もっともらしい因果関係やストーリーを作り出す人間の脳:結果バイアス・ハロー効果

高度な教育や特別な訓練を受けた専門家でも、専門分野をはじめとするさまざまな分野の対象について『遠い未来の出来事・今と異なる状況での行動』を正確に予測することは不可能である。『客観的な因果関係』についての人の認識もいい加減な部分が多く、結果を見てから原因のストーリーを創作して納得するという『結果バイアス』が働きやすい。

結果バイアスの典型的な事例としては、『成功事例(上手くいった事例)』『失敗事例(上手くいかなかった事例)』を集めて、それぞれに共通する行動パターンやノウハウを抽出した上で、こうすれば成功するとかこうすると失敗してしまうとかいった因果関係の一般法則を導き出すやり方がある。

企業の事業(起業のアイデア)が成功するかどうか、人生が成功するか失敗するかといった極めて複雑な要因が関係してくる事柄の原因を成功事例から導き出すのは、結果を見てからもっともらしい原因を推測するという『結果バイアス・後知恵』に過ぎないのだが、『わかりやすい成功事例・成功者』を見ると人はどうしてもこうすればこうなるというシンプルな因果法則をイメージしてしまいやすいのである。

有名な個人や成功した企業の過去の成功経験に基づく自己啓発の本には、『どうすれば成功しやすいのか(成功する人・会社はどんなことをしているのか)の要因・方法』が列挙してあることも多いが、仮にその通りの思考・行動・挑戦をしたとしても、本に書かれてある成功者や成長企業のような素晴らしい結果を得られるかどうかは分からない。

それは結果バイアスが、『一回限りの出来事・確率的に発生する出来事』に対しても働いているからであり、その場合にはまったく同じ行動パターンを取ったとしても同じ結果は得られないからである。『成功事例の結果』から原因を考えても、もっともらしいストーリーになるだけだからであり、その偶然的なストーリーが自分にも当てはまる確率は極めて低いからである。

現実の人間や企業の行動の成否(結果)は、『特定の分かりやすい原因』や『一貫したある行動パターン』によって決まるわけではなく、その大部分は『一回限りの偶然性・確率的に発生する運(不運)』によって決まっている。だから、成功事例から『成功の原因』と考えられるもっともらしいものを学んで、その通りの行動パターンを繰り返したとしても、先行者と同じ成功の結果が得られるとは限らないのは当然といえば当然なのである。

因果関係の認識の歪みには『ハロー効果(後光効果)』というものも影響する。例えば、成功している時期の業績の良い企業のCEOは『状況判断と決断力に優れていてリーダーシップがある』とされるが、同じ企業の業績が悪化して経営に行き詰まってくると同じCEOが今度は『時代のニーズが読めず決断ができないリーダーシップに劣る』と酷評される。

このように、その人物の背景となる『実績・状況・調子・権威(名声)・ステータス』が良いか悪いかによって、『人物の能力・人柄・信念の評価』が大きく変わってしまうことをハロー効果(後光効果)と呼ぶが、実際にはその人物の能力や人柄がわずか数ヶ月の間に大きく上がったり下がったりしたわけではないのである。とにかく良い結果を出せばその人物の能力が実際よりも良いように見てもらえる(その逆も然り)という意味では、結果から原因を推測する『結果バイアス』によって、『ハロー効果』が生み出されたと解釈することもできる。

人間の認知機能は『結果に対する分かりやすい原因』を反射的に見つけたがる性質があり、『成功した人はそれだけ苦労や努力をしたから成功した』や『失敗した人は十分な努力をせずに楽をしたから失敗した』といったもっともらしい原因に飛びつきたくなるのだが、客観的には素晴らしい成功にも惨めな失敗にも同様に『偶然・運の要素』がかなり絡んでいる。

その傍証として、素晴らしい企業とダメな企業を比較して『成功原則として機能する経営手法・リーダーシップ』を研究する経営の書籍は多いが、その手の書籍で売れた『ビジョナリー・カンパニー』で取り上げられた優れた企業とダメな企業の収益性・株式投資のリターンの格差はその後に大きく縮小している。『偶然・運の要素』の介在を示すことになる統計的な『平均回帰』が見られており、特別に優れた経営手法や商品開発、リーダーの能力によって成功した(ダメな企業は経営やリーダーがダメだから収益性が低い)とする結果バイアス的な因果関係は疑わしいものとなる。


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