンジニアなど特殊な需要の強い専門技能がある人を除いて、雇用形態が非正規だと、その環境や立場でいくら必死に努力して働いても、それほど高い給与は得られず将来の保障(継続雇用・昇給昇格)もないので、非正規労働者や正規キャリアからドロップアウトした人の労働モチベーションは下がりやすくなり、(献身しても報われない思いから)ストレス耐性も低くなりやすい。

介護士・保育士・障がい者福祉などの現代社会に必須の職業の雇用待遇もかなり低いままに据え置かれ、昭和期の過去には学歴さえ持っておけば仕事はある、難関国家資格(弁護士・公認会計士・税理士・司法書士など)さえ持っておけば一生食いっぱぐれがないと言われた権威主義の常識もほとんど通用しなくなってきた。

研究開発・知識労働・専門性などを選んでこだわる大企業(公的機関)に就職できなかった高学歴者が、かえって人並み以下の収入しか得られない高学歴ワーキングプアの問題も浮上したりした。インターネット社会の拡大によって、学歴・学位を根拠とする知識や情報、言葉の権威を直接的に雇用に結びつけ換金する力が、一部の実学的な専門職・専門分野を除いて弱まっている。

新卒採用・専門業種からのキャリアの積み上げ(他から求められる人材としての能力・実績)があまりないのに、働き方や仕事内容にこだわることの経済的リスクは元々高いものだが、知識・情報の相対的価値がネットの情報氾濫によって低下しやすくなっている。

情報の真偽や確度、有用性を判断するネットリテラシーの問題は常に指摘されているが、誰でもほぼ無料で情報を検索できるウェブ環境が整備・普及したことによって、有料でお金を出してでも(専門家とされる人に依頼したり有識者の書籍を購入してでも)敢えて手に入れたい知識・情報が過去よりも減少している。

今の日本の中流階層(婚姻率・有子率・車や住宅のローン率が高い層)は『新卒採用で公務員・大手企業に就職して勤務を続けている人』『自営業・自由業で稼げる才覚・発想・営業力のある人』かになっており、中小零細企業や非正規雇用、平均的な自営業・自由業は、中流階層のライフプランが成り立ちにくい給与・キャリア・社会保障の水準になりやすい。

日本で格差社会や貧困問題が言われ始めて久しいが、大多数の人にとっての格差・貧困の根幹にあるのは『新卒採用からの勤続の有無・雇用形態と企業規模(組織の大きさ)の格差』であり、ビジネスの才能・やる気や稼げる発想・人脈、新たな時代への再適応力がある個人を除けば、新卒採用の組織内のキャリアから一度脱線すると中流階級的なライフプランに戻ることが簡単ではなくなっている。


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